『薬害が消される!』さいろ社の本ホーム

「薬害が消される!」紹介記事

掲載一覧
■疑わしくとも動かない厚生省 (『きんようぶんか』週刊金曜日 2000.12.15)
■ (薬害根絶)「誓いの碑」に忠実に (『社説』朝日新聞 2000.8.28)
■ これは薬害の「教科書」です (『Book Boat』、ヒントブックス、2000.11.2)
■ 毎日新聞 (日曜全国版『本と書評』、2000.11.26)

■ 日本経済新聞 (2000.12.3)


疑わしくとも動かない厚生省 「薬害大国」日本は変わるか 伊豆百合子(いず ゆりこ・ジャーナリスト)
(『本書評・きんようぶんか』週刊金曜日 2000.12.15)

 病院からもらった風邪薬を飲んでいたわが子が、突然けいれんを起こし、叫び声をあげ、意識障害に陥る。――インフルエンザに罹った子どものうち、年間約300人が脳炎・脳症を発症するといわれている。いったん発症すると予後は悪く、死亡率は3割前後、一命は取りとめても、後遺症が残ることも多い。このインフルエンザ脳炎・脳症について、数年前から一部の小児科医たちは、「アメリカでは15歳以上にしか使用許可されていない風邪薬が、日本では幼い子どもにどんどん投与されている。厚生省は早急に小児用風邪薬の再調査をするべきだ」と指摘しつづけてきた。
 11月15日、厚生省はようやく「緊急安全性情報」を出し、非ステロイド系消炎剤の使用禁止を呼びかけた。薬の投与を受けていない場合に比べて、死亡率が「14倍」に跳ね上がることも報告された。この死亡率の高さは、あきらかに「薬害」だ。
 実はアメリカではすでに、これらの薬の危険性は警告されていた。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、脳症の一種である「ライ症候群」の発症原因を突き止めるため、78年、疫学調査を始めた。その結果、「サリチル酸系解熱剤・アスピリン」が原因であることがわかった。FDAはこれを受けて、子どもの解熱にこれらの薬を使わないように呼びかけ、80年から85年にかけて、アメリカでは脳症が激減した。厚生省の今回の使用禁止の呼びかけは、アスピリンを調査したFDAの措置に遅れること10数年、”疑わしくとも動かない”厚生省の”無責任体質”が、今回も浮き彫りになった。
 この10月に『いのちジャーナル』別冊ムックとして出版された『薬害が消される!』は、スモンや薬害エイズに関する記述が教科書検定で削除されたことをめぐり、全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)が文部省に対して行なった抗議行動を記録としてまとめたものだ。この薬被連は、サリドマイド、スモン、陣痛促進剤、MMR(新三種混合ワクチン)、薬害ヤコブ病の薬害被害者が「薬害の根絶」を実現するために昨年結成した団体で、本書には、これら6つの薬害の歴史と戦いの記録も収められている。
 日本は「薬害大国」といわれるが、なぜこれほどに薬害が繰り返されるのだろうか。
 厚生省は戦後、国民の健康を民間病院に委ねる医療体制を敷いた。民間病院は人件費、設備投資費、運営費を、薬価差益などで捻出しなければならず、大量の患者に大量の薬剤投与をしなければ経営が成り立っていかない構造になっている。これが大きな問題だ。その上、厚生省は、メーカー保護の施策のために、たとえ薬害に気づいても、次の新薬許可まで動こうともしない。国民の側は大量の薬をなんの疑問もなく飲むことに馴らされてしまった。日本の医療は、いわば、患者の命と引き換えに成り立っているところがあるのだ。6000人を超す審査官が入念に新薬を審査し、1件でも薬害と疑わしいケースが出れば、即回収命令を出すFDAの体制には、20〜30年も遅れている。
 日本の薬害の原点は、58年の「サリドマイド薬害」だ。母親が妊娠中に市販の鎮静・催眠剤であるサリドマイドを服用したことで発生した先天性障害だ。初めて新聞報道されたとき(62年5月17日付『朝日新聞』夕刊)、厚生省はドイツでなされたサリドマイドによる奇形児多発の報道を十分承知しながら、「販売中止にはしない。メーカーの自主措置に敬意を表したい」とコメント。学者も、”日本のものは安全”と公言した。のちの薬害エイズと全く同じ図式だ。その後も全国の薬局でサリドマイドは売り続けられ、店頭からサリドマイド剤が姿を消したのは、ドイツで回収が行なわれてから2年後だったという。
 「バケツ一杯の薬を出され、私はのんだ」と被害者が語る「スモン薬害」は、ちょうど健康保険点数改正と重なって、薬を出せば出すほど儲かる仕組みに移行した時期だった。原因とされるキノホルム(整腸剤)は、患者の腸管を通して全身の神経を冒す有毒な薬だったが、また大量投与の薬害でもあった。
 「陣痛促進剤」による薬害は、診療時間の朝9時から夕方の5時までに出産を終わらせたい病院側の都合で多用されたために多発した。妊婦と胎児を守るために、必要なときだけ”アクセル”と”ブレーキ”を十分な観察でみきわめながら使用されるべきものが、”アクセル”だけを踏み続けるかたちで使われた。その結果、子宮破裂、胎児仮死の事故が多発した。
 現在係争中の「薬害ヤコブ病」は、患者が「無動無言状態」にならないと診断が下らない悲惨な被害だ。脳外科手術で使われた輸入硬膜に病原菌が付着していたことが原因だ。この輸入硬膜も、FDAは日本より10年も以前に回収、使用禁止にしていた。「薬害」の悲劇は、それを、治す薬がないことだ。人生の全てを奪われるといっても過言ではない。全てを奪っておきながら、厚生省は情報を遮断し、被害者に有利な情報は隠す。そして一刻も早く忘れようとする。そこにいっぺんの反省もない。
『薬害が消される!』では、事件から38年経ったサリドマイド児たちや、その他の被害者たちが、その後も繰り返される薬害を、どんな思いで見つめているのかを語っている。
 薬害は「人災」といわれる。国だって間違いもあるだろう。もともと不確かな医薬品のことだ。できることは、すべてを情報公開すること。そして薬害についての教育を行ない、どうすれば薬害が防げるか、共に考えていくシステムにしていくことだろう。さもなければ、これからもわが子や孫に「薬害は繰り返す」と、被害者たちは訴えている。国の姿勢が変わらない限り、被害者への償いはなされていないのだと。

