関西の激渋銭湯
チープに極楽。生きててよかった!
【岡山県】の激渋銭湯
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清心温泉 ★(岡山市)
鶴湯 (岡山市)
東湯 (岡山市)
福島温泉 (岡山市)

三門湯 (岡山市)
(廃業)
柳湯 ★(岡山市)
(廃業)
戎湯 (倉敷市)
橘湯 (倉敷市)
(廃業)
船五湯 △(倉敷市)
(廃業)
港湯 △(倉敷市)
(廃業)
八千代湯 △(倉敷市)(廃業)

武蔵湯 △(津山市)

清心温泉

岡山市北区清心町2−1 →地図
TEL:086-252-3011
【営業時間】16:00〜23:00
【定休日】週2日程度の不定期営業
     (清心温泉ブログ
でチェック)


 なんですと3年前に廃業した岡山のレトロ銭湯を、今は亡き経営者の息子さんが一念発起でそのまま復活させたですとぉ〜?
 打ち続く銭湯廃業ラッシュなこのご時世に、耳を疑うような情報ではありませぬか。とにかく青春18きっぷで岡山へ急行した。

 岡山駅の新幹線口、従来「駅裏」と呼ばれていた側だが、なにやらエラく近未来的な再開発が進んでしもうとるな。
 そこから北へ徒歩5〜6分、そこはかとなく焼き鳥の匂いが漂ってくるんだが…。
 ナヌ? 銭湯の玄関先で焼き鳥を焼いてるぞ!

 
(左)どこか古い校舎を思わせる建物の前で・・・   (右)暖簾の内側は通路状の下足スペース

 このウマゲな匂いで銭湯客を呼び込もうという作戦なのか? 画期的すぎる!
 とりあえず焼き鳥はあとでいただくことにして暖簾をくぐると、そこはウナギの寝床的な下駄箱スペースになっており、ずっと奥に脱衣場の入口らしき戸がある。
 ふむ〜この建物は玄関部分の2階が横長の住居スペースになっていて、1階の左右は別の店舗になっているようだ。右側はコインランドリーだが左側は何も使ってないのかな?

 その奥まったところにある入口から中に入ると、番台があってキャップをかぶったお兄さんがいる。この人が復活させた息子さんだな。
 脱衣場は、おぉ、昔ながらの木造板張り、脱衣箱も木製でイニシエ感たっぷり。小ぢんまりした空間だが天井が非常に高くて、狭さをあまり感じさせない。
 番台と脱衣場の間に設置された腰高のカウンターだけが新調されたものだが、これも木製で調和がとれている。

 だがそんなことより、正面壁にも背後壁にも、なにやら野球選手のサイン色紙がびっしりと張られているぞ。横を見たら地元サッカーチームのポスターやTシャツなどが飾られていて、えらく賑やかだ。

 
(左)レトロな空間をサイン色紙が埋め尽くす   (右)天井高し星野仙一

 女湯に誰もいないとのことでそっちも見せていただいた。
 男湯はカウンターのみだったが、こちらは番台スペースとの間に隔壁が作られ、女性客に配慮されている。

 
(左)女湯の番台横にはこんな休憩スペースあり   (右)女湯脱衣所を隠す隔壁

 
(左)女湯脱衣箱   (右)女湯ドライヤー類完備

 んで浴室を覗いてみたならば、タイル張りの湯船ポンと一つきりの超シンプルスタイル。だが目に飛び込んできましたがな、奥壁の絵!

 
(左)女湯浴室   (右)この絵はまさに!

 珍しくも富士山のペンキ絵だが、この植物のタッチはまさしく、今はなき倉敷市玉島の港湯や、兵庫県加古川市の松の湯などに描かれていた絵と同一人物の手による作品に違いない。
 その両銭湯にあった絵はもっと古ぼけていて、しかも廃業したからもはや見ることは叶わないが、それがこの復活した清心温泉に、こんな美しい状態で残っているとは!

 驚きとともに男湯に戻ったら、男湯には何の絵もなかった。うむー残念。
 ともあれ裸になって風呂をいただいた。
 3年のブランクがあったというのに、カラン類も問題なく、湯を沸かす釜も大丈夫だったそうだ。神のご加護というほかない。

 
(左)女湯の浴室窓からは隣の清心女子大の時計台が見える   (右)こんな飲み物あり

 しかし、このレトロな風呂をよくぞ復活させようと思ってくださったものだ。息子さんは只者ではないだろう。
 風呂から上がって聞くと、息子さんは現在サラリーマンを続けており、週休2日(仕事の都合により不定期)の休みの日を銭湯の営業日に当てているのだという。
 「すると休みはありませんね」と言うと、
 「はい。でもなんとも言えぬ充実感があります」とおっしゃる。
 「経営は厳しいでしょう」
 「はい。でも儲けようとはまったく思っていませんから」
 「それでもやろうと思われたのは?」
 「それについては、表でボランティアで焼き鳥を焼いてくれている彼が名言を吐いたんです。『このままでは、この街は駐車場とマンションだけの街になってしまう』と…」

 泣ける話だ。
 生まれ育った街が、資本の論理によって日本中どこも同じような、平板で無表情な街へと変貌しつつある。そこへ「これでいいのか?」と楔を打ち込まずにはおれない地元民の心意気。
 そのトライを、いまや全国的に風前の灯度1000%オーバーの銭湯業でブチかまそうという体当たり精神。いや、「体当たり清心」と呼びたいねこのさい。

 ようするに不可能を可能にしようというチャレンジなのである。

 こういうことにゼニカネ抜きで必死になれる人たちの存在が、街に味わいと活気をもたらし、表情を豊かにし、奥行きを出してくれるのである。清心温泉とともにこの人たちそのものが岡山の貴重な財産といえる。
 岡山市は今すぐ彼らに感謝状と金一封と市民栄誉賞を贈るべきだろう。そしてこのささやかな銭湯の今後の補修費用その他を大喜びで出さねばウソだろう。

 
2本100円の焼き鳥、けっこうイケル!

