関西の激渋銭湯
チープに極楽。生きててよかった!
   レトロ銭湯へようこそ
関西版

松本康治、戎光祥出版
定価:1600円+税
レトロ銭湯へようこそ
西日本版

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【長崎県】の激渋銭湯 
白菊湯 (長崎市)
日栄湯 (長崎市)

山頭温泉 (長崎市)
(廃業)
五色湯 (佐世保市)
(廃業)
木場田湯 (佐世保市)(廃業)
浮亀湯 (諫早市)
(廃業)
脇浜温泉浴場(おたっしゃん湯)★(雲仙市)
荒木湯 (南島原市)
高峰温泉 (壱岐市)

白菊湯
長崎市片淵1丁目2-11 →地図
電話 095-823-4606
【営業時間】15:00~18:30
【定休日】5と0のつく日


 玄関前の路地の狭さではチャンピオンクラス。
 それに加えて、3時間半という営業時間もまた日本有数の短さだ。この難易度の高さにしびれちゃう。

 路面電車を諏訪神社前で降りる。電車通りの1筋北はシーボルト通り、老舗の百貨店やひなびた市場などが残る渋いまちなみだ。
 そのさらに1筋北に、狭い路地がある。自転車が来たらよけなあかんような狭さ。ははは、まさかこんなとこにね・・・おまんのや! 風呂屋が!

 
(左)白菊湯のある路地を東側から   (右)狭い! 素敵!

 
(左)反対側から。全体を撮れん!   (右)「男湯」のナナメ上に「白菊湯」と表札が

 窓にすだれがかかっているのが白菊湯だが、暖簾も出てないし、知らなければ気づかずに通り過ぎる確率99.9%。あとの0.1%は奇跡およびマニア。
 つまり風呂屋の存在そのものが部外者にはわからないようにできている。

 中に入るとタタキに番台がある古いスタイル。渋い空間だが、脱衣場は意外にスッキリしてるやないの。

 
(左)郷愁の玄関内側   (右)男女壁の上部がユニーク。風呂屋とは思えぬ小さな鏡!

 右上写真の男女壁が素晴らしくもサワヤカだ。扇風機もいい味を出している。
 鏡の下に木の脱衣箱が10箱あるけど、反対側は合板の白い脱衣箱が壁を占めている。丸籠もあり。

 裸になって浴室へ入ると、なんと中央に円形浴槽! 水色タイルで固められた年季モノで、とっておきのモノが出てきた! みたいな喜びを感じる。
 浴槽内にジェットが噴出しているが、循環式ではなさそう。湯船のフチにこんもり盛り上がった突出部位があり、そこに取り付けられたごついカランをひねると湯と水が供給される。いやーこいつは今どき珍しくもイニシエなるお風呂じゃありませぬか。
 湯はややぬるめだった。大カランをひねればもっと熱くできる。でも常連客が4~5人いて、誰も湯を加えてなかったので遠慮した。

 奥に扇型の副浴槽があって2分割されている。手前は水風呂、奥はエート、薬湯やったかな? スマヌ忘れた・・・。
 まあなんにせよ明るいうちから風呂に入るのは極楽。明るいうちしか営業してないけどなここは。
 湯気にけぶる風呂場に、外の光が差し込んでキラキラしている。軽く挨拶を交わしながらも静かに湯に浸かり、体を洗う常連客たち。ジェットの音だけが低く響いている。

 上がって番台のおやじさんに、「古そうですけど、ここは原爆の前からあるんですか?」と聞いたら、そうだとおっしゃる。
 地図を見ると、この場所と爆心地との間には標高200mほどの尾根が金比羅山から伸びている。その山が爆風を防いでくれたのだろう。

 長崎の狭い狭い路地奥に、ひっそりと隠れ家のような風呂屋があり、レトロな円形浴槽に湯が沸かされて、わずか3時間半で素早く閉じられる。まるで何事もなかったかのごとく。
 この地球の片隅への埋没っぷり、人目の忍びっぷりに、静かな興奮を覚えないわけにはいかない。いやー旅はオモロイ、風呂屋はオモロイ。
(2014.1.6)