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(薬害根絶)「誓いの碑」に忠実に (『社説』朝日新聞 2000.8.28)

 厚生省の玄関わきに「誓いの碑」が建てられて一年たった。
 「命の尊さを心に刻み、サリドマイド、スモン、HIV感染のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることのないよう、医薬品の安全性、有効性の確保に最善の努力を重ねていくことを、ここに銘記する」
 にもかかわらず、「悲惨な被害」は続いている。とりわけ深刻なのは、脳がスポンジ状になる「薬害ヤコブ病」だ。物忘れする、ものが二重に見える、まっすぐ歩けない、といった症状が突然始まり、あっという間に痴ほう症状が進む。そして、体を動かすことも、話すこともできなくなって死に至る。
 この悲惨な病気の発症が相次ぐようになったのは、病原体で汚染されたドイツのB・ブラウン社製の乾燥硬膜が脳外科手術に広く使われたためだ。同社は病院の解剖助手に金を渡して遺体から採取した硬膜を集め、大量処理していた。その過程で、病原体による汚染が広がったと見られている。
 米国の対応は素早かった。連邦政府の疾病対策予防センターが一九八七年二月に「週報」で警告。四月には食品医薬品局が同社製の乾燥硬膜の廃棄を命じた。六月には輸入禁止の措置がとられた。
 日本はどうだったか。
 「週報」の警告は脳外科医と感染症学者の手で翻訳され、八七年八月と十月、専門誌に掲載された。だが、この情報が深刻に受け止められることがないまま、毎年二万人が脳外科手術で危険な乾燥硬膜を移植された。
 ヤコブ病に似た狂牛病が九六年に英国で社会問題になり、日本ではどうか、と厚生省が調査した結果、薬害ヤコブ病が何件も見つかった。問題の乾燥硬膜を使用禁止にしたのは九七年。B・ブラウン社が製造を中止した九カ月後のことである。
 この病気は感染から発症まで三十年かかることもある。かなりの期間、新たな患者発生が続くのではないかと心配だ。
 薬害の被害者や家族は昨年秋、薬害被害者団体連絡協議会をつくり、薬害の教訓を次の世代に伝えることに取り組み始めた。その記録、
「薬害が消される! 学校が教えない6つの真実」(さいろ社)は、薬害多発の構造を教科書で取り上げようとしない文部省の姿勢を突いている。
 被害者たちは碑が建った八月二十四日を「薬害根絶デー」と名づけ、津島雄二厚相に、こう要請した。「患者の権利法」を制定して患者中心の医療基盤を整備すること、薬事法に国・企業の情報提供・説明義務を銘記すること、徹底した情報公開を行うこと。
 医薬品には多かれ少なかれ副作用が伴う。「恩恵を受けるのだから副作用もやむを得ない」と、乱暴なことを言う人もいる。だが、薬害と副作用は全く異なる。薬害とは、危険情報を行政や企業、学界や医療現場が看過したり、無視したりすることで引き起こされる人災だ。現に、サリドマイド、スモン、HIV感染被害は、そのようにして日本で多発した。
 人災は防げる。犠牲を繰り返して、「誓いの碑」をただの石にしてはならない。 

