関西の激渋銭湯
チープに極楽。生きててよかった!
   レトロ銭湯へようこそ
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レトロ銭湯へようこそ
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【奈良県】の激渋銭湯 
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扇湯(奈良市)
大西湯(奈良市)

大門湯★(大和郡山市)

高砂湯★(大和高田市)
中央温泉(大和高田市)
松湯(大和高田市)
蘇武湯(橿原市)
七福湯(橿原市)

新産湯温泉(御所市)

栄湯(五條市)

旭湯(吉野郡大淀町) 
奈良県の廃業した銭湯
 
扇湯

奈良市築地之内町16 →地図
TEL : 0742-22-8079
【営業時間】11:00~20:00
【定休日】水曜日


定休日が変更されています。2015.8.5
(和也くん情報感謝!)



 ならまちエリアの南のはずれあたり、「ならまち格子の家」のすぐそばで、古都の風景にズッポシ溶け込んでいる銭湯。このへんはJR桜井線の京終駅が近い。
 平べったい玄関小屋根は美好湯に似ているが、その下は前栽をつぶして脱衣場を広げたパターンのようで、のっぺりした壁になっている。広げたっちゅーてもかなり古そうだが。

 破風の下のガラスにかすれた屋号

 暖簾をくぐると下足スペース、正面に花柄のタイル絵あり。でも掲示物で隠れていて見えない。下駄箱はピカピカ新品のアルミ製に替えられている。

 戸を開けると番台におばちゃん。こじんまりした脱衣所は、格天井に巨大な木のプロペラ、神棚、壁上部はしっくいと、前時代の遺物がひそかに息づいている。
 でもロッカーは下駄箱同様にピカピカ新品アルミ製、そのほかもベニヤ系でチープに改装されている。
 かつて前栽があったとおぼしき部分は、脱衣所が広げられて物置と便所になっている。

 小さな浴室はシンプルに改装されて清潔感に溢れている。男女隔壁ぞいに深い主浴槽、奥にジェット2連の浅い風呂。タイルは京都的な小さめのものが使われている。
 奥壁全面にモザイクタイル絵がある。男湯は海辺の灯台周辺風景、ヨットが浮かんでカモメ飛ぶ。女湯のほうはとがった山の絵らしい(低い男女隔壁ごしに上半分だけ見える、断じて覗いてない)。

 奈良へ来るといつもたくさん歩くので、じっくり足をぬくめませう。湯温は42度強。下半身ホヤンホヤンになるまでじっくり浸かる。
 茹で上がったらカランの水を頭から一気にかぶる。んでまたお湯へ。

 上がりは飲み物販売いろいろあり。
 表へ出ると、昔ながらの街角を涼風が吹き抜けている。たまらない爽快感。

 いにしえ系にしては早い時間からやっているので、ここで一風呂あびてから午後のならまちを散策するという渋い技が使える。重宝な銭湯だ。
(2005.4.29)

※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。
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大西湯

奈良市中筋町18 →地図
TEL : 0742-22-4875
【営業時間】15:00~23:30
【定休日】月曜日


 近鉄奈良駅から徒歩2分。大通りの1筋北側に煙突が見えている。古都の夕方、昔ながらのどっしりした凸型玄関に暖簾が揺れる。嬉しい光景じゃありませんか。

 暖簾をくぐり、靴を脱いで戸を開けると、古い木の番台におやじさんが座っている。脱衣所には見事なケヤキ一枚板・浮き彫り漢数字の最高級ロッカーがデーン。素晴らしいじゃないですか。
 その他は改装されて古さはなく、清潔感が高い。

 浴室も全面的に改装されていて、設備がいろいろある。43度くらいある深風呂、気泡&ジェットつきのややぬるい浅風呂、滝状に湯が落ちるぬるめの薬湯、さらにスチームサウナだよ嬉しいじゃありませんか。立ちシャワーもあり。
 奥壁には小さいながらも湖水風景のモザイクタイル絵、芸術性にはチト欠ける。

 それにしてもこの銭湯、けっこうお客が多くて活気があるぞ。まだまだいけそうじゃないですか。
 
 上がりは、開け放たれた前栽にすっぽんぽんで向かい、夕焼けを見つつタオルで股ぐらから尻をペシンペシンいっときましょう。最高じゃないですか。
 飲み物いろいろあり。ゆっくりスコールでも飲んで帰りましょう。
(2006.5.4)

※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。
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※2017年3/4、関西てくてく銭湯のツアーが行われました。
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大門湯 

大和郡山市柳5-1 →地図
TEL : 0743-52-2830
【営業時間】15:30~22:30
【定休日】月曜と第2・4火曜

定休日と営業時間変更(2017.5.16)
(こたつぬくみさん情報感謝!)