※「レトロ銭湯へようこそ西日本版」に掲載されました。
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日栄湯
長崎市大浦町9−7 →地図
電話 095-822-8342
【営業時間】15:00~21:00
【定休日】月曜日


 正月3日、長崎。
 これまで何度か前まで行きながら、定休日だったり営業終わり時間だったりで入れていなかった、長崎孔子廟の向かいの日栄湯。ついに入ったぞ。

 
(左)玄関くぼみ系  (右)水色がなぜか嬉しいんです

 正面中央にナナメ窪み玄関、その上に「湯榮日」。
 中に入るとタタキに木組みの番台があって、ええ感じのおかみさんが座っている。
 すぐ前が脱衣場、深い茶色の平格天井が重厚感をカモし倒しておるではないか。なんでも大正末期から100年ほどを経た建物っちゅーハナシ。

 
(左)下駄箱に鍵なし  (右)脱衣場、しっぶ~!

 俺はこういうとこで裸になるのが大好き。なんかトクした気分になるやんか。
 風呂場へ入ると、真ん中に長方形の湯船がデーン。ジェットが2本噴出中。心もちぬるめの湯かげんかな。
 奥に岩風呂風の水風呂と、漢方薬湯の浴槽がある。薬湯は一部が電気風呂になってるレアなパターン。
 壁画などはないけど、小さなタイルがピンクなど淡色系の色合いでよろしい。この日は初風呂のせいか、なかなか賑わっている。

 正月風呂をゆっくり楽しんだ俺だが、いちばんの感動は風呂上がりに待っていた。
 脱衣場に上がるや、部屋全体がピンク色に染まっているではないか!

 
ファンタジック長崎

 写真では逆光のためよくわからないが、とにかくピンクなのだ。これはいったいどうしたことか。
 おかみさんに「こここ、これはいったい・・・」と尋ねると、どうやら向かいの孔子廟の外壁レンガに夕陽が反射して脱衣場に差し込み、このような奇跡の現象が起きるようだ。

 ピンクの不思議な光に包まれながら、裸で椅子に腰かけて牛乳を飲む。少しずつ深みを増し、紅色へと変化してゆく小宇宙。

 長崎に来たならば、夜景やランタンの灯もいいが、風呂好きならばこの日栄湯のピンクに染まる脱衣場をぜひ経験すべきだろう。
 (2015年1月)

※「レトロ銭湯へようこそ西日本版」に掲載されました。
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山頭温泉《廃業》
2013年に廃業されました。
レポートは営業当時のものです。
(カト犬さん情報感謝!)

長崎市寄合町2-27 →地図
電話 095-826-7045
【営業時間】15:00~19:00
【定休日】火木土のみ営業
【入浴料金】大人350円


 長崎の路面電車・思案橋電停近辺は飲み屋が集まる賑やかなところ。電停の南西、丸山公園の奥の坂道を登って行くと数分で1軒の古き銭湯あり。

 
(左)かつて遊郭があった界隈   (右)ナナメの戸、暖簾なし

 外壁タイルや玄関のアール状ひさしなどがエキゾなチック臭を発散してます。
 中に入るとタタキに木の下駄箱があり、番台におやじさんが座っている。
 脱衣場は、衝立を挟んで黒いソファと木の長椅子が背中合わせ。男女仕切り、古い大鏡、体重計などにイニシエの香りが漂う。

 
(左)脱衣場から見た玄関タタキと下駄箱方面   (右)木のロッカー

 浴室はわりと広い。中央やや奥にデンと主浴槽、奥に2槽。
 主浴槽は四隅が丸くなっている。フチなどにエンジ色の豆タイル、他は不揃い小石型タイルが張られている。ハンマーヘッド型の塩ビ管から給湯されている湯はややぬるめ。底からの気泡が豪快に盛り上がる。
 よく見ると湯舟の外側に2カ所のでっぱりがあり、その内側からジェットも噴出している。水流に揉まれ煽られて文明開化の花が咲く。