 岡山駅と競技場の間にあるという地の利を活かすため、地元Jリーグチームの試合の日は必ず営業するそうだ。
 3年のブランクにより、かつての常連客も少なくなった。そのぶん新規開拓すべく、せっせとチラシを配布するなど涙ぐましい努力を続ける彼らだが、その甲斐あって隣の女子大生たちも入りに来てくれるという。

 ちなみに脱衣場のサイン色紙やポスター類は、古びた壁のボロ隠しでもあるらしい。レトロな雰囲気を売りにする割には若干落ち着かない感じもなくはないが、ともかく考えられる限りのことを試してみようという心意気が素晴らしい。

 なるね。きっとなる。ここはいずれ映画になる。ヘタしたら主演は本木雅弘か福山雅治だ。
 当面は苦しいだろうが、それを乗り切ればグローリーだ。ベネッセマネーの直島銭湯アイラブユーなんぞ焼き鳥食って屁で飛ばせ。

 全国の銭湯ファンに申し上げたい。ここに希望がある。まずはこの清心温泉ブログで営業日をチェックしてから、ダッシュで行こう岡山へ。
 そしてここにこんな銭湯があるということを全世界の友人知人に言いふらそうではないか。 
(2012年9月) 

※自分が通う清心温泉を題材にして、岡山県の弁論大会で優勝した中学生・児島颯太くんの動画がyoutubeで見られます。必見です! 泣けます!
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鶴湯

岡山市北区奉還町4−15−26
→地図
TEL:086-253-3677
【営業時間】17:00〜20:00
【定休日】土曜日


営業開始時刻が遅くなってます。2016.11
(勝五郎さん情報感謝!)


 サトリ、だろうか。ストイックな風呂である。

 岡山駅西口を2〜3分北へ歩くと、奉還町という渋い商店街の入り口がある。そこを入ってまっすぐ歩き、アーケードがなくなってからもさらに2〜3分歩いて、幹線道路に出る手前あたりでクイッと右折。
 すると、このいくぶん無表情な四角い風呂屋が現れる。

 
(左)玄関、脱衣場、浴室のミニ3段構え   (右)シンプルなタタキ部分

 中に入るとタタキに木の番台があり、もの静かなおかみさんが座っている。
 脱衣場は小さな空間だ。しかし何だろう、一種潔癖なオーラが全体を支配している。余計なものが一切なく、いさぎよいまでのスッキリさんだ。

 
(左)男女隔壁の渋い鏡と、レトロ喫茶のような3点セット   (右)ザ・箱

 建物全体はかなりの古さと思われるが、床や天井は清潔で、隅々まで折り目正しく整頓されている。思わず脱いだ服をたたんで収納したくなる。

 浴室を開けるや、あっと声が出た。
 石畳が整然と敷き詰められている。

 
(左)出ました石畳!   (右)湯船はこれのみ

 湯船はかつて石の風呂が一つあっただけなのだろう。取ってつけたように、水色タイルの棺桶風呂が追加されている。

 
(左)天井、ボロくない   (右)シャワーなし、椅子も整頓

 きわめて昔々のスタイルだが、ここもまた余計なものは何一つなく、石と湯とだけが俺を待っている。
 いや、俺ごときが生まれるよりずっと前から、ここでこうして客を待ち続けてきたに違いない。

 体を洗い、深い石風呂と浅い棺桶風呂に交互に浸かる。しばらく休んで、また交互に浸かる。
 他にすることはない。静寂に身を任せ、熱い湯に己を委ね、世界の片隅を裸で浮遊するのみだ。

 上がっておかみさんとお話ししたが、その後これを書くまで4ヵ月経ってしまったので、内容は忘れてしまった。ただ誠実で真面目なお人柄はしっかりと胸に残った。

 
夜は「赤帽 ヒロ運送」の看板が目印

 お湯に漂いつつ、さまざまなよしなしごとを回顧するのに、これ以上の風呂はないかもしれない。味わい深し。 
(2013.8.11)
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東湯

岡山市北区下伊福上町13−26
→地図
TEL:086-253-9366
【営業時間】15:30〜21:00
【定休日】5・10・15・20・25・30日

(武田さん、住所データ誤りご教示感謝!)


 岡山から吉備線で一駅、備前三門駅の近く。
 忽然というほかない意外性をもって、独特の外観の古い銭湯が現れる。

 
(左)何の変哲もない住宅地に  (右)中華?

 決然たる主張だ。俺は東であるときっぱり述べている。まるでキリスト教会の十字架のようだ。しかも黒地に赤というドスの効きっぷりにチンタマも縮み上がっちゃう。んなことない。

 暖簾をくぐれば嗚呼! ジスイズジャパンの風情剛速球が体の中をさわやかに吹き抜ける。

 
(左)ピンクのカーテンに古い番台よし!  (右)タタミ台よし! 木の脱衣箱よし!

 番台に気さくなおかみさんがいる。この番台、背中部分より正面部が衝立状になっているのが珍しい。

 脱衣場を見渡して驚いたのは、浴室の戸が開け放たれていることだ。そのかわり薄いカーテンがかかっている。
 誰かの閉め忘れなのか? それともわざとなのか?