 古い城下町のメインストリート「柳町」の南端に、さりげなくたたずむ郡山唯一の銭湯。周囲の街並みに見事に溶け込む日本旅館ぽい建物に、柳の木が素敵です。

 しかし、けっこう大きいぞ。ウナギの寝床が並ぶ城下町で、こんなに道路に面した間口が広いのも珍しい。
 壁なんかも新しいようだし、もしかして2軒分を合体させて改装したのか?

 
入口の看板もしゃれてます

 おっと、風情ある格子戸は自動ドアだ。
 広い下駄箱スペースの床は情緒ある板張りで、どこがどうなのかわからんが上品さが漂う。ただならぬセンスのよさに、小学生の息子も「あれ? ここ、なんかいいね」と思わずつぶやいている。

 中へ入る戸も自動ドア。ロビーは広くてテレビや新聞雑誌があり、左手フロントにおばちゃんが座っている。その脇の廊下を進んで男女分かれるという、普通の銭湯では見られない間取りだ。
 随所に見られる飾りつけもなんとなく旅館チックで、センスがいい。というか、下町銭湯クオリティではない。
 脱衣所も明るく新しい。古~い銭湯が醸し出すディープなテイストはない。

 浴室へ入ると、懐かしい光景が広がる。改装されてはいるが、湯舟のフチや周囲の座り段には分厚い白御影石がどっしりと据えられ、内側には細かな丸い豆タイルがびっしり張られている。
 浴槽は多彩で、中央に深い主浴槽、男女隔壁ぞいに手前から浅風呂、ジェット&気泡風呂、電気風呂が並ぶ。
 向かい側にはカランが並び、手前に水風呂、奥に別料金サウナ。出口横には立ちシャワーもある。

 設備は揃っているが、材質はスー銭ぽくなく、本来の伝統的銭湯素材が活躍しているのが嬉しい。男女壁には、見るからに高級そうな天然石が豪快に張られていて、並の銭湯との違いを感じさせられる。
 湯の温度が、熱めの深から浅、気泡と順に低くなっていく点も素晴らしい。

 そして最も驚愕したのは、露天風呂。これはたまげた。めちゃくちゃカネがかかっているぞこれは。
 まず周囲の庭が本格的日本庭園。京都の船岡温泉もケシ飛ぶね。露天風呂の背景としてではなく、ちゃんとした「庭」なのだ。
 そしてその中央に4~5人サイズの岩風呂。そこに使われている岩たちの立派なこと。しかもその周囲をツギハギのないロング御影石が手抜きなく固める。その頭上を覆う東屋がまた磨き丸太を使った本物でございます。
 完全に採算度外視だろうこれは。店主のこだわりとセンスが織り成すリッチな演出に酔いしれるしかない。
 庭が立派すぎるため、夏場はじゃっかん蚊が多いのは仕方ないだろう。

 贅をつくした改装は一見スー銭ふうにも見えるが、じつは下町イニシエ銭湯保守本流の硬派進化系であるということに銭湯好きならば気づくはずだ。とにかくセンスが渋い。
 唯一の難点を挙げれば、水風呂が冷却されていないことだろうか。でも地下水っぽい香りがほのかに漂ってて満足。

 土曜日の夕方、ゆっくりと楽しめた。
(2005.8.6)
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高砂湯

大和高田市高砂町4-36 →地図
TEL. 0745-52-6751
【営業時間】16:30~22:30
【定休日】4と9のつく日


 国宝ゴロゴロな奈良県にある、国宝級の銭湯。
 もうこうなったらチョンマゲでも結って帰るか、とでも言うしかなくなる激烈な渋さだ。

 JR高田駅から徒歩2分。かつて川の土手だったと思しき細長い土地に、さりげなく銭湯あり。
 玄関部分はアットホームな感じで、さほど濃厚な古さを感じさせるわけではない。

 
(左)忍法暖簾返しの術   (右)夜になるとささやかに目立つ

 だが暖簾をくぐると・・・むおっ、こ、このケハイは!
 おいおいおい、マサカ・・・。

 
(左)さあ異次元空間へようこそ   (右)玄関正面

 
(左)でかい下足札、鍵は引き上げ式   (右)下駄箱前の床は竹敷き! 感動あるのみ

 長年の行ったり来たりで丸みを帯びた木の戸を開けて、中に入る。
 当たり前のごとく古い木の番台に女将さん。その横におやじさんが立って、冷蔵庫上のテレビを見ている。

 んで、この脱衣所・・・もしかして俺は時空のスキマに落ちたのか?