 奥の右側槽は漢方七度煎薬湯、やや熱めで漢方薬の入った袋が沈んでいる。こいつは疲れた足腰に嬉しいよぅ。
 もう一つは水風呂、これも嬉しいねぇ。ついつい長風呂だな。
 湯に身を任せて見上げれば、天井中央の大きな四角い湯気抜きが風情よし。だが天井全体は水色の新しいボードで改装されている。カラン・シャワーの出もいいし、まだまだ現役だ。

 目をひかれるのは男女壁にある美しいタイル絵、これはちょっとした見ものだ。武者が馬で海に入り、敵船に弓をひいている図だが、こんなの風呂屋で見たことないぞ。

 上がっておやじさんに聞くと、タイル絵は壇ノ浦の源平合戦「扇の的」の場面で、弓をひくのは那須与一だそうだ。長野県の伊那で作られたもので、昭和12年からあるとのこと。
「原爆被害はなかったんですか」
「原爆で浴室天井が落ち、壁も倒れたけど、タイル絵は丁寧に1枚1枚はがして再利用した。これだけが残ったんだよ」

 ああ、ここにもまた苦難の歴史を乗り越えてきた銭湯あり。俺の心は今日も雨だった。

(2008.4.6)
 →長崎旅行記
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五色湯《廃業》
廃業されました。
レポートは営業当時のものです。
(北岡さん情報感謝!)


佐世保市高天町7-3
電話 0956-23-0632
【営業時間】(聞き忘れ)
【定休日】月曜日
【入浴料金】大人350円


 佐世保駅の大通りを左(北西)へ数分歩くと、右手に戸尾市場というなんともエエ雰囲気の商店街がある。そこをずっと歩いて行くと小さな川が現れる。
 川に沿って少し進むと、左手にレンガ煙突の登場だ。白い文字が剥げているが、かろうじて「五色湯」と読める。佐世保駅から十数分というところ。

 表側の路地にまわってみると、瓦屋根の木造2階屋に洋風アーチとタイル円柱という昭和前期的モダン建築だ。

 
(左)レンガ煙突   (右)狭い路地にさりげなく暖簾がかかる

 
(左)ギリシャ・ローマ文明   (右)玄関の右下に盛り塩発見!

 
激渋タイル~っと

 「男湯」と赤で大書きされたドアを空けて中に入ると、狭いタタキがあって、番台におかみさんが座っている。
 脱衣所には新建材モノは少なく、なかなかレトロな雰囲気にひたれるじゃぁありませんか。

 
(左)脱衣場から玄関タタキ方面   (右)升目の大きな格天井

 
(左)浴室方面   (右)ロッカー上には常連桶ぎっしり

 脱いだものを籐の丸籠に放り込んで、浴室へ。
 壁の下部は新しいタイルに張り直され、床は滑り止め効果の高いギザギザタイルが張られていて、現役感が強い。
 だが、壁上部から木の天井は水色ペンキで塗られ、天井中央に大きな湯気抜きが開いているのは、昔ながらの素朴な銭湯の味わいだ。

 湯舟は奥に2槽。どちらもフチには大理石が乗っているのが特徴的だ。
 左の主浴槽にはジェットがあって湯はやや熱め、右浴槽は「薬宝湯」の茶色いお湯でややぬるい。自分で湯と水の栓をひねって調節する古いスタイルだ。

 浴室の左右にカラン&シャワーがあり、中央に島カラン、こちらはシャワーなし。
 懐かしい雰囲気に適度な改装を加えた、使い勝手のいい銭湯だ。心地よし。

 あがっておかみさんに聞くと、建物は築60年くらいとのこと。佐世保駅から歩いて行ける、味わい深い貴重な銭湯だ。
(2008.4.5)

 
夜になるといっそうムードが盛り上がる 
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木場田湯《廃業》
2015年9月に廃業されたようです。
レポートは営業当時のものです。
(おせんちゃん情報感謝!)