 ちょうど先客が上がってきたのと入れ違いに俺が浴室へ入った。いつもの習慣で戸を閉めようとすると、先客が、
 「ここは開けとくのや。そのほうが涼しいじゃろ?」と言う。出た、ヒサビサの全開銭湯!

 
(左)なんともこの味わい  (右)開け放たれた出入口

 たしかに戸を開け放しておくと風が通り抜けて心地よい。
 浴室は楕円湯船ひとつポンの超シンプルスタイル。湯船は男女壁に寄っていて、その接着部分に岩があしらわれて造花が飾られている。
 奥壁には小さなタイル絵もある。

 
(左)海中に滝のある不思議絵  (右)岩積みと造花のあしらい

 他に客はおらず、俺一人スッポンポン。
 玄関から浴室までが開け放たれた素通しパラダイス。濡れた肌を夏の風がそっと撫でてゆく。
 ふと、どこかの田舎の庭先で風呂に入っているような錯覚を覚える。

 脳の中心部で、また何かのこわばりがひとつ、かき氷のようにゆっくりと溶けてゆく。

 そんな中でいつも通りに体を洗い、ゆっくりと過ごして脱衣場へ上がる。
 パンツをはきながらよく見ると、いろいろと味わい深いものが置かれている。

 
(左)音楽関係、風呂無関係  (右)おかみさん自作

 おかみさんは「この道ひとすじ」と書いておられる。さすが、きっぱりと東。「そのまんま東」なんかより何倍も清々しい。 
(2014.7.27)

 
また来よう
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福島温泉

岡山市南区若葉町5−2
→地図
TEL:086-262-0243
【営業時間】16:00 〜 22:00
【定休日】1・11・26日・第3日曜日


 岡山駅から岡電バスの00系統または11系統に乗って、三浜町で下車して徒歩4〜5分。ややわかりにくい場所だが、なんしか岡山市南部の児島湾に近い平坦なエリア。住宅地に混じって小企業や飲食店がポツポツとある。
 どっしりとした建物だが、風呂屋の外観としてはさして特徴は感じられない。昭和中期、高度経済成長期的なそっけなさだ。

 玄関スペースを経由して脱衣場に入ると、明るく清潔でさわやかな空間が迎えてくれる。
 そして番台のご夫婦がとても感じがよく、風呂賃を払うちょっとしたやりとりだけで旅の疲れが瞬時にほどけていく。銭湯ってエエなぁ〜。

 そしてもー、浴室方面に目をやった瞬間「オオオォーーー!」っと声を出さずにはいられない。一呼吸おいて、また「オオオォーーー!」。俺はこれを3度繰り返した。
 だって目の前コレだもん。

 オオオォーーー!オオオォーーー!オオオォーーー!

 奥壁一面、瀬戸大橋のモザイクアートだ。そして完全円形浴槽。さらに湯船内の仕切りの不自然な屈曲なぜなんだ!
 そしてこの美しい風呂場全体がコレデモカーとばかりに磨きに磨かれて、窓からの光を受けてキラキラと輝いてきらめいてときめいて、胸がドッキンコドッキンコやねんオカーチャン!

 よく考えたら瀬戸大橋はこんな赤い橋ではない。
 聞けば、このタイル絵が設置されたのは1967年だという。実際の瀬戸大橋はそれより10年ほど後に着工され、さらに10年ほど後の1988年に完成した。
 つまり、これは当時話題になっていた瀬戸大橋の「完成イメージ図」を元に描かれた、夢の架け橋なのだ。

 そのいわば空想的な絵を、多額の費用をかけて壁一面に描いたなんて……これほど夢とロマンに満ち溢れた浴室タイル絵を、俺は見たことがない。
 ちくしょう、胸が熱くなるやんけ。

 ピカピカのお湯に浸かれば浸かるほど、熱い感動が瀬戸内の潮のように静かに満ちてくる。
 交通不便。でもその何倍もの満足感が返ってくる。 
(2016年9月)
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三門湯(廃業)

廃業とのお知らせをいただきました。
(レポートは営業当時のものです)


岡山市葵町2−16
TEL:086-252-5843
【営業時間】17:00〜20:00
【定休日】火曜日
【入浴料金】大人350円


 岡山駅から吉備線で1駅。備前三門という駅で降りたら正面に国道、交通量が多い。それを左へ歩くとまもなく道は右へカーブする。
 と、岡山市内へ向かう車線側に木造ばりばりの入母屋屋根の2階建て、その奥にはステンレス煙突・・・の登場だ。駅から5分もかからない。

 それにしても前の道路は交通量が多く、ずっと車が渋滞している。その車列スレスレに青い「ゆ」の暖簾が揺れている。

 
(左)ガードレールきわきわ   (右)側面も渋い

 暖簾をくぐると狭いタタキがあり、木の番台におかみさんが座っている。リュックにトレッキングシューズ姿の俺を見るや、「タオルや石鹸なかったらお貸しますよ」と声をかけてくださった。
 「ここはこんな国道べりにありますから、時々いろんな人が来られます。自転車でずっと走ってくる人や、バイク旅の人も。お疲れでしたら上のタタミの部屋で休んで行ってくださってもいいんですよ」
 なんと、いきなりこれほど温かい言葉をかけてくださる銭湯は初めてだ。ありがたいことだなあ。旅人大歓迎のおかみさんは、ご自身も旅がお好きらしい。