 
(左)天井がかわってる   (右)男女仕切りの鏡と神棚

 
(左)なんとも美しい一枚板ロッカー   (右)出ました! 赤ちゃん台つきロッカー

 まず目に飛び込んでくる赤ちゃんベッド式の脱衣箱。元は女湯にあったものだが使われなくなったので半分を男湯に移動させたそうだ。
 いやまあそれにしてもパーフェクトなるイニシエ空間。しかも美しい。これ。これなんです・・・(涙)

 はだかになって浴室へ。
 いやっほー出たー、石畳の床。そしてスキマにタイル詰め。タイル部分を湯が流れるように凹凸になっている。
 湯舟は男女仕切り壁に接して、きれいな黒御影の深浅。いにしえ銭湯にしては珍しく、浅いほうも深風呂と同じくらい広くて、強力ジェット1本つき。
 周囲には大阪式の腰かけ段があるが、これが厚み10数cmのぶっとい白御影。見とれるほどの重厚さだ。

 感激しつつ湯に浸かる。心なしか湯も柔らか。あ~極楽やのう。
 じゅうぶん火照ったら、湯舟外側の石段にヘタる。何十年も使われまくって人間の皮膚のことを知り尽くしたかのごとき肌触りだ。

 カランまわりは新らし目のタイルに張り替えられている。
 洗面器などを置く段が高めに設置され、しかも段の下が奥にナナメに入り込んでいて、デザイン的には最近のスーパー銭湯のように使い勝手がよい。下の排水溝も広め。

 そして何といっても特筆すべきは、鏡の位置および男女隔壁に張られているイスラム文様風の青い大判タイル。大正期以前のものに違いない。まったくもってすばらしい。
 壁画はなくとも、このタイルのおかげで上品かつゴージャスな雰囲気だ。

 それにしても、古い石たちが大事に磨かれていて心地よい。名銭湯だ。

 上がりは牛乳ほか飲み物あり。
 経営者ご夫婦に聞くと昭和初期の建築とのことだが・・・おや、ロッカーの隅に見慣れぬものが。ここここれは?

 
(左)な、なんですかこの時代がかった戸棚   (右)上部は薬箱だとう? しかも浮き彫り

 
(左)そして下部は「お預かり品」だとう?   (右)注意書きにも溢れる情緒

 完膚なきまでのイニシエ博物館。こんなところで裸になってフツーに風呂に入ってサッパリして帰るという、このワケのわからなさがたまらない。
 午後8時前、お客は3~4人だった。未来永劫、高砂湯に栄えあれ!
(2005.3.26)

 
ほぁ~っと満足の嘆息をつきつき帰る高砂湯 

※「関西のレトロ銭湯」に掲載されました。(2009年)
※その後、息子さんが経営を引き継いでおられます。(2014年)
※2017年5/27、レトロ銭湯探訪ツアーが開催されました。
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中央温泉

大和高田市本郷町7-7 →地図
TEL. 0745-52-4881
【営業時間】14:00~19:00
【定休日】5.10.15.20.25.30日

営業時間が短縮されています。
(ちあき♪さん情報感謝!)



 1年前に高田へ来たときは定休日だったが、強烈な印象が脳裏に刻印された。だって見てよ、土壁でっせ和尚さん。

 JR「高田」駅から南へ徒歩3分。近鉄なら大阪線「大和高田」駅、南大阪線「高田市」駅からともに歩いて10分たらず。
 ひなびきった本郷通り商店街のアーケード内に、時代錯誤なまでに古めかしい面持ちで忽然と現われる。

 
(左)さみしい商店街に・・・   (右)暖簾の下から覗いた玄関、下駄箱は新しい

 
(左)このあたりの壁がなんとも   (右)内側から玄関戸と傘いれ

 
(左)この入口の趣き、たまらん   (右)不思議なタイル絵、これ何でせう?