佐世保市木場田町10-10 →地図
電話 0956-23-2308
【営業時間】15:00~22:00
【定休日】木曜日


 佐世保駅から2kmほど離れた佐世保市役所前でバスを降り、市役所北側の道を西へ入って徒歩2分。突き当たりに光る「ゆ」の電光看板を見つけて思わず駆け足になる。これを風呂バカと呼ぶ。

 
なんともいえぬ、ええ風情

 電光看板の前で左を見たら昭和中期的な木造モルタル一般民家風、暖簾はないが入口の奥に「男」「女」の入口が並んでいる。

 
(左)建物入口から   (右)男女別の戸は新しい茶色アルミ、張り紙は正月の営業予定

 戸を開けると過去最狭のタタキ、靴2足で埋まりそう。
 左にこげ茶の古い木製下駄箱、右にこれまた古い木製番台。妙に丁寧で真面目そうなオヤジが座っていて、俺を一見客と見るやロッカーの鍵の使用法まで説明してくれる。俺を誰だと思っとるのかね? 泣く子も浸ける風呂バカだぞ。

 脱衣所は、手前から奥に行くにしたがってだんだん広くなる遠近法な間取り。ロッカーは木製だが、全体に昭和中期な合板系改装が施され、さりげなくエアロバイクが置かれたりしている。

 が・・・やややっ! こっこっこ、これはいったい・・・これは身長計か?

 身長計は古い銭湯の基本アイテムの一つではあるが、こいつはタダ者ではない。普通の身長計は直径5cmほどの角棒に目盛りがついたものだが、ここの身長計は角棒の左右両脇に、それぞれ幅12cmほどの板が上から下まで取り付けられている。つまりこの身長計は棒ではなく、幅30cmほどの縦長の板状をなしている。
 そしてその板は片側4つ(合計8つ)の広告枠に区切られ、質屋・ブリキ屋・時計屋、あるいは「みなさまの美容室まりも」など、いったいいつの時代に存在したのかというような商店の広告が色を違えて掲載されている。
 まるで身長計商店街。こんなの初めて見た! マニアなら気絶の危険大。

 浴室は中型の広さで、かなり古めかしい。壁・天井のペンキやタイルはけっこうキテル感じだが、意外にもお客が7~8名いる。
 男女の仕切り壁は木枠に曇りガラスで、ちょっと珍しい。その下にある主浴槽は、浴室のサイズの割に大きく、熱めのお湯がたっぷりなのが嬉しい。
 奥に入浴剤入りの副浴槽、こちらも入るとお湯がザバーでよろしいなあ。

 カランやシャワーは古いけど快調に作動する。カランの湯は猛烈に熱い。
 壁の中ほどに、長方形の花柄マジョリカタイルが浴室をぐるっと1周するかたちで1列に張られているのがキュートなアクセントになっている。

 上がりは飲み物販売なし。
 建物外観はどうってことないが、身長計の存在感が圧倒的。お湯たっぷりの大きな湯舟もよい。銭湯の少なくなった佐世保で、地元民に愛される貴重な湯屋だ。

(2006.12.29)
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浮亀湯《廃業》
2008年に廃業されました。
レポートは営業当時のものです。


諫早市有喜町99
電話 0957-28-2555
【営業時間】15:00~21:00
【定休日】月・木・土


 諫早駅から県営バスで30分ほど離れた橘湾の漁港、有喜(うき)へやってきた。
 え? いや、諫早の銭湯を電話帳で探したら、ここ1軒しかなかったので。しかも電話帳には屋号じゃなくて経営者のお名前で載っていた。

 有喜は小さな入り江にこじんまりとまとまった小漁村だ。集落内の道は当然のごとく細くてグネグネ。
 港に出て後ろを向いたら、煙突が見えた。

 
(左)あれだな!   (右)狭い路地を通って表へまわる。左が銭湯の建物

 
(左)正面、屋号の上に「くすり湯あり」とある   (右)よかった~

 ここ数年、電話帳情報が銭湯の廃業に追いついておらず、しかもこういう田舎の銭湯はたいてい休みが多いので、営業中であることを確認できたときの喜びはひとしおだ。
 さっそく入ろうとしたら、入口の戸が・・・。

 
こここれは・・・!?

