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【静岡県】の激渋銭湯 | ||||||||||||
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天神湯
静岡駅方面から城の堀に沿って歩き、浅間神社の参道に入る。突き当りに神社があるが、その東側エリアにこの銭湯がある。 レトロモダンな装飾の外観。上部中央のレンガ部分に屋号プレートがはめ込まれ、その上が小さく切妻状になっている。看板建築のレトロ銭湯はいろいろあるが、あまり見たことがないパターンだ。 (左)カッコええぞ (右)玄関に風情がおます 暖簾をくぐったところ 暖簾をくぐってから男女に分かれる2段階玄関だが、靴ぬぎ場は男女に分かれて中に入ってから。 入るとタタキに番台があり、おやじさんが座っている。右手に木の下駄箱がある。 こぢんまりとした脱衣場には余計なものはなく、右に木製の脱衣箱、左には洗濯機が2台置かれている。 淡々と服を脱ぎ、風呂場へと向かう。 浴室もシンプルだ。左右の壁にカランが並び、奥に深浅2槽。それだけ。壁画などのビジュアルもとくにない。 淡々とかかり湯をする。湯は熱めだ。 深い風呂に身を沈める。おっと、相当深い。熱めの湯とこの深さ、なんかめっちゃ心地よい。 そしてすごくぬくもる。 淡々と体を洗い、淡々と湯に浸かる。いや〜、ここはこれで完成形やな…。 特別な設備は何もないが、十分な満足感を持って上がり、淡々と服を着る。 番台のおやじさんも淡々としておられるが、昔気質の風呂屋哲学が1本ポンと通っているのを感じさせられる。 こういう渋い風呂屋の味わい、こんなサイトを見てる人ならわかるよね〜。 (2015年4月) |
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巴湯
浜松駅から西へ6〜7分歩いた住宅地の中に、ふと現れるスッキリとした白い看板建築。 こぢんまりとした感じがどこかかわいい 暖簾に隠れた引き戸を開けると、すぐに壁。狭ーい廊下状のスペースになっていて、ここで左右に男女が分かれる。 男湯側の暖簾をくぐると、タタキの靴脱ぎ場と一体化した脱衣場が広がっている。さっきの壁の裏側に当たる位置に古い木製番台があって、おかみさんが座っている。 脱衣場は小ぶりながら、清潔感がある。なにより目に留まるのは、全面ガラス戸で脱衣場と隔てられた浴室の風景だ。 風呂場の真ん中に、角がカーブした長方形の湯船ひとつポン。まったく飾り気がない。でもタイルが真っ白なうえ、窓が広くとられていて、すがすがしいほどの明るさだ。 あふれる光の中、4〜5人の常連たちが気持ち良さげに入っておられる。その光景を脱衣場から眺めるだけで、なにか心が弾んでくる。 俺も早く入ろう。 浴室もコンパクト、そして清潔。湯船を挟んで左右の洗い場には、カランはあるけどシャワーはない。でもここはこれでいい。 湯船の湯は適温。スッキリとした心地よい湯だ。ゆっくりと体を伸ばし、ジェットに背中を当てて、汽車旅の凝りをほぐす。しばしのちカランの水をかぶる。その繰り返し。 徹底的にダラダラとしていきたい気分になったが、列車の時間があって泣く泣く切り上げた。 湯船が一つあるだけなのに、これでいいと満足させてくれる風呂。これこそ原点だ。 (2016年7月) |
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みどり湯 ★