 戸を開けると古い木の番台にオヤジさんが座る。脱衣所を見回せば、泣く子も黙るこの空間。
 戦災に遭っていないとはこういうことを意味するわけです。

 
(左)帰りはばあさんに交替してた   (右)懐かしい・・・というか、こんな時代知らん

 
(左)出ましたケヤキ一枚板ロッカー、でも「三十七」にはテレビがはめ込まれている
(右)「三十七」ではカールスモーキーが熱唱中、これぞ本物の「ロッカー」


 
(左)仕切り壁の広告がまた泣ける   (右)格天井には木製プロペラ

 浴室へ。おっと、意表を突いてガキがたくさん賑やかに入っているぞ。今度小学校に入るガキ6人と引率オヤジ2人らしい。小さな浴室だからこれだけいるといっぱいだ。
 でも、居合わせた常連の年寄り客2~3人もなにかうれしそう。

 湯舟は中央に細かいタイル張りの深浅主浴槽がポンとあるだけ。周囲に大阪式の段はない。
 浴槽内はジェットもなんもなしの超シンプルプラン。あとは出入り口横に水鉢。
 ガキどもはややぬるめの浅い湯舟でひしめき合っているので、僕は深いほうへ悠々と浸かる。42度強~43度くらいか。歩き疲れた足腰がじんわり癒されるねぇ。

 奥壁全面にアルプス&湖水に洋館と白鳥のモザイクタイル絵がある。見上げればカマボコ天井に湯気ヌキの奈良標準形。
 床や壁は逐次修理のつぎはぎタイルで、カランと湯舟の中間あたりに排水溝が走っている。
 カランは異様に低い位置に設置されており、やや使いづらい。

 引率オヤジはガキどもに椅子や桶の片付け方をきっちり指導して上がった。
 なのに、あとから来た常連じじいはいきなり自分の綿タオルとナイロンタオルを湯舟にポチャンと投げ入れる。何十年来の習慣なんだろうけど・・・。

 上がると、番台はちょっと耳の遠いバアサンに替わっていた。80代後半だろうか。
 バアサンによると、この建物は昭和5年築とのこと。彼女がまだ娘だった時代から大事に管理されてきた様子が、随所にジワジワ~っとにじみ出ている。
 飲み物は牛乳ほかいろいろあり。

 こんな古銭湯に大勢の子どもたちとワイワイ入るのは妙に楽しいひとときだった。
(05.3.26)

 
ともかく貴重 
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松湯

営業時間が短縮されています。
(けいしょうさん情報感謝!)


大和高田市南本町8-13 →地図
TEL : 0745-52-4557
【営業時間】15:30~21:00
【定休日】4の倍数と31日


 希望の星、ついに登場。やればできるんだ皆の衆。

 いにしえ銭湯ファンの悩み。それは相次ぐ廃業はもちろん、老築化した銭湯が改装された場合にも表面化する。
 スー銭へ流れていくお客を呼び戻すには、ある程度の設備投資が必要だ。しかし味わい深い小さなタイルはすでに作られておらず、タイル絵や円形浴槽など効率的でない部分も失われることが多い。さらに費用対効果を考えると外観はパッとサイデリア的にならざるを得ない。昔は当たり前だった日本建築は、今じゃ高級素材のカタマリだからな。

 せっかくの改装も、俺のような変態ファンにしてみれば、ああここも中途半端なありふれた銭湯になっちまったよぉ~と嘆かざるを得ないのが辛いところ。

 そこへ、松湯だ。わしゃガツーンと頭を殴られたね。
 まあ見てよ。これはヒトツの事件です。

 
昭和初期のボロイ小銭湯が雰囲気そのままに美しく再生。角に自転車置き場ができた

 近鉄南大阪線の高田市駅から北へ徒歩5分。交差点に現われる古~い煙突と、ピカピカの美しい日本建築。
 田舎の古い銭湯が、こんなふうに従来の姿のまま改装されたのをワシャ見たことがない。白壁も板壁も瓦屋根も全部新品、全部ホンモノやがな。
 いったい中はどうなっているのか。興味津々で暖簾をくぐる。

