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【新潟県】の激渋銭湯 | ||||||||||||
寿湯 (新潟市) 天神湯 (新潟市)★(廃業) 旭湯 (新潟市) 桜湯 (燕市)(廃業) 泉の湯 (三条市) |
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壽湯
新潟駅から北西に約2km。信濃川を渡って10分ほど歩くと、金毘羅さんの横から地味な商店街がのびている。それを少し進むと右手に赤い看板あり。 (左)人通り少なし (右)でもこれがあればよし しかし看板あれど銭湯見えず。と思ったらコインランドリーの手前に狭いトンネル通路がある。この秘密! この穴場! (左)虎の穴へようこそ (右)信じて進むがよい 胎内くぐりのタイムワープゾーンを過ぎれば、古めかしい銭湯がようやく現れる。 古い木彫り看板、男女別の暖簾など、この時点でここが時計逆回転系のイニシエ銭湯であることを示している。 はやる心を抑えて、暖簾をくぐると・・・。 (左)タタキに番台 (右)脱力の脱衣所 いきなり民家的こぢんまりなくつろぎビームが俺を襲う。むかーしむかしのことじゃったあるところに1軒の風呂屋があってな的オーラに包まれながら、夢見ごこちで昔ながらの裸ん坊へと変化を遂げる。 むろんロッカーもあるが丸籠も積まれていて、他客はおおかたそれを使っているようだ。俺もリュックその他一切合財をそこへぶち込んだ。 浴室との境は全面ガラス張りになっていて、東京銭湯的な透明感と清潔感にあふれている。 浴室も奥に3つの湯舟が並ぶ東京スタイル。 奥壁一面に日本庭園のタイル絵か・・・?と思いきや、これはどうも写真プリントをタイルに貼り付けてあるらしい。こういうのは初めて見た。本物のタイル絵やペンキ絵に比べると若干のチープ感は否めないが、浴室に大きな絵を飾るというこの感覚がナイス。 3つの浴槽のうち深と浅はかなり熱くて、45度くらいはあるぞ。浅風呂にはジェットが2本出ているが、お湯の熱さで背中に焼け火箸を当てられるような修行感を味わえる。 薬湯は「薬宝湯」の袋が沈められ、黒湯のように濃い茶色のお湯になっている。こちらは若干温度が低い。底から「ミクロン気泡」が噴出しているが、勢いの強さのあまりミクロンが合体してフツーの気泡化している豪快さがたまらない。 お湯に翻弄されながらもタイル使いに注目だ。 床にはオレンジっぽい土色の柄入りタイルが敷き詰められ、カランまわりには帆船と花が描かれたタイル、カラン上の棚には薄い紅芋色のタイルが貼られている。 いずれも俺の郷愁中枢直撃のイニシエものだが、よく磨かれていて気持ちよく過ごせる。 女湯との仕切り壁はガラスブロックでできていて、ところどころに青い色ガラスが嵌められている。こういうのにも俺の中枢は簡単に溶融する。 上がって飲み物を飲みながらおやじさんに聞くと、俺の想像を超えた事実が判明した。 「うちは大正時代から90年間やってて、俺は3代目だけど、その前にも別の経営者がやってたから100年は経ってるかもね。その間に建て替えたという話も聞かないし」 ということは明治時代の建物なのか!? 「この建物は昭和39年の新潟地震にも耐えた。そのときは行列になったよ」 ホーロー看板 居心地のよい銭湯だった。 表に出てトンネル路地を抜けると、すぐ隣に「新小とり」という飲み屋がある。入ってみたら、人気の少ない界隈であるにもかかわらず店内は満員で大繁盛。 地酒やおでん、地場の一品ものなどなかなかナイスな店だった。旅の夜、壽湯とセットで楽しもう。 (2011.4.7) (左)路地から1軒シャッターおいて隣 (右)新潟の地酒にそらまめ |
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天神湯 ★