 ともかく風呂に入らせていただこう。
 脱衣所は板張り床が気持ちのいい、昔ながらの空間。木のロッカーとプラ籠、頭上には3枚羽のプロペラがある。
 天井も板張りだが格天井ではなく、太い梁が真ん中にズバッと走っている。倉敷の船五湯に似たガッチリした造り。

 
(左)脱衣所から外を眺めてこの風情   (右)ザ・アットホーム

 浴室は貸し切り状態だった。
 床に細かいタイルが張られた、飾り気のないシンプル空間。白タイル壁の上部に一列だけ、凸凹のある緑の飾りタイルが並んでいる。
 壁の上部は土壁色のペンキで塗られているが、だいぶ剥げてきている。天井の真ん中に四角い湯気抜きが開いている。

 浴槽は中央部に一つで、お湯はややぬるめ。歩き疲れた足腰には風呂以上のご褒美はありえない。首までじっくり浸かって、あ〜・・・もうほんまに生命のヨロコビを感じるねぇ。しみじみ。

 湯舟内側の座り段の幅が狭く、15センチもないだろう。その部分のタイルが一部剥がれているので、深く浸かった時に無造作に背中をこすったりしないほうがよさそうだ。しかしボロイながらも全体的に磨かれていて、清潔感がある。
 湯に浸かりながら奥壁を見ると、「いつもと異なるところがあれば教えてください」とマジックでじか書きしてある。素朴すぎるホスピタリティ。経営者の人柄がにじみ出る。

 カランは3つだけだが、意外にも自動調温式の新しいもの。シャワーは1ヵ所だけついている。
 上がりしなに、おじさん客が一人来た。

 上がって脱衣所へ。表と素通しの開放感がたまらない。おかみさんは天井のプロペラを回してくださった。ああ、このゆるい風。これですよ、やっぱり。

 
(左)まわるプロペラ   (右)暗くて見えにくいが、天井の梁から下げられた「ぶらさがり健康器」

 「40年座ってます。化石ですわ」
 そうおっしゃるおかみさんは、番台に毎日座りながらこつこつと原稿用紙にペンを走らせておられる。エッセーや旅行記などを書いては雑誌に投稿し、ずいぶんあちこちに掲載されているようだ。
 そういう番台での過ごし方もあるのだな。俺は文章を書く仲間にこんなところで出会えた喜びを感じつつも、なんとなく自分のことは言い出せないまま、列車の時刻にせかされて場を辞した。

 神戸に帰った今も、古びた木の番台に座りながら原稿用紙に向かうおかみさんの姿を思い出す。そのたびに、お湯のぬくもりの記憶とともに、ひそかな連帯感を覚えたりもする。
 旅は出会い。銭湯もまた出会いである。 
(2007.07.23)

 
水栽培のサトイモが飾ってあった
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柳湯(廃業)

2011年末に廃業されました。
レポートは営業当時のものです。
(桶太郎さん情報感謝!)


岡山市西大寺中1丁目14-16 →地図
TEL:086-942-2167
【営業時間】17:00〜20:00
【定休日】水・土・日


 湯舟で嘆息。何度も嘆息。

 岡山駅から赤穂線に乗って四つ目、西大寺駅で降りる。
 南へ1kmほど歩いたあたりに古い門前町が残っているっちゅーことだが、思ったほどではないな・・・と思いつつ歩いていたら、小さな水路脇の一角にだけ、ボコッとタイムワープしたように濃厚なる建物が数軒並んでいる。
 その時代錯誤横丁の要の位置に、で、でたーーっ。西大寺に唯一残った銭湯、柳湯だ。
 それにしても、もうここしかないというドン決まりの立地。しっぶいわ・・・。

 おや? 玄関の横に階段があって、水路へ下りられるようになっているぞ。まさか誰かが小舟でこの風呂に通っているとでもいうのか。

 
激渋酒屋「めぐみや」と水路を挟んで隣合う

 あまりの風情に、すぐに暖簾をくぐるのがなんだか惜しくて、周辺をしばらく歩き回った。
 水路脇の小道をたどると、この銭湯の全体像がよくわかる。

 
(左)左の2階建てが脱衣所のある母屋、中央の湯気抜きアリが浴室、右の煙突アリが釜場
(右)正面の意匠、古いけどきれい


 門をくぐると小さな玄関スペース。期待に胸ふくらませて暖簾の奥の戸を開ける。
 入ったところに小さなタタキ。そして目の前には、こじんまりした歴史遺産的脱衣所風景が惜しげもなく開陳されている。

 
古い番台、古い下駄箱

 
(左)平格天井、男女隔壁の鏡は前傾姿勢   (右)使い込まれた味わいにございます

 木の香に包まれながら裸になって、いよいよ浴室へ。浴室の戸も木のままでじつにエエ感じ。
 ん? ち、違うぞ。この浴室の戸、新しいやんか! 古い木の戸が朽ちたらアルミ戸に入れ替えられるのが普通だが、ここはなんと、昔ながらの木の戸を丁寧に作り直してある。すばらすい〜。

 興奮を抑えつつ、その戸をなめらかに開ける。
 と・・・。
 ぬ、ぬ、ぬぬぬおぉぉぉーーーーー!!!

 
(左)感動の浴室入口   (右)ビンゴビンゴビンゴビンゴビンゴォォォーーー!!!