 木戸がピシャっと閉められているではないか。でも「本日あります」よね・・・。
 ともかく開けてみたら、暖簾は内側にかかっていた。狭いタタキ横の番台には比較的若い男性(といっても俺よりは年上だろうけど)が座っている。ちゃんと営業中だ。

 狭い脱衣所は素朴な田舎銭湯そのもの。低い天井、古い広告。ロッカーに鍵はなく、金具をひっかけるだけ。

 
(左)内側から見た玄関の戸と、オリジナル暖簾   (右)脱衣場

 
(左)絵のタッチが最高な古い広告板。「まるたか」は長崎の地場デパート   (右)泣ける

 浴室もこぢんまり、しかも貸切だ。
 隅に湯舟一つだが・・・ややっ、白濁してるぞ! 緑色や茶色の湯は多いが、白濁はレアだ。むろん入浴剤だろうが、山歩きのあとだけに嬉しいなあ。
 辺鄙な田舎の古い風呂だが、きれいに維持されていて清潔感がある。

 
小さな極楽

 湯はややぬるめだった。
 天井に高々と開いた四角い湯気抜きを眺めつつのんびり浸かっていると、お客が入ってきた。挨拶したら、「熱いとかぬるいとかないか?」と聞いてくる。
 「ちょっとぬるいですね」と言うと、湯舟の奥にある蛇口をひねって熱い湯を出してくれた。
 それぞれが自分の好みで勝手に湯温を調節するのも田舎銭湯の味わいだ。都会で起こるモメゴトがここでは起こらないのだろう。

 この客は70代の漁師で、橘湾近辺でニボシなどを獲っているらしい。
 「若い頃は北海道やらいろんなとこでサバなんかば獲ってたばい。今はもう有喜ん漁師も年寄りばっかじゃ」

 カラン3つ、きちんとシャワーもついている。
 桶は家庭用の普及品だが、カラン下の台にステンレスを継ぎ足して置きやすくしてあって、自宅の風呂のように使い勝手がいい。

 上がりは飲み物なし。
 番台の主人は2代目で、漁師だった父が始めたのを20年前に手伝うようになったそうだ。
 「ここはなんでウキカメ湯という名前なんですか?」
 「浮亀と書いて、うき、です。今はここの地名は有喜と書きますが、昔は海から見たこの入り江の高台が亀が浮いてるように見えたので浮亀という名前だったらしいです。それをあとから有喜に変えたみたいで」

 諫早にたった1軒だけ残った素朴な銭湯。この存在の貴重さは何ものにも替え難い、と俺は思うのだが・・・。
(2008.4.4)
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おたっしゃん湯(脇浜温泉浴場)
雲仙市小浜町南本町7 →地図
電話 0957-74-3402
【営業時間】6:00~21:00
【定休日】・・・(たぶん無休)

【入浴料金】大人150円


 行くも涙、行かぬも涙の激渋共同湯。

 小浜温泉は島原半島、雲仙の西麓の海岸に湧き出るアッチッチの温泉だ。長崎駅前からバスで1時間15分ほど。
 小浜バスターミナルから出たら、海岸沿いの幹線道路と平行して南北に商店街が走っている。それをどんどん南へ歩き、雲仙登山道路を過ぎてもさらにずんずん歩くと、商店街のイラストマップ看板があって「おたっしゃん」と載っている。

 少し先に下左写真のような看板があり、指示通りに入ると右下写真のごとくこの激渋木造建築が現れる。バスターミナルから1km以上歩いたかも。

 
(左)商店街をず~っと歩いて行くと看板あり   (右)茫然自失の対面

 
(左)前は藤棚、2分咲き   (右)風呂であることを示すのはこの「男湯」「女湯」表示のみ

 りりしすぎる築古年、いくらなんでもそげんこつ。
 屋根の形状が少し変わっている。ダブルの破風が愛らしか。

 風呂であるとも温泉であるとも営業中ともウンともスンとも表示がないが、人の出入りがあるのでやってるらしい。

 戸を引いて中に入ると、意外にも広々した空間だ。ゆったりサイズのタタキに靴を脱ぎ、ゆったりサイズの番台に鎮座するばあさんにジェニコば払う。ばあさんテレビに夢中のため無愛想。

