髪をカットした。
ヘアカットに若干のこだわりを持つ俺は、いつものお気に入りの店へ行った。
今日はいつもの店長が忙しく、30代後半くらいの女性スタッフが俺を担当することになった。初めて見る顔だ。
さいしょは「大丈夫かな」と少し心配だったが、始まってみると彼女がじつに上手で、店長以上に満足のいく出来栄えとなった。とくにモミアゲから耳の上ラインの処理が見事だ。
鏡に映った俺のヘアスタイル。うん、なかなか。
帰りぎわ、髪を軽くさわりながらうつむき加減に彼女の目を見つめ、クールに微笑みながら俺は彼女にこう伝えた。
「望んでいたものになったよ。ありがとう」
俺の目を見つめ返しながら、ちょっぴり頬を赤らめるヘアーデザイナー。
そして俺はガラスのドアを押し、颯爽と外に出た。短くなった襟首を秋風がなでてゆく。横顔で振り返る俺の目に、店のガラスに張られた文字が映る。
「カット10分、1000円」
よかったよ、きみのバリカンさばき。
(2006年9月の日誌より)
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