 小さな浴室が、徹底的に御影石だらけ。石畳はスキマタイルもなくセメント固めで、湯舟ももちろん石、ぐるりの座り段も石。すごい重量感だ。

 湯温はやや熱め。ドプンと入ると、おぉ、お湯があふれてザァァーっと流れてゆく。こりゃ極楽。
 驚いたことに、湯舟の内側は、へりの石が底につくまでずーっと続いている。へりだけじゃなくて、底につくまでずーっと一枚の石。たたみ一畳ぶんくらいはあるだろうか。それが四辺をガチッと取り囲んでいる。
 グ、グレート・・・。底面にだけ青緑のタイルが敷かれている。

 壁の上部から天井は青ペンキ。床の排水溝には真鍮のフタ。
 奥に小さな副浴槽がある。こっちはややぬるめ。

 カランは下の台部分との位置関係がちょっとミョーで、洗面器がうまく置けなかったりするのがご愛嬌。鏡は新しい。
 他客は大阪式に湯舟周囲の段に座って湯をかい出して使っている人もいるが、かい出してもかい出しても、しばらくすると湯があふれてくる。掛け流し式のようだ。
 他客がいなくなると、湯はひたすらあふれて石畳をサラサラと洗ってゆく。そこへ満を持して浸かる。とたんにお湯が豪快にドッぶぁぁ〜とあふれて大洪水。

 俺一人のためになぁ。この豊かなる情景。
 石材をなでなでしながら、ここまでの旅路をしみじみと想う。

 上がりは飲み物販売はないが、そんなことはこのさい許そう。番台の少し耳の遠いばあさんに聞くと、「昭和2年か3年の建物」だそうだ。昔はヒノキ風呂だったという。
 5時台は6人くらいお客がいて狭い浴室はいっぱいだったが、6時をまわると貸切状態になった。
 「あとはしまいまでこんなもんです。ポツーリ、ポツーリですわ」

 ここを知らぬまま死んじゃ、銭湯ファンとして往生できまいて。
(2005.4.2)→岡山旅行記

 人生の澱を流すべし
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戎湯

倉敷市鶴形2-1-5 →地図
TEL:086-422-6811
【営業時間】16:00〜21:30
【定休日】土曜日


休業中です。
2017年1月30日現在


 倉敷駅から南東へ歩いて7〜8分、美観地区からだと5分くらい。ガタピシ音が聞こえてきそうな、渋ーい建物の銭湯だ。

 
2階の窓が広々してます

 入るとタタキに古い木の番台、大きな声でしゃべるほがらかなオネーサマが座っている。
 狭い脱衣所は板の間で、天井は低く、壁には映画や大衆演劇のポスターが貼られた懐古空間だ。

 
(左)木のベンチがええ味を出しとります   (右)脱衣箱これもん

 さて、浴室へ・・・おっと出ました、石畳に石湯舟! こじんまりした空間だが、見渡す限り御影石まみれの激渋重量級だ。感激ですなあ。
 石畳のスキマはコンクリ固め。ごつごつした湯舟の周りには石の座り段があり、湯舟のフチと段とのスキマがセメントで小さなスロープ状に埋められている。

 この上で紹介した西大寺の柳湯に非常によく似た造りだ。湯舟はこちらが一回り大きいようだが、おそらく同じ人が造ったのだろう。
 ということは、この湯舟のフチ石は底まで続いてるのか?
 ともかく入ってみよう。・・・おぉ! 入ってみると湯舟の内側に腰掛け段があるが、その段も当然石でできており、やっぱりそれが底までズドーンと続いている! この石、すげー厚み。すげー迫力だよオイ。
 ただし石は3面だけで、男女壁に接した面はタイル張りになっている。底面もタイル張り。
 湯はややぬるめ、42度ないくらいかな。柳湯のようにあふれていないのはちょい残念。似ているだけに比べてしまう。

 カラン下には、これだけ新しいようなツルツルの黒御影石で段がこしらえてあるが・・・オイ、この石もでかいんだよ! 1辺20cm以上ある極太の柱みたいな石が横になって、壁沿いに端から端までズドーンと置かれている。
 まったくもう、こんなのも初めて見たがな。なんちゅー骨太なセンス。まいった。

 あがりは飲み物販売あり。木のベンチに座って果汁ものを飲む。
 オネーサマは相変わらず女湯の客とほがらかにしゃべっておられるが、会話中に「京都じゃイオンよりデパ地下」とかいう言葉が出ている。
 女湯の客が帰ったあとに、「おねーさん京都? 俺も学生んときは太秦に住んどったんやけど」と声をかけると、やはり京都出身とのこと。「だからこの風呂の歴史とかは知りませんねん。倉敷のこともサッパリ」だそうだ。

 5時半〜6時半ごろ、数人の常連客がとぎれずに来ていた。とことん古いスタイルだが、おかみさんが元気なだけに今後もがんばってくれそう。
(2006.1.15)

 
むこうのライオンズマンションに負けるな
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橘湯(廃業)

2014年9/6に廃業されました。
レポートは営業当時のものです。
(スパドラさん情報感謝!)

倉敷市川西町8−11 →地図
TEL:086-422-2596
【営業時間】16:30〜20:00
【定休日】日曜と水曜のみ営業!