 脱衣場では、漢数字が書かれた木のロッカーがデンと存在感を示している。減価償却しすぎなまで徹底的に使い込まれ、もはや脱衣箱仙人さまとでも呼ぶほかはない。
 壁には温泉の成分表などがいろいろ貼られているが・・・源泉97度だと!
 大昔のままの「浴客心得」がまたすごい。「~~者ヲ入浴セシメサル事」などとあるが、「~~」の部分、現代においてはとうてい表記できぬぞ・・・。

 
(左)玄関タタキと番台周辺   (右)年季の入った脱衣ロッカー、左が浴室

 
脱衣所のガラス越しに見た浴室

 裸になって浴室への渋い戸を開けると、この世のものとは思えぬ美しい光景が広がった。


ぬおおおおおぉぉぉ~~~~っ

 
(左)むごおおお~~~~っ(鹿児島の前田温泉に共通する床)   (右)天井の湯気抜き

 言えない書けない無理よ無理。はらはらと頬を伝う涙をぬぐうことも忘れ、生きとし生けるものへの感謝を石の湯舟に捧げつつ、静かに風呂に身を沈めるのみ。

 手前の湯舟は底に薄い緑のタイルが貼られ、奥の湯船には青いタイルが貼られている。それがお湯を通してエメラルドのようにやさしく輝き、もはやあの世へ行っちまったかと錯覚するような麗しい色彩を奏でている。

 一方の壁から2本のパイプが伸び、ふたつの湯舟の仕切り上で源泉と水とが常時注がれている。その双方の流れ込み加減を常連客が調節することで、手前の湯舟はかなり熱めに、奥の湯船はややぬるめに保たれているようだ。

 両方の湯に交互に浸かっては、右奥にある水鉢の水をかぶって冷やし、湯舟のフチに腰かけて放心する。その無限連鎖。宇宙の真理がここにある。

 お湯は熱いが、まったりとろりとやわらかい。食塩泉なのでしょっぱいけど、源泉注ぎ口にあるコップにとって飲んでみると、塩分ひかえめでミネラルたっぷり、こいつはうまい。極上の湯だ。
 その湯に全身を沈める、この建物の、この湯舟で。と語順もバラバラだよこの贅沢状況においては。

 
(左)桜も映える浴室側面(裏手の駐車場から)   (右)裏手からもうもうと上がる温泉蒸気

 季節よか。天気よか。土地柄よか。建物よか。浴室よか。湯舟よか。お湯よか。
 すなわち、よかよかよかよかよかよかよか、ばい。
(2008.4.7)

※「レトロ銭湯へようこそ西日本版」に掲載されました。
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荒木湯
営業時間が変わっています。
(桶太郎さん情報感謝!)


南島原市西有家町須川685
→地図

電話 0957-82-2643
【営業時間】16:00~21:00
【定休日】未確認


 雲仙普賢岳に登ったあと、島原半島南部の有家(ありえ)方面行きのバスに乗った。火山地形をうねうねと下り、海岸線に出たところの須川港でバスを降りる。
 国道に平行して、商店などが並ぶ狭い道がある。そこを歩くと・・・ややっ、前方に水色が!

 
(左)道の先に・・・   (右)水色ハウス、でも建物自体は純和風

 
(左)側面。銭湯だよな   (右)まぎれもなく

 水色は広島あたりの銭湯でよく見かける色調だが、ここまで建物全体が水色化しているのは見たことがない。しかも最近このようにしたみたいで、きれいだぞ。

 暖簾も何も出ていないが、風呂道具を持った人の出入りがあるので、やってるみたいだ。
 戸を開けて中に入ると・・・狭い! タタキも狭いが、脱衣場も奥行きがなく、すぐそこが浴室だ。天井も低い。いやーこれはアットホームというか、俺の勉強部屋にしたいよ(なんでや)。
 こじんまりした空間だが、ここも外壁同様、オフホワイト系のやさしい色できれいに塗られていて、ボロさを全然感じさせない。

