関西の激渋銭湯
チープに極楽。生きててよかった!
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【埼玉県】の激渋銭湯
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日進湯 (さいたま市大宮区)
旭湯 (川越市)
中将湯 △(行田市)
(廃業)

日進湯

さいたま市大宮区 桜木町2-478
→地図
電話 048-664-6430
【営業時間】15:30〜22:30
【定休日】月曜日と金曜日


 大宮駅の新幹線口(西口)は再開発されまくって味もしゃしゃりもないビルだらけの街だが、そっからナナメ右前方の道を5〜6分歩いたあたり。桜木町の交差点で見回したらすぐに発見した。
 ウーム、政令市の中心部でかろうじて残った昭和オアシスな現状がモロ出しだ。これを見て泣かん銭湯ファンはおるまいて。

 交通量の多い道路の、余裕のない歩道に面しているせいで、建物の向きと凸型玄関の向きが少しナナメにずれている。そのため玄関の左右から入るかたち。

 
(左)横から入る  (右)太ミンの屋号がりりしい

 前にいっぱい自転車が止まっていて、人が出たり入ったり。週休2日だからちょっとヤバイのかと心配してたけど、けっこう賑わっているんかな。

 
木の玄関が泣かせる!

 中に入ると伝統的な木の番台に柔和なおかみさんが座る。
 小ぶりな脱衣場だが、高〜い折り上げ格天井のトラディショナル様式にホッとするねぇ。木の脱衣箱や籠なんかも残っている。
 それにしてもなにやら人が多いぞ。関東の脱衣場はたいてい真ん中に島カランがあって狭いのだが、その狭間に6〜7人いよるがな。

 とにかく裸になって浴室へ。おっと、ここもこぢんまり空間なのに賑わっている。のんびりダラ〜っとできる雰囲気ではないが、客が多いのはええこっちゃ。

 まず目に飛び込んでくるのは奥壁の富士山ペンキ絵。男女の中央に富士がそびえ、男湯はその麓で滝が湖に落ちている図。なんと故早川師のサインがあるぞ。
 その下には鯉の九谷焼タイル絵。さらに男女壁には、じゃっかん剥げているものの味わい深い中国庭園風のタイル絵が3つくらいある。
 これだけ見れたらオトク感いっぱいやわ〜。

 湯船は奥に深浅2槽、湯温はちょうどエエ具合で、気泡やジェットもゴキゲンだ。カランなどの設備はきれいに改装されて快適そのもの。
 人口密集地で銭湯が残り少ないこともあるかもしれないが、古くて小さな銭湯が賑わっている光景は貴重で、嬉しくなる。 
(2013.3.29)
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旭湯


川越市元町1-8-6
→地図
電話 049-223-1809
【営業時間】15:30〜22:30
【定休日】月曜日


 JR川越駅で乗り換えの時間待ち中にケータイで検索したら、川越最後の1軒があるっちゅーことなので、バスに乗って行ってみた。歩くにはチト遠い。
 バス停は市役所前が近そうだが、「札の辻」のほうが本数が多い。そこからでも徒歩2〜3分。交通量の多い道路に面して一軒家の銭湯が見えてくる。

 
(左)道路標識が目印  (右)格天井が見えてるぞ

 
ええ風情やないの

 中へ入ると、雲型の目隠しのついた高い番台におやじが座っている。インテルのユニフォームを着ているのはサッカーの盛んな埼玉ゆえか。
 脱衣場はこぢんまりしているが、折り上げ格天井が高く、男女仕切りの上に磨き丸太が乗っている東京型正統スタイル。

 浴室もコンパクトだが、ぷんと漢方薬の香りが漂っている。
 目に飛び込んでくるのは、奥壁全面に描かれた熱帯魚のタイル絵だ。 端のほうの屈曲部分にも描かれていて、なかなかのもんやがな。

 湯船は奥に深浅2槽、両方とも宝寿湯かなにかのうす茶色の湯だ。深いほうは座浴ジェットに冷枕があって、浅は気泡ぶくぶく。深浅の仕切りを湯が少しずつ越えてゆくが、どっちかというと浅が気持ち温度低め。
 ほかにナイスなスチームと立シャワーあり。お客はけっこういて現役度は高い。