 倉敷駅から徒歩5分くらい。駅前から国道を西へ行き、川西町で左に曲がってちょっと歩くと・・・おぉー、これはこれはナント。歴史を感じる素敵な洋風銭湯ではないか。
 美観地区からも徒歩数分。旅館も兼業しているようだ。

 午前中に通りかかったとき、たまたまおかみさんらしき人が前におられたので、始まる時刻を聞いたついでに「この建物、年季入ってますね」と声をかけた。おかみさんはステキな笑顔で「80年になるんです」とほがらかな答え。
 80年前っちゅーと・・・昭和元年? もしかして大正か?
 こここ、これは入らねばなるまいて。

 
(左)玄関は改装済、上に古い「ラジュウム温泉」の文字  (右)外壁の屋号とマークは木彫り

 暖簾をくぐると狭い下足室で、ほとんど黒色化した木の下駄箱がお出迎え。これはそうとうな逸品です、ていうか古すぎ。
 ガラス戸を開けて2枚目の暖簾をくぐると、これまた古い木の番台に50歳くらいの主が座る。

 
(左)ザ・歴史色   (右)番台が床から30cmくらい持ち上がっていて、下に物が入る

 こじんまりした脱衣所は、白いしっくい壁に低い格天井、3枚羽のプロペラがぶら下がる古典的風景。天井はやや波打って、かなりキてます。
 そしてロッカーも当然のごとくコレモンです。

 
言葉なしのアメ色

 ロッカーのふた裏側や柱などに、むかしむかしの軟膏などの広告が貼ってあって楽しい。
 やや雑然とした感じはあるが、入口近くには熱帯魚の水槽が置かれ、なかなかに心和む空間だ。

 だが浴室は、全体に新しいタイルで改装されている。
 湯舟は5〜6人サイズがひとつだけ。壁際から気泡が出ており、石の入った檻箱がいくつか沈んでいる。これがラジウム原石かな。
 カランも新しく使いやすいが、シャワーはない。
 おっ、男女仕切り壁にタイル絵があるぞ。タイル6枚分に、白樺の高原と小川の風景だ。なかなかよろし。

 上がりは飲み物なし。
 7時すぎ、他客は親子連れなど数人だった。終了時刻は聞き忘れ。

 周辺住民の憩いの場として80年間も使い込まれてきた銭湯だが、なんといってもレトロを売りにした観光都市・倉敷だ。この外観と古さをうまく活かしてセンスよく手を入れれば、観光客を取り込めるような気がしないでもないが・・・。  
(2005.4.3) →倉敷旅行記
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船五湯(廃業)

2015年6月で廃業されました。
レポートは営業当時のものです。
(情報感謝!)


倉敷市船倉町1249 →地図
TEL:086-422-5676
【営業時間】17:30〜21:00
【定休日】木曜日と日曜日

(スパドラさん、営業時間と定休日の情報感謝!)


 倉敷美観地区の南端、倉敷川にかかる橋は交通量が多い。その橋の東一筋目を南へ入ると、すぐ右手に細ーい路地が見える。
 石の敷かれたその路地へもぐり込むと、両側に怪しい廃材が積まれている。これはアレやで。と、やはり、左手にいきなり釜場が口を開けている。
 表へ回ると白い壁、倉敷らしいレトロな面持ちの古銭湯だ。

 
(左)濃厚銭湯へのワープスペース   (右)色ガラス最高!

 暖簾は出ていないが営業中みたい。戸を開けると狭いタタキ、数十センチ宙に浮いた番台におかみさんが座っている。
 正面には板張りの脱衣所・・・ってこれ、こここ、これ、これメタメタに古いぞ!

 
(左)番台周辺、タタキと段差の大きい脱衣所床   (右)船大工が作った天井は低いけどがっしり

 
(左)脱衣所から浴室方面   (右)脱衣箱はもちろんこれ

 ほぁ〜っとあちこちに感服しながら服を脱ぐが、もう浴室が気になって仕方ない。だってガラス戸の向こうに見えてるんだよぅ、これでもかっちゅーよーな石だらけの空間が・・・。
 とにかく心を落ち着けてと。心の中で雄叫びをあげる準備はいいか? はい隊長、いつでも叫べるであります。では行くぞ。ハイッ! ガラス戸を開けよ。ハイッ!

でででで
ででででででででたああーーーー!!!

 
(左)石、石、石   (右)STONE! STONE! STONE!

 
(左)ええで、ええで、ええで   (右)LOVE, LOVE, LOVE

 隙間なく敷き詰められた石畳。丸くカーブした太い御影石の湯舟。湯舟内側に渡された木の板。
 そして湯舟を覗き込めば、フチ石が内側座り段から底までずーっと続いているばかりか、ナント底面まで完璧に石やがな!
 とうとう出てしまった、完全無欠のロックン浴室。あらゆるすべてが石器時代。

 先客が一人おり、隅の蛇口から水を出して湯をうめている。かかり湯すると43度くらい。俺にとっちゃちょうどええ。どれ、さっそく浸かろう。
 と・・・
ム! 深い! ディープという意味ではなく、いや、ディープなんだが、物理的にも湯舟が深い。腹まであるぞ。この深さは神戸市灘区の宮本温泉に匹敵する、って誰も知らんか。いずれにせよこのサイズでこの深さは素晴らしい。

 しかしまーこれだけ石に囲まれまくっていると、風呂というより、山の中の天然の岩場から湧いてくる温泉に浸かっているみたいな不思議な気分になる。

 
天井は改装されているが、かつては5角錘か6角錘だったとのこと

 ただし、カランの水圧は弱く、シャワーはない。また、古さのあまり敷石が一部沈下したのか、使った湯がスムーズに排水されない部分もある。かなり限界に近づいている感じだ。
 だが、その状態でも現役で残っている、という点にこそ価値がある。

 湯は木の板の下方面からどんどん沸いてくる。先客が出たあとは貸切の静寂空間になったが、あまりの熱さに俺もうめた。うめない限り無限に沸いてくる、昔ながらの風呂だ。

 あがりはちゃんと飲み物販売がある。
 「昭和初期くらいですか?」
 「いやもっと、100年くらいは経っています」
 おかみさんが言うには、元は魚の卸業で、下津井から大八車で運んできた従業員らのための風呂だったそうな。