 戸を開けると、やさしそうなおかみさんが座っている番台は・・・古い木のままだ!
 こじんまりした脱衣所は、今回の改装ではほとんど手をつけられていない。トイレだけ新品ピカピカの洋式、これは嬉しいねぇ。
 他は昭和中期ごろの改装っぽく、高い天井は洋風天井、壁はベニヤ改装、ロッカーも合板系。男女仕切り壁に電照広告があるのが珍しい。
 そして小さな冷蔵庫の下に・・・おぅ、生きとったか木製のオムツ台兼ロッカー。

 浴室入口の戸の横に熱帯魚のエッチングガラスあり。入口手前に桶が積まれている。
 この調子だと浴室内部も・・・おわっ、やっぱりここもまったく手つかずだ!
 昭和中期的な細かめタイル使いの浴室、湯舟は深浅のみ。浅いほうの底には丸い豆タイルがびっしり張られた古典的風景。
 ジェットなども一切なし、静かに湧き上がる湯の勢いがミメ麗しい。
 そして奥壁一面にチップタイルのモザイク絵、おおブレネリ的湖水山岳図。

 銭湯です。子どものころ見たまんまです。

 上がりは飲み物販売アリ。
 おかみさんに聞くと、改装が完成したのは2004年の12月。はじめは雨漏り対策に屋根だけを新調するつもりだったが、構造的に難しかったため、外壁とトイレも改装することになった。
 工事を請け負った大工さんは、「柱と壁の間が2ミリしかおまへんで!」と、このイニシエ建築の見事な造りに感嘆の声を上げたという。大工ならその技に触発されぬはずはない。今回の改装に手抜きはありえないだろう。

 「古い銭湯がどんどん廃業しはるんで、こんなふうに改装されるんは嬉しいなあ。まだまだがんばらはるんですね」と言うと、おかみさんはこうおっしゃった。
 「組合にも同じこと言われましたわ。でも来てくれるお客さんがいる限りがんばりたいです」

 外観だけ「レトロ風」に見せかけた鉄筋コンクリのスー銭ばかりが増える昨今、この銭湯のリニューアルセンスは渋すぎる。
 全国の銭湯ファンよ。おかみさんの心意気に応えなければウソだろう。
(2005.5.27) 
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蘇武湯

橿原市今井町1-4-12 →地図
TEL : 0744-22-5084
【営業時間】 17:00~21:00頃
【定休日】 木曜日

休業中。廃業との情報もあり。2017.5
(うたまつさん情報感謝)


 環濠集落がそのまま残った今井町は観光地として人気だ。
 その入り口付近に残る1軒の銭湯・・・いにしえの風情、というにはあまりにイカツイその外観。老いた落武者が「触れなば切れよ」と構えるがごとき風貌に、集客の愛想など微塵もない。
 一般的な観光客はビビって、とても暖簾をくぐれまい。

 
(左)道の向かいにある蘇武の井が屋号のいわれ  (右)観光客など一顧だにしない

 暖簾をくぐると下足スペースがあり、渋い戸口が待っている。

 
(左)客商売です  (右)はじめはおかみさん、上りにはご主人

 戸を開けると年季の入った番台があるが、ちょっと変わってて、前がドバババと半円を描きながら開くようになっている。
 あとで聞いたら、かつては前に出入りの階段があったが邪魔なので取り外し、横をサックリ切って女湯側に蝶番をつけて、手前に展開できるようにしたそうだ。

 脱衣場はわりと一般的だ。
 橿原神宮に奉納相撲に来た力士のサインが壁上部にたくさん貼られている。霧島と千代の富士のサインが値打ちもんではないか、とご主人は言う。

 
(左)脱力の脱衣場  (右)仲良き頃の若貴兄弟もあり。赤い手形が霧島

 
(左)浴室入口手前の床に貼られた細かなタイル  (右)同アップ、素晴らしい!

 裸になって風呂場へ入ると、正面に小さな水鉢がある。
 そして目に飛び込んでくるのは、奥壁のタイル絵だ。紅葉の渓流が描かれているが、あとで聞いたら男湯は奥入瀬渓流、女湯は十和田湖だそうだ。女湯覗きたい!