 よく歩いた午後の癒しの時間のんびりね〜。
 川越は「小江戸」として風情ある観光地になっているようだ。ぜひこの最後の銭湯を観光コースに組み込んで、守ってほしいな〜! 
(2013.3.28)
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中将湯 (廃業)

2017年8月31日で廃業された模様です。
(ツイッター情報)


行田市行田22-17
→地図
電話 048-556-1659
【営業時間】16:00〜20:00
【定休日】?(確認し忘れ)


 行田、といっても関西人には読めない。「ぎょうだ」やからね。
 中将湯は行田市最後の1軒としてがんばっておられる貴重なありがたや銭湯だ。

 秩父鉄道行田市駅から徒歩6〜7分、狭い角地に高々と煙突が聳え立っている。それを目指してゆくと伝統建築銭湯のお出ましだ。

 
(左)釜場のいかつさがクール!  (右)中将浴場とは…暖簾がかわいい

 渋い。いぶし銀だ。はるばる来た甲斐があったぜセニョール。

 
(左)玄関に神棚  (右)郷愁のガラス模様

 
下駄箱は札なしのほうが多い

 もうこのあたりから、チャチな改装なんぞするわけない系のオーラがびんびんと漂っている。
 中も渋い。当然だろう。渋い番台に渋いおかみさん鎮座。脱衣場は折り上げ格天井に天井扇風機。脇には小さな前栽。弱めの照明に今はなき加古川の松乃湯を思い出す。
 木製脱衣箱もあるが常連はみな丸籠に脱いだ服を放り込んでそこらに放置している。俺もそれにならおう。

 湯気にけぶる浴室も渋い空間だ。
 まず目に飛び込んでくるのは奥壁に描かれたペンキ絵だが・・・こここれはなぜか天草五橋ではないか! しかも東京のお二人のペンキ絵師の手によるものではないぞ。ハゲてもないので、そんなに古いものでもないだろう。
 誰が描いたのかそしてなぜ天草五橋なのか。

 さらに絵の下、湯船のすぐ上の部分は壁がガボッと掘り込まれ、溶岩などがあしらわれてジオラマの温泉場風景が演出されている。

 湯船は奥にレトロな深浅2槽、気泡コポコポの関東スタンダード系だが・・・入ろうとして即やめた。シヌ。人間がシヌ温度。特に深いほうは手を浸けることすらままならない。
 これは沸かし湯の風呂としては日本一の熱湯ではないか。風呂なのか?

 浅いほうは、ぎりぎり人間が耐えられるかどうか・・・俺は46度までなら入れるが、ここはそれをじゃっかん上回っていると思われる。足だけ5秒でギブアップだ。
 だがここに一人だけ浸かっている人がいる! いやーまいった・・・。

 なにより驚いたのは、この入れない銭湯に常連客がけっこういること、そして誰もこの熱湯を水でうめようとしないことだ。
 浅いほうに浸かっていた1名を除いて、他の人は当然のごとく誰も湯に浸かろうとはしない。もちろん深いほうに入る人は皆無。

 不思議な光景だ。
 見た目はまぎれもなく銭湯の湯船なのだが、入ることはできない。燃料がもったいない、などと考えるのは俺がセコイ関西人のせいだろう。
 常連客らはそれを不思議とも思わず、番台に文句を言うでもなく、楽しく談笑しながらカランで体だけ洗っている。
 しかも次々に客が来て、けっこうはやっているんだよこれが。

 わかったぞ、浴室全体がスチームサウナ設定! うん、きっとそうに違いない。江戸時代以前はみな蒸風呂だったらしいけど、それがここに残っているのだな。
 俺はこの日かなり長距離を歩いたので、ゆっくりと風呂に浸かりたいと思っていたのだが、甘っちょろい俺が悪いのだ。

 行田にある「さきたま古墳群」は世界遺産登録を目指しているらしい。
 だが俺としては古墳群よりむしろこっちを世界遺産に推したい。中将湯の「入れない深風呂」はすでに入山禁止のコアゾーンだ。 
(2013.3.29)
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