 とにかく激レア貴重。いにしえ銭湯ファンはここが押さえどころだ。
(2006.4.8)

 
早めに行きませう
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港湯(廃業)

2011年、廃業されました。
(レポートは営業当時のものです)


倉敷市玉島中央町1丁目8−28
TEL:086-526-6680
【営業時間】15:30〜21:00
【定休日】月曜日


 あるのだな・・・こういう銭湯が今も。懐かしいとか感動とか、そんな言葉じゃ表現できない。
 しいて言えば「奇跡」だろうか。「まぼろし」かもしれない。

 新倉敷駅から南へ約2.5km、玉島中央バス停から徒歩2分。
 かつて北前船の港町として栄えた玉島は、江戸時代の仲買問屋が今もそのまんま居並ぶ激レトロなまち。でも観光都市・倉敷の一部とは思えないくらい、歴史から完全に忘れ去られてひっそりと静まり返っている。
 その旧市街の中心・羽黒神社の鳥居の横に・・・あ、あ、あった・・・。
 この立地。この造形。この色。このたたずまい。変態的な銭湯マニアにしかわからないであろう衝撃が、延髄から尾てい骨までをマッハ3で突き抜ける。

 
(左)側面の造形美。横は神社参道の階段   (右)この面構え、この存在感

 
(左)見下ろす屋号のリッチテイスト  (右)ヤマヒサ? なんかしらんが名門に違いない

 まだ暖簾が出ていなかったが、中を覗くとおかみさんが浴室の掃除をされていたので声をかけ、内部を見せてもらう。しきりに感心して写真を撮っていたら彼女の昔話がエンドレスモードに入ってしまい、小1時間・・・。

 おかみさんによると昭和2年の建物で、旦那が亡くなってからは一人で営業を続けている。それまで洋裁をやっていた彼女は銭湯業にはまったくノータッチだったそうだ。そういやこのおかみさん、かなり高齢のようだが、おしゃれな服と帽子をかぶっていて銭湯業っぽくない。
 「布のことはわかりますけど、ボイラーやら循環装置やら機械のことはわかりませんので苦労します」
 それでもこの銭湯にかかわった5つの位牌を守るために、一人ぼっちで湯を沸かし続けている。
 『鉄道員』を超える物語がここに人知れず紡がれている。

 しかしまあ、それにしても。狂ったように撮りまくった写真群をご鑑賞あれ。

 
(左)ぶらり信兵衛の長屋を思わせる入口上の窓  (右)サラセン帝国を思わせる天井の文様

 
(左)番台芸術  (右)この穴から落とされた硬貨が下に溜まる

 
(左)そして籠   (右)そしてコレ

 
ロッカーについていた謎の鍵、使い方はおかみさんも「知らない」そうだ

 
(左)女湯にあったオムツ台  (右)階上への階段、レトロっつーかトトロっつーか

 女湯の脱衣所にあるベビーベッドには、おかみさんお手製の座布団が設置されている。さすがは洋裁家、プロの仕上がり。でも、これを使う赤ちゃんのお客さんは今は誰も来ないそうだ。
 俺はこのとき、あやうく泣いてしまうところだった。

 狭い浴室も、銭湯ファンをうならせる空間だ。
 湯舟は半楕円のタイル浴槽が1つきりだが、壁画に広告、タイル絵と、見所満載の濃縮空間となっている。

 
(左)湯舟のへりは石が乗っている  (左)シャワーなし

 
(左)奥壁の壁画  (右)出入り口側の壁画

 壁画はかつて京都のペンキ絵師に3年ごとに書き換えてもらっていたが、その絵師が亡くなったため、この絵はパネルに書かれたものを貼り付けてある。
 カラン上部の壁には富士山のタイル絵がある。

 
(左)男湯のタイル絵   (右)女湯のタイル絵

 いったん場を辞して、開店後の4時ごろに再び行くと、男湯にはお客が5人ほどいた。枯れ木のような老人がゆっくりと体を洗っている。やわらかなお湯に浸かり、「あぁー気持ちええ」とつぶやいているオヤジもいる。

 壁タイルのくすみなど、掃除が行き届いているとは言えないかもしれない。銭湯に浴槽設備や快適さを求める人にはただのボロ銭だろう。
 だが、この銭湯はそういう基準とは別次元の存在だ。
 神戸に帰って半月たった今、俺にとってはここの湯に浸かったことが何だか夢のように思い起こされる。 
(2005.4.3) →倉敷旅行記
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八千代湯《廃業》

廃業されたようです。
(雨霧さん情報感謝!)