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これは薬害の「教科書」です (『Book Boat』、ヒントブックス、2000.11.2)

 クスリには副作用というものがある。誤った使い方や特異なケースとして"薬害"が起きる──と思っていたとしたら、文部省の役人レベル。薬物乱用、つまりシンナーや覚醒剤の問題についても文部省は積極的に取り組んでいる、とも薬害被害者団体との交渉の席で発言した。なぜ、教科書から薬害の記述を消すのか、と問う場面でのこと。
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 薬害とは、欠陥薬品による「主作用」であり、それを故意または放置した企業と国の行いによる結果である。薬害を繰り返さないためには、「命よりお金を優先する企業、健康より経済を優先する国、そしてそれを許してしまった社会」について学ぶ教育が必要であり、それらの事実を伝える教科書が欠かせない。(3頁より要約)
 しかし、サリドマイドやスモンという"有名な"薬害事件の名は、文部省が検定意見をつけて介入し、その名が教科書から消されている。
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 かく言う私も、この本を読みながら、そうだったんだ、辛いよなあ、コワイなあ、と忘れかけていたことを身にしみた。知っていたつもりでも忘れてしまう。知らされなかったら、薬害の存在も消える。そしてまた、薬害が起きる。
(1) サリドマイド被害児は世界で推定 約7000人 <1万人とも>
(2) 整腸剤キノホルムによるスモン患者は日本で2万とも3万とも、あるいは5万とも言われている。
(3) 日本では血友病患者は約5000人いたが、そのうち1500人がHIV感染者。500人が死亡した。
(4) 1992年10月、厚生省が「もうこれで十分だ」とした能書改訂以降に陣痛促進剤で死亡した母親は19人。植物状態は2人。死亡した子ども75人。脳性麻痺46人…… 今もどこかで続く。
(5) MMR(新三種混合ワクチン)接種による無菌性髄膜炎の被害にあったのは厚生省発表だけでも1800人。これは1992年の発表で1000人に1人の発生率。しかし、遡ること1989年、厚生省は10万〜20万人に1人の発生率だからとワクチン接種推進を市町村長に通知していた。93年、ワクチン接種は「当分見合わせ」になっている。
(6) 薬害ヤコブ病は被害者数こそ少ないが、発見されていないケースがありそう。関西では新聞報道が多くそのぶん発見が多く、九州ではほとんど報道されていないので発見がすすんでないという(143頁)
***
 この本では、上にあげた6つの薬害被害者がその体験を証言し、支援者がレポートを寄せている。被害者の言葉からしか知り得ない事実も多いので、多くの人たちに「教科書」のつもりで読んで欲しいと思う。薬害被害を繰り返さないために。

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■ 毎日新聞 (日曜全国版『本と書評』、2000.11.26)

 サリドマイドやスモン、薬害エイズなど日本では過去、何度も薬害が繰り返されてきた。しかも毎回、製薬企業、厚生省、研究者の癒着という同じ構図の中で引き起こされてきたというところに問題の根深さ、恐ろしさがある。
 その薬害が教科書から消えつつあるという。昨年の教科書検定では、小学校5年社会科のある教科書から薬害エイズが姿を消した。危機感を持った六つの薬害の被害者団体は昨年10月、文部省に公教育や生涯教育などで薬害について学習できるよう対策を求めた。
 しかし回答は「薬物乱用について教えている」など、さらに危機感を深めさせる内容だった。覚せい剤やシンナーは薬害ではない。「本当の薬害が分かっていないのでは」と感じさせる対応だったという。
 本書は、こうした交渉の経過など薬害が教科書から消えていく過程の報告である。「子どもたちを、薬害の被害者にも加害者にもさせたくない」。悲惨な体験をした薬害被害者たちの訴えがつづられている。(鯨)

