「薬害が消される!」さいろ社の本ホーム

『薬害が消される!』はじめに

 「川をきれいにしましょう」「リサイクルしてみよう」など、環境に視点を置いた教育は、最近の小学校の授業の定番になっている。むろん、こういった環境への関心の高まりは、高度経済成長時代に、人間の生活環境を人間自身が破壊してきたことの反省に立ったものだろう。当時の経済優先・企業利益優先の浅薄な論理が、4大公害をはじめとするさまざまな環境破壊・健康問題を発生させたことは誰もが知っている。

 公害と同じ時期、同じ論理によって発生したものがもう1つある。薬害だ。

 サリドマイドやスモンなどの薬害は、製薬企業の利益優先体質によって発生し、人命を軽視した厚生省の姿勢によって拡大した。そのために人間の身体が直接破壊され、多くの命が奪われた。
 ところが、同じ背景を持つはずの両者には、その後の扱われ方に奇妙な違いがある。
 公害は小学校から何度も教科書で教えられ、人々の関心も高まったというのに、どういうわけか薬害のほうは教科書にはほとんど載っておらず、今なお高度成長時代とまったく同じ構図で繰り返されている。サリドマイド薬害に酷似した薬害エイズや薬害ヤコブ病をはじめ、陣痛促進剤や予防接種による被害も現在進行形で続出し、命が次々と奪われ続けている。

 これはいったい、どういうことなのか。

 命よりお金を優先する企業、健康より経済を優先する国、そしてそれを許してしまった社会。その共通の構図を断ち切るために教育が必要なのであり、被害を繰り返さないための記録として、事実を伝える教科書が必要とされる。ところがこと薬害に関しては、それはまったく機能していない。
 将来、医療者になる者にも、将来、患者になる者にも、まったく伝えられないということは、日本の医療が危険な状態にあるということを意味する。

 だからこそ、私たちは薬害を知る必要がある。「薬害を知る」には、まず、一人一人の被害がどれだけの悲しみをもたらすのかを人権の視点から知ることから始めなければなるまい。そこを出発点とする原因究明・再発防止の取り組みでなければ、日本の医療を変える力にはなり得ないだろう。
 「こんなことを繰り返してはいけない」とみんなが考えるようにすることこそが、教育なのだ。

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