新潟駅から越後線で1駅の白山という駅で下車した。正面の幹線道路を左へ歩いて2〜3分で、北側に大きな煙突がニョッキリ登場だ。 その背後に見える銭湯本体の屋根、あれは湯気抜きなのか? なんかちょっと変わった、お城的な突出だぞ。 (左)印象的な湯気抜き部分 (右)表通りの突き当たりには天神の鳥居が見える 表に回ると、天神さんへの参道沿いという立地であることが判明した。 玄関は参道には面しておらず、隣家との間の狭い路地に暖簾がかかっている。でも隣家の1階は駐車場になっているため、すぐにわかる。 手前が男湯、奥が女湯 暖簾をくぐるや・・・こここれは、いにしえ銭湯バリバリでんがな。素敵! 広めのタタキに番台があり、品のいいおかみさんが座っている。下駄箱はあるけどみんなゾーリ脱ぎ捨てで即脱衣場だ。 決して広くはないが、見上げりゃ高々とした折り上げ格天井で、ノビノビ空間に思わず深呼吸してしまう。 男女の仕切り壁上の衝立にえべっさんの透かし彫りが施されていたり、窓の桟なども渋い和の風情を演出している。 ロッカーは隅にあるけどあまり使われているようすはなく、中央に積まれた丸籠にみな服を投げ込んで床に放置している。 で俺もそうした。 味わい深き脱衣場 浴室へ進んで、あっと声が出そうになった。 まんまんなかに湯船がひとつ。こいつが真ん丸ですやん! 完全な円形の主浴槽には久しぶりに出くわしたぞ。 浴槽は白タイルで、床も白タイル。男女壁には富士山や東海道五十三次のタイル絵が3つある。 カラン周辺や桶置き場なども含めて隅々まで磨きこまれ、全体として東京銭湯的な印象と清潔さに包まれている。 円形浴槽の湯は42度くらいで、端の石組みの中から湧き出てくる仕掛け。 夕方4時半、他客は4〜5人。壁側に大きくとられた窓から陽光がさんさんと差し込み、なんとも贅沢かつ、すがすがしいやおまへんか。うひょほぅ〜。 奥にひょうたん半分形の小さな副浴槽があり、「宝寿湯」の薬袋が沈められている。これがまたなかなかの極楽ぶりね。 風呂はこのふたつだけだけど、味わい深くてとっても堪能した。 上がるとテレビで高校野球をやっていた。飲み物を買って、しばし脱力に身を任せる黄金時間だ。 ふと壁の県浴ポスターを見ると、ここの円形浴槽がメイン写真として使われている。そうか、この円形浴槽は新潟銭湯のシンボル的存在でもあるんだな。 番台のおかみさんによると、昭和7年築。あちこち修理しながら続けてきたとおっしゃる。 レトロ風情たっぷりの脱衣場と、清潔感の漂う浴室の円形浴槽。よい。じつによい。(2010.8.7) |
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旭湯
新潟から越後線でチンタラポッポ、新潟市域の西の端っこ内野駅で降りる。 駅を出たらほんの3分かそこらで、幹線道路に小さな突き出し看板が見える。 その路地を覗いてみたら、あれまー激渋くてカワイイお風呂屋さんが隠れているじゃないの。 (左)赤い突き出しとともに石碑もあるぞ (右)このたたずまい、たまらん! このひそみっぷりはどうよ。 今ドキのスーパー銭湯には決してマネできない、いや決してマネしようとも思わない、というより決してマネしてはならない立地。なんせ隠れてるんですからね客商売が。 建物本体の板張りの渋さもさることならが、玄関の両脇には積み木を組んだような、見たことのない装飾の目隠し板塀がある。 その中に入口があるが、置かれたベンチや黒板などが田舎風情を惜しげもなく大放出。まったく脈絡なく「はは〜ありがたや〜」と拝みたい気分にさせられる。 言葉は無力 こぢんまりした内部ももちろん、番台のおばちゃんに始まって昔ながらの風情そのまんま熱烈保存系。好きなだけ泣きナハレ。 浴室も言わずもがな。湯船いっこポン。あちちのお湯で泣きナハレ。 ・・・スマヌ。このとき俺はこれほどの時間停止空間にいながら、じつを言うと時間に追われてあせっていた。 本来ならばこの湯に浸って時の過ぎ行くままに涙枯れるまで泣き続けるのが渋銭トリッパーのあるべき姿だが、あわてて上がったもんやさかい細部観察&脳味噌インプットもできず、非常に心残りなことをした。 しかもその残念感が影響したのか当レポートを書くのも忘れたまま、すでに8ヵ月が経過した。早い話、みな忘れてもーた。 まことに俺らしくないことでスマヌ。もう一度行く。それを楽しみにしといてくだせえ風呂バカの衆。もしくはサッサと自分で行って確かめて〜。 (2013.5.2) |
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桜湯