 浴室の中央に、幅の狭い長方形のタイル張り湯船がある。フチ石ノセだが、まわりに大阪式の腰かけ段がない。湯は42度くらいでちょうどええ具合。
 奥には3つの副浴槽が並んでいる。右からデンキ、気泡、ジェット2本。気泡とジェットは少し熱め。

 カランの水圧はやや弱めだが、出入り口近くにある立ちシャワーは水圧が高くて快い。
 いやー、外観だけ見てたら中に入るとどうなることかと思ったけど、銭湯としては一般に遜色ない施設で、清潔やし、絵もあるし、十分に風呂を楽しめるやないの。

 おやじさんによると、昭和21年に大阪を焼け出されてここへ来たそうだ。当時すでにここは風呂屋として営業していたが、それを借りて現在に至っている。

 17時半、他客が4~5人いたが、18時には俺のほか1名だけになった。

 
裏から脱衣場直通の秘密通路あり

 見た目に似合わず全然いけてる。観光客がゾロゾロ歩くエリアにあるのに、それを引き込む演出がないのは残念な気がする。
 でも今井町内に1軒だけある町家民宿には小さな風呂しかないため、泊り客が入りに来るという。どうか口コミでよさが伝わってほしいものだ。 
(2014.7.9)

※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。
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七福湯

橿原市小房町3−4 →地図
TEL : 0744-22-5529
【営業時間】 17:30~21:00
【定休日】 月曜日


 八木町は橿原の古い宿場町。昔のまんまの狭い町割りが戦災にも遭わずにギッシリ残っている激渋タウンだ。
 晩成小学校の南にも、なにやらせっばい路地がある。風呂屋のフの字も出てないけど、地図によるとここを入るようだ。ほんまかいな…。

 
(左)ばあさんのところに小看板あり  (右)むむ、このレンガ壁は

 
(左)おっとと、通り過ぎて振り返る  (右)袋小路!

 あかん、ホレた。俺はこういう路地に弱いんや。見てみぃ、時計の針が軽く300年ほど逆回りしてもたやないか。もうこの板塀に張り付いて埋まりこんで地縛霊にでもなったろか。
 正面外観だけは白っぽいモルタルで無表情に改装されているが、そこ以外はレンガ造りの浴室をはじめモロにイニシエのかほり爆裂系。タマラン。
 暖簾はかかってるけど、3房ともたくし上げられている。

 
(左)玄関クソシブイ  (右)福助~

 
(左)下駄箱は古代のロマン  (右)出ました漢数字浮き彫りの脱衣箱!

 やわらかな暖簾をくぐると、番台におかみさんが座っている。
 脱衣場こぢんまり。一枚板の最高級脱衣箱、背もたれのない細い木のベンチ、古いマッサージ椅子…チキショー、俺の涙腺にプラスのドライバーを突き立てるのはもうやめてくれ。
 天井は格天井ではないが味がある。そこから下がる3枚羽もよい。

 俺は重度の夢遊病患者となってパンツを脱いだ。
 浴室もこぢんまり。床やカランまわりはタイルが張り替えられているが、壁の半分から上はペンキはげたままだ。
 天井は男女それぞれ四角垂になって、小さな湯気ぬきがあるローカルスタイル。

 湯船は奥に横幅いっぱいにとられ、真ん中の深が手前に突出している。左に気泡、右に電気。さらに奥壁中央やや右が掘り込まれたようになってジェット2機噴出。
 それらが全部つながっていて、湯船がほぼ十文字の形になっている。これはそのようにデザインされたというより、増築したらこうなってもーたに違いない。

 ゆったり体を沈めると、お湯は適温、ジェットもご機嫌。大和三山を歩き回った疲れが心地よく溶けてゆく。
 カラン・シャワーも快調で使い勝手よい。
 出入り口脇に満々と水をたたえた水バチがある。

 上がりは飲み物なし。
 他客は一人帰って一人来るという感じ。地元民がポツリポツリとこの路地奥に潜り込んでくる。
 ここでは何十年も同じように繰り返されている、いつもの光景だろう。しかし考えてみれば、なにもかもが不思議に思えてくる。

 
(左)夜は恐怖の路地となる  (右)路地に突き出す小さな電照看板だけが頼り

 営業中は玄関の木戸が開け放たれていたが、それが閉まっている姿を見たくて、翌朝に再訪してみたら、こんなふうだった。

 
カッコエエ・・・

 脱衣場のシブさや十文字浴槽もさることながら、この風呂屋の最大の魅力はなんといっても外部から隔絶された300年前の路地奥に隠されているという秘密感、埋没感だ。
 この風呂に入らずして、気安く「タイムスリップ」なんていう言葉を使うべきではないだろう。 (2014年10月)
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新産湯温泉 《休業中》