倉敷市下津井吹上2-2-14 →地図
TEL:086-479-9663
【営業時間】17:30〜19:00
【定休日】(聞き忘れ)


 瀬戸大橋の付け根、下津井は、古くから北前船などの貿易で栄えた港町。とくに吹上地区には古いナマコ壁のまちなみが残っている。
 そんな中に1軒の銭湯あり。といっても煙突も目立たず、昼間に訪れたのではそれと気づくのは難しいだろう。

 
暖簾がおりて銭湯に変身

 俺が行ったときは夜の7時をまわっていた。あとで聞いたら、ふだんならもう終わっている時刻。でも開店時刻が夕方5時半ということは・・・なんと営業時間は驚愕の1時間半だけだ。
 たまたまこの日は最後の客が遅かった(といってもすでに上がって体を拭いていた)のでまだ開いており、入らせてもらうことができた。

 暖簾をくぐると左右間口分の狭い下足スペースがある。
 木製のガラス戸を隔てて脱衣所はすっきりとシンプルな空間で、作り付けの木のロッカーが眼を引く。年季の入った板張り床や、背の支えに透かし彫りワンポイントの入った木の長椅子が渋い。
 浴室入口の左右に配された、白黒の細かなタイルがまた激渋だ。

 浴室は・・・ワーオこいつは素晴らしい、広い空間の真ん中に楕円形の湯舟がポツンと一つだけだ。誰もいないせいもあって、とてもシュールでクールな眺め。
 この湯舟がまたもう、細かい豆タイルで固められた歴史遺産的な逸品。古びて色がかすんでいるものの、よく見たらカラフルな装飾タイルで作られている。
 すでに火が止められていたので湯はややぬるめで少なめだったが、一人ではもったいないくらいの広さで十分満足だ。ていうか、なんかしらん泣けてきまんがな。

 浴室の床もカラフルなタイル。両側壁のカランまわりは緑の豆タイル。
 そして奥壁には小さなタイル絵だ。灯台のある海岸風景、瀬戸内海かな。
 男女隔壁は、上部に摺りガラスの入った木の板なんだよこれが。天井はトタンだが、湯気抜きが見当たらない。

 長年にわたって改装された様子がほとんどなく、渋銭ファンにはじつに味わい深い空間だ。それでいて清潔に管理されている。

 上がって愛想のいいおかみさんに聞くと、明治からやってるという。
 女湯も見せていただいた。脱衣所には赤ちゃんの木製オムツ台があるが、赤ちゃん同士を仕切る壁が高く、下に脱衣箱がついていない。まるで昔の病院で使ったもののようだ。
 浴室のタイル絵は洋風の湖水風景だった。

 
女湯の赤ちゃん台と長椅子

 時間外であったにもかかわらず、非常にあたたかく接してくださったおかみさんの人柄の良さは感動的だ。
 下津井は鉄道もなくバス便も少ない。しかも営業時間は1時間半しかないというハードルの高さではあるが、ぜひまた訪れたい。  
(2008.5.7)
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武蔵湯


津山市川崎579 →地図
TEL:0868-26-1567
【営業時間】16:00〜?
【定休日】日・祝

(雨霧さん、営業時間の情報感謝!)


 津山市で最後に残った1軒。津山のみならず美作地域で唯一の銭湯だ。まあ美作には温泉がなんぼでも湧いているわけだが。
 美作は宮本武蔵の出身地。ここの屋号と関係あるのかどうかは聞いていない。

 津山駅からバスもあるけど、最寄りは姫新線の東津山駅。「城東町並み保存地区」に向けて7〜8分も歩けば、古〜い建物が連なる街道筋に見えてくる。
 突き出し看板がひとつあるけど、営業時間前に通りかかってもここが銭湯だと気づく人はあまりいないだろう。あまりに街道風景に溶け込んでいるし、銭湯の玄関らしくない。
 よしんば気づいたとしても、現役とは思わないに違いない。だって俺でさえ近くの自転車屋さんに「あの風呂、やってるんですか?」と尋ねたからね。

 営業時間になると、狭い通路に小さな暖簾がかかる。入り口そこか!

 
(左)これを見逃すな!  (右)迷わず突き進め!

 肝試し的な狭いトンネル通路を抜けると小さな中庭に出て、正面の別棟に暖簾がかかっている。この時点で現世とは完全に切り離された。
 中に入ると番台があり、思ったより若いおかみさんが女湯側に立っておられる。

 
(左)本当の入口  (右)下駄箱兼用番台

 脱衣場は意外に広い。低い天井、ガラスぶたの脱衣箱。何がどうというより、古い街道の奥まったところに保存されてきた、いにしえ〜な空気が充満している。

 
(左)脱衣場  (右)そうしませう

 浴室もけっこう広さがある。古びているが、レトロな銭湯が好きな人には堪えられないディープな味わいだ。
 湯船は一つ。美作で一つだけの、貴重な銭湯湯船だ。3分の1ほどが浅くなっている。
 お湯がいくぶん緑がかって見えるのは井戸水の色なのか、タイルと光の加減なのか。やや熱めに沸かされていて、旅の疲れが瞬時に溶けてゆく。

 
浴室の床タイル

 カランは2つだけだが、新式の自動調温カランが取り付けられている。
 壁上部や天井はかなりくすんでいて、慣れない人にはちょっとおどろおどろしく感じられるかもしれない。

 ご近所の常連客が2人来て、会話を弾ませながら湯を楽しんでいる。

 湯あがり、おかみさんにいろいろ話をうかがった。もう故障しても直す気はないから壊れたら終わりですよ、とおっしゃる。
 仕方ないことかもしれない。津山には「銭湯のないまち」になってほしくないが…。

 じつを言うと、おかみさんは「お風呂の写真は撮っていいけど、ネットなどには出さないでね」とおっしゃった。
 古びてくすんだ浴室壁あたりの写真うつりが問題だな、と感じた。本当は貴重な湯船をみなさんに見てもらって、ぜひ武蔵湯を訪れてほしいけど、約束は守らねばならない。
 といいつつ美しい床タイルだけ掲載〜。これくらい許されますよね、おかみさん。

 とにかく貴重。レトロな銭湯が好きな人なら訪れる価値は高い。
 営業時間は確認し忘れたけど、17時ごろから19時ごろなら開いているはずだ。

 
(2014年12月)
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