燕って名前は素敵だけど、越後線方面からの交通の便はあまりよくない。日が暮れてしもたがな。 でも駅からすぐの旧市街にはなかなか濃厚な雰囲気が残っている。ちょっとワクワクしながら激渋の暗いまちなみを歩いていくと、そこだけ明るい場所が・・・おっと、お風呂屋さんや! 暖簾が半円を描いて出っ張っているのが味わい深い。岡山にこんな中華料理屋があったなあ。 しかも中からは賑やかに子どもたちの声がワイワイと聞こえてくる。おぉ、寂しげな町のようすに似合わず、賑わってるやん! (左)暖簾の間に鯉のモザイク画 (右)タタキに番台、そしてざっくばらん系おかみさん 中に入ると、男湯の狭い脱衣場には男子小学生5〜6人と大人3人ほどがいた。女湯からも女子の声が聞こえてくる。 うーむ、子どもらに銭湯文化が根付いている地方がまだあったのか! と喜んだのも束の間。聞けば近所の児童館の学童保育のお泊り会で、こういうことは年に1〜2回しかないらしい。 ガキどもはちょうど風呂から上がったところで、やつらが体を拭いて帰ったあとは俺の完全貸切となった。 (左)脱衣場から浴室方面 (右)ロッカー こぢんまりした造りだが天井は高く、マス目の大きな格天井になっている。浴室との境も東京式に全面ガラス張りのため、圧迫感はない。 浴室も小さく、深浅になった湯船がポンと一つあるだけだが、天井はやはり東京風の2段式なので空間に広がりがある。 (左)湯船ひとつきり (右)浴室壁のかわいいタイル絵 モザイク画や金魚のタイル絵もあるし、カランもシャワーもちゃんと機能する。 でもおかみさんによると、「商売ならん。ふだんは子どもなんか来ん。老人無料制度でなんとかやってる」という状況らしい。 燕駅から徒歩5分ほどの便利な立地。渋いまちなみを照らし出す貴重な銭湯の灯よ、どうか消えないで・・・。(2010.8.7) |
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泉の湯
三条の奥の八木ヶ鼻という山に登った。下りたところに「いい湯ナントカ」という、850円のこぎれいな公共温泉施設がある。 もちろん渋銭マニアがそんなところへ入ったって面白くもなんともないから、バスに乗って東三条駅に戻り、歩いて10分ほどのこの風呂屋へ。 ひなびた田舎町にひときわ聳え立つ煙突。トタン張りのチープな脱衣場棟。これよこれ、こういうのを旅人は求めておるのだね。 入ったらタタキに番台・・・だが番台が外を向いている。フロント式に改造する昨今の流れに乗っているのかと思いきや、ここはずいぶん昔からこのスタイルらしい。 (左)横から見る (右)上がり框、タタキに靴脱ぎ捨て系 (左)番台そと向き (右)フツーな脱衣場 ロッカーもあるが、おおかたの人は丸籠利用だ。俺もそのまま服を脱いで放り込んでおく。 浴室へ入ると、湯気の向こうに・・・むむっ! (左)奥に深浅湯船の東京型 (右)シカちゃんや〜! まったくもって謎だ。なぜシカなのか。あとでオヤジに理由を聞いたけど、忘れたわスマヌ。でもなかなか見ごたえのある、よくできたモザイク画だ。ついでに男女境壁には小さな富士山タイル絵もあり。 シンプルな浴室だが、やわらかなお湯は適温でじつによし。カランも使い勝手よし。何不自由のないお風呂だ。 上がって体を拭いていると、オヤジが釜場を切ったり来たりしているので、パンツ一丁で見せてもらった。 するとオガクズが山と積んであり、オガ焚き専用装置が機嫌よく働いているぞ。これ久しぶりに見たなぁ。 (左)細かなオガクズ (右)オガクズ用の釜 それにしてもこのオガクズが非常に細かい。 聞けば、これは製材所から出るものではなく、鍋などの取っ手を作る作業場から出る粉なのだという。隣の燕市が鍋の産地で、三条市はその取っ手の産地なのだそうだ。 (左)これの粉だった (右)地元牛乳最強! 訪れる土地土地に特産品があり、その副産物の木屑で沸かした湯に浸かる。そして鹿の絵を眺め、最後に地元牛乳でシメると。 かくして旅がよりいっそう深まりゆくのであった。 (2013.5.3) |
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