ご主人がご病気で休業中。
廃業手続きを進めておられるようです。
2017年6月現在。


御所市柿ケ坪645-1 →地図
TEL : 0745-62-3615
【営業時間】16:00~22:00
【定休日】月曜日


 JR御所駅から東へ数分歩くと葛城川にぶつかる。左手に見える橋を渡ると、こんな看板が見える。

 
「信号を右へ100m」とある

 昔ながらの銭湯で、こういう案内板を出しているところは極めて珍しい。書かれたとおりに曲がると、4~5台停められる駐車場の奥にこの銭湯が現われる。
 おおっと、これは! なんと申せばよいのかこのチープな田舎風情。元は瓦屋根だったのだろうが、今やトタン葺き。暖簾は洗濯しすぎて隅っこが千切れている。
 そしてなんといっても手書きの看板がたまらない。屋号も渋いねえ。まさに産湯のごとき郷愁爆発系だ。

 
手作り感が最高です

 手前の駐車場内に外便所があり、建物の右奥には釜場が見えている。素朴にして筒抜け、蘇る3丁目の夕日。
 玄関部分はあとから増設されたようだ。暖簾をくぐると、土間に続いて下足室があり、年季の入った大きな下駄箱が2つ向き合っている。入口は右側。これも古い銭湯では珍しいパターンだ。

 

 番台にばあちゃん、前栽にヤツデ、の最強懐古セット。床は板張りに竹敷き。
 でも脱衣所の天井やロッカーは新しいものに取り替えられ、あまり古さはない。神棚の位置にはテレビが据えられている。

 浴室は中型の広さで、カマボコ天井に小さめの湯気抜きが開いている。
 湯舟は男女仕切り壁に沿って、深、浅ジェット3連、浅気泡の3槽が一列に並ぶ。どこも昭和的な小さめのタイルで覆われていて、随所に白セメント修理が見られるものの、ジェットも気泡も豪快に景気よく噴出しており、ボロい感じはない。浴槽面積が広くて、のびのび感が味わえる。
 そして奥壁一面に、クラッシュタイルで描かれた湖水&白鳥のモザイク絵あり。

 湯温は41度強、ややぬるめ。今日もよく歩いたから気泡風呂がメチャクチャ気持ちええわ。カランもシャワーも快調。隅に水鉢あり、頭から冷水をかぶりまくる。
 いやー、外観は濃いけど中はかなり快適だ。

 上がりは飲み物販売あり。
 日曜日の夕方、お客が次から次へとクルマでやってくる。それぞれ家族揃って5~6人ずつ。6時すぎには駐車場は満車で、路停まで出ている。この地域の手ごろな憩いの場として根付いているんだな。
 案内看板、手書きの屋号、快適な浴室。ふしぎな魅力の産湯だ。
(2006.3.5)
 →御所旅行記

 
帰りしな、靴を履きながら外を見る

※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。
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※2016年4/2、レトロ銭湯探訪ツアーが行われました。
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栄湯

五條市須恵1丁目11-15 →地図
TEL. 0747-22-3169
【営業時間】16:00~20:00
【定休日】6の倍数日


 五條駅から商店街を歩いていくとこの風呂屋がある……はずだけど、たまたま通りかかっただけでは気づかずに素通りしてしまうことだろう。
 あるさこのへんにきっとある! と信じて右側の家並みをずっと見ながら歩いたら、建物の間のクイッと奥まったところに、この古めかしい玄関が見える。

 暖簾をくぐるとすぐに建物は90度左へ回転する。ていうか立地的に建物が横を向いている。
 この謎めいた回転空間がけっこう広くて、秘密の洞窟への入口を想起させられる。

 
(左)90度回転して左に入口   (右)女湯の下駄箱が激渋い

 靴を脱いで中に入ると年季の入った木製番台があって、男湯側におやじさんがいる。
 静寂に包まれた脱衣場はこれまた苦味走った柿渋色。一般社会とは遠く隔絶した領域だ。漢数字浮き彫りの脱衣箱がもーたまらん。