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■ 日本経済新聞 (2000.12.3)
エイズ、サリドマイド、スモン…
薬害風化 授業で防げ
 「悲劇を繰り返さないため、薬禍の歴史を学校でもっと教えてほしい」と、薬害エイズやサリドマイド、スモンなど、社会を揺るがせた事件の被害者や遺族らが中心となり、薬害教育の充実を求めた様々な活動を展開している。現行の小、中、高校の教科書では、サリドマイドやスモンの記述は全くないか、簡単に触れられている程度で、文部省や教科書会社に記述の復活などを陳情。シンポジウムを通じて一般に活動の理解や協力を訴えている。関係者は「多くの命を奪った薬害の教訓を21世紀に伝えたい」としている。

〜再発防止へ遺族ら訴え〜
 薬害教育の充実を求めた活動を展開しているのは、京都市に事務局を置く「全国薬害被害者団体連絡協議会」。民事裁判の場で国の責任を追及した薬害エイズ事件の東京、大阪両HIV訴訟原告団や、サリドマイド事件の被害者らでつくる財団法人いしずえなど、8団体によって昨年10月に旗揚げされた。
 同協議会によると、小、中学校の教科書からは1987年度を最後に、50年代の終わりから60年代にかけて全国規模の被害を生んだサリドマイド、スモン両事件の記述が消えたという。高校の教科書でも、年表に掲載している程度。
 薬害エイズ事件など最近の薬禍についても「感染の危険を認識していたにもかかわらず対策を怠った行政、企業、医師の責任が問われた」(清水書院の高校現代社会)などの文章にとどまり、薬害の構造に踏み込んだ深い内容のものはない。
 このため、同協議会は教科書会社に何度も足を運び、記述の復活や内容の充実などを訴えている。先月には、薬害教育の充実を求める要望書を文部省に提出した。文部省側は「ゆとり教育で教科書内容の厳選が進む中では十分すぎるほどの扱い」と説明しているが、同協議会は「説明と現行の教科書の実態との落差はあまりにも大きい」としている。
 大手教科書会社の幹部からも「学習指導要領に薬害を教えろとは書かれていないし、教科書で大きく扱いにくいのは事実」「全体に薬害を教えるという発想が欠けていたのではないか」との声が漏れる。
 同協議会は社会教科の中でもっと薬害について教えるよう働きかけを続けていく。10月には「薬害が消される! 教科書に載らない6つの真実」を刊行、シンポジウムの開催とあわせて、一般にも「一緒に考えてほしい」と理解を呼びかけている。
 協議会のメンバーで、「いしずえ」の間宮清・事務局長は「サリドマイド、スモン、薬害エイズと全く同じ構図が繰り返されてきた。公害などと同様、子供たちに薬害の怖さをきちんと教え伝えなければ、悲劇は繰り返される」と話している。

サリドマイド事件: つわりに効くとして妊婦の間で使われた催眠・鎮痛剤で、手足の一部が欠損した子供が生まれる被害が世界的に広がった。日本の被害者は309人。1963年以降、被害者が国と製薬会社を提訴、74年に和解した。
スモン事件: 整腸剤「キノホルム」の副作用で全身の神経障害により失明や歩行困難などが起きた。いくつかの病態を表すアルファベットの頭文字を取って「スモン」と呼ばれた。71年以降、過去最大の集団訴訟に発展、79年に国と製薬会社と全面和解。被害者約12000人。


薬害の経緯
知識乏しい薬科大生  ― 「スモン」の薬品名 正解2割切る
 東京医科歯科大学の片平洌彦助教授らが、ある薬科大学の学生を対象に実施した調査でも、薬害に対する知識の乏しさが浮き彫りになったという。
 調査は今年5月に行い、37人の4年生を対象に記述の正誤を尋ねた。その結果、スモン事件を引き起こした薬剤名を理解していたのは2割にも満たなかった。最近、「第2の薬害エイズ事件」として厚生省などを相手取った民事訴訟が起こされているクロイツフェルト・ヤコブ病の問題に正しく答えたのはわずか3人(8%)で、同時期に調査した文系大学生の正答率(11%)すら下回った。
 薬剤師のタマゴたちの予想以上の成績不振に片平助教授は、早い段階からの学校現場での薬害教育の重要性を痛感したという。


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