 小さな番台には、やさしげなおかみさんが座っている。風呂賃、170円だと!
 驚いて「えらい安いですね」と言うと、
 「ずっとあげてないんです」とおっしゃる。

 
(左)玄関タタキと番台周辺   (右)年季の入った脱衣ロッカー、左が浴室

 浴室もこじんまり。タイル張りの四角い湯舟がひとつあるだけのシンプル空間だ。そしてここの壁は薄いパステルグリーンに塗られている。
 ややぬるめのお湯は、バスクリン系の緑色入浴剤入りだ。

 先客のじいさんが上がって、一人のんびり浸かっていると、まもなく別のじいさん2人と若者一人が入ってきた。
 3人は和気藹々と楽しげに話しているが、その会話を横で聞いてても全然わからない。長崎弁ってこんなに難しかったっけ? 「ヒラメ4キロ」以外、一切理解できなかった。たぶん漁師の浜言葉なんだろうけど・・・。

 3人はヨソモノの俺にはまったくかまわず、ウミンチュ語で談笑し続けていた。
 九州西海岸はかつて琉球から連なる独自の海洋文化圏に属していたらしいが、日本もまだまだ広いなあ。

 上がっておかみさんに聞くと、建物自体は戦後のものだそうだ。
 言葉もわからない辺鄙な港にある荒川湯は、コンパクトだがきれいに管理された、さわやかなパステル銭湯だった。
(2008.4.7)
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高峰温泉
壱岐市勝本町立石西触200 →地図
電話 0920-43-0008
【営業時間】6:30~21:00
【定休日】無休(正月のみ休)

【入浴料金】大人300円


 壱岐の中心、郷ノ浦からバスで20分ほど北上すると、湯本という鄙びた漁村に着く。ここはその名の通り、古代より湧き続けている温泉地で、何ヵ所か共同浴場があるらしい。
 バス停から郷ノ浦方面に少し歩き、平山旅館を過ぎたところで右手の海側へ下りてゆく道をなんとなく覗いたら・・・!

 
(左)海をバックにヒナビな風呂屋さん発見!   (右)料金はここで声をかけて払う

 うーむ、夕焼けを背負ってタマラン風情やがな。でもこの建物は浴舎ではなく、経営者の自宅のようね。
 玄関でゼニコだけ払って、左手奥にある別棟へ向かう。

 
こっちが浴舎

 入り口にはどっちが男とも女とも書いてない。
 どちらにしようかな天の神様の言うとおり、エイッ! と右側を開けたら、一人のじいさまが服を着ているところだった。えがった~。

 脱衣場はこぢんまりしているが、わりと新しく改装された感じ。棚にプラ籠が並んでいる。
 じいさまは、「ここの湯が一番キクんじゃ。神経痛にも効くし怪我も治る。わしゃ芦辺から来とる」と言って、帰ってゆかれた。芦辺というのは島の反対側だ。

 ともあれ、荷物と服をプラ籠に押し込み、裸になって浴室へ。

  
浴室

 これまたこぢんまりした浴室だ。
 隅の源泉マスから石の湯船にチョロチョロ注ぎ込まれる湯は、50度近くありそう。向かって左が熱く、右は43度くらいにさめている。
 湯本の湯はすべてこのように茶色くにごっている。床や壁もその成分で茶色く変色している。
 舐めたら塩味。でも海水よりはやや薄い感じ。
 手前にはカランが2つある。意外にも自動調温式の最新カランだ。

 静寂の風呂に、ひとり浸かる。アツアツの湯に包み込まれる。
 玄界灘に浮かぶ島の小さな共同浴場で過ごす、至福のときなのね。

 ちなみに湯本には、バス停のすぐ向かいにある万福温泉をはじめ、全部で4軒ほど共同浴場があるようだ。宿で聞くと、この高峰温泉がいちばん古いらしい。
(2010.11.17)
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