 
(左)堂々のケヤキ一枚板づくり   (右)閉店後に見せてもろた女湯の赤ちゃん台

 
男女境の鏡と神棚

 こんな田舎の、ある種荘厳なタイムカプセルの中でいきなり素っ裸になるという摩訶不思議がほんまタマラン。裸で風呂に入るのは当たり前なのに、五感がアンビリーバボーを感知するという混乱。その脳内刺激が3秒後にパーンと音を立ててアルファ―波に昇華され、脳天まで突き抜けてくる。
 最高。最高だよおっかさん。意味不明な笑いがこみ上げて止まらへん。

 浴室は昭和中期に改装されたっぽいが、そのままの姿で年輪を重ねている。
 大きく全体を覆うカマボコドーム天井の下、湯船はカクカクっと不思議な形状をしている。
 その一番手前のへりに腰かけている白い人がいる。女神さまが水瓶を肩に乗せて中腰になっておられるのだ。
 奥のほうではジェットがブクブクと音を立てている。相客はいない。

 
この世とあの世の境界地域

 お湯の温度はちょうどよい。ゆったり浸かって、口から魂を出したり入れたりする。だらだらと体を洗い、腕立て伏せをして、ひげを剃る。
 貸切の静寂空間、贅沢の極みやな・・・。

 湯あがり、話し好きのおやじさんは五條や高野山のことをいろいろと教えてくれた。
 このおやじさんが踏ん張って風呂屋を維持し続けていることが、さびれゆく一方の駅前商店街の救いとなっている。

 俺がおいとますると同時に、おやじさんは玄関の木戸をきっちりと閉じた。この木戸がまた明日開かれると思うと、なんだかちょっとじーんときた。
 さて、おやじさんが教えてくれた店へ飲みに行くとしよか。
(2015年5月)

※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。
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※2016年11/26、レトロ銭湯探訪ツアーが開催されました。
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旭湯

吉野郡大淀町下渕160 →地図
TEL. 0747-52-2863
【営業時間】15:30~19:30
【定休日】月曜日と金曜日


定休日が増えました。
(林宏樹さん情報感謝!)
営業時間が変更されました。
(タマオカさん情報感謝!)


 大峰山への登山口、近鉄吉野線の下市口駅。登山口の駅にはどこも独特の雰囲気があるけど、ここはかれこれ15年以上ぶりだよ懐かしいなあ。
 駅前から商店街の坂道を200mほど下って左側の路地を入る。徒歩3分ほど。
 おっと、狭い通りに古風な構え。こんな田舎町にこんな銭湯の暖簾が揺れているのを見つけると、もうそれだけで感激だ。

 
(左)前栽から伸びる松の木が立派  (右)玄関破風の上に玄武が生息

 暖簾をくぐると、あっさりした下足室。下駄箱や入口戸はアルミ系に改装されている。
 戸を開けると番台にばあさん、300円とは安くて嬉しいな。
 脱衣所はけっこう広い。おかみさんによると築70~80年くらいとのことだが、適宜改装されていて、天井などは新建材だ。
 でも脱衣箱はイニシエの一枚板の最高級もので、すばらしい存在感。
 男女仕切りに置かれた金魚の水槽、ワキンがでかいぞ。

 
(左)玄関にバラのタイル絵、既製品っぽい  (右)ケヤキ一枚板、浮き彫り漢数字のロッカー

 浴室もタイル張りに改装されているが、派手な床タイルははじめて見る不思議な柄だ。
 そして奥壁一面のモザイクタイル画がすごい迫力。湖のほとりのギリシャ神殿とビーナス像にウットリ、ここが奈良県吉野郡てことを忘れちゃう・・・こともないか。

 湯舟は中央に深い主浴槽と、奥にジェット2連の浅い副浴槽。大阪式座り段が周囲を囲む。タイル張りだが、フチのへりだけ砂利固めの洗い出しになっているのが珍しい。
 湯は42度弱、俺にはややぬるめだが、柔らかな感触が気持ちよろしい。
 どこがどうということはないんだが、ふしぎと居心地よくて長風呂した。

 上がりの飲み物販売はオロナミンCのみ。
 じっくり浸かって登山の疲れを癒し、小さな前栽の太い松の幹でも眺めながら、吉野の夕べに涼んで帰りましょう。 
(2006.5.2)

 
日本の素晴らしい風景

※その後、湯船は美しいタイルに張り替えられました。カッコイイ!
※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。
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