浜名湖が太平洋とつながるあたり、むかし東海道の関所があった新居宿。 駅から西へ10分弱歩き、激渋の運河を渡ると昔ながらの宿場町風情となる。そこにおました! (左)カックイー! (右)右書き屋号、その下に色ガラス ズボーンとひとつながり式の瓦屋根。まちなみと完全に一体化している。 下校途中の小学生たちがその前を楽しげに歩いて通り過ぎてゆく風景に思わず泣きそうになるわい。 営業開始時間になると数人の常連客たちがいっせいに入る。めずらしく営業開始を待った俺も続いて中へ。 すると番台に、とろけそうに人の好さげなおかみさんがいる。浜名湖の母と勝手に名付けよう。 その母に、常連客が何かを手渡している。おや?と思ったら・・・ (左)浜名湖の母 (右)木の入浴券! なんと、木の入浴券だ! こんなもん初めて見たぞ。しかもご主人の手作りだという。これもアリなのか!? この厚み、このジャマくささ・・・しかしこれはイイ、絶対イイ! これが家にあるだけで、これを持って風呂屋へ行きたくなることは間違いない。そしてなくなったらまた10枚ほしくなる。だって紙きれとちゃうねんで。 むーん、風呂屋へ行くっていうのはこういうことやんなぁ・・・。 脱衣場は言わずもがなの郷愁空間だ。デーンと置かれた木の脱衣箱は鍵なんかかかるわけがない。 しかしここ、タダもんやないな。One & only なもんのオンパレードや。 (左)浜名湖名物の手筒花火が灰皿に! (右)超郷愁型冷蔵庫&ベンチ (左)イセエビはく製&チョウチョウウオはく製 (右)ドチザメはく製&世界の鯨パネル なんでもここのご主人はかつて漁師だったが、陸に上がって海の生物のはく製師になられているらしい。脱衣場はそのギャラリーとなっており、スッポンポンで貴重な魚介類の姿を見ることができる。巨大な魚拓も圧巻。 銭湯に来て、風呂に入る前にこれほど脱衣場で時間をくったことはかつてないかもしれん。 浴室へ進む。中央に深浅の主湯ドーン、のクラシックな地方銭湯だ。 左右にカランがあるが、常連客らは湯船まわりに陣取って賑やかに語り合いながら、くみ出し洗いを楽しんでいる。 特筆すべきはその声のデカさだ。彼らの多くは60歳前後で地元の漁師のようだが、とにかく入ってから出るまで、これほど賑やかなというかウルサイ風呂は百戦錬磨の俺をして初体験だ。 エンジン音に包まれながら隣の船に魚群到来の興奮を伝える、その勢いで全員がしゃべっている。話題はまあ、体のどこが悪くて医者にかかっただのという全国じじい共通の内容だが。 俺は風呂は静かに入りたい派だが・・・ここまでやかましいと逆にオモロイわ! お湯はガツーン系のアッツアツ。漁師町の風呂はこうでなくっちゃね。 奥に薬湯の副浴槽があり、そこはややぬるめ。「エッキス」という薬剤名が貼られている。イセエビのエッキスあるいはドチザメのエッキスではないかと想像する。 湯上りは、ここが好きでわざわざ浜松から週に一回通っているというオジサンが車で新居駅まで送ってくださった。 あらゆる面でインパクトの強い、印象深き風呂。ふいに「銭湯は生き物だ」というフレーズが思い浮かんだ。 ビバ旅先銭湯! 再訪確実。 (2014.3.14) (左)夕暮れのみどり湯 (右)駅からの途中の風景 ※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。 2018.11『旅先銭湯』に掲載されました! |
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吉田温泉 △(休業中)
沼津市で最後の1軒らしい。 駅から10分ほど歩いて狩野川を渡る。少しさみしいエリアに、少しさみしげな面持ちで現れる。 (左)レンガ造りの煙突 (右)暖簾は出ない ガラス戸を開けると、小さなタタキに番台があって、おやじさんが座っている。 すぐ前の脱衣場は広々としているが、レトロっぷりはかなりなものだ。 壁はくすんだ灰色のモルタル、床板の色もまだらで、この最後の1軒が競争を勝ち抜いた結果というわけではないことが察せられる。 (左)タタキと下駄箱周辺 (右)脱衣場の男女仕切り方面 (左)脱衣箱 (右)浴室の入口は木の戸だ! 相客なし。夏の夜、静かな気が流れている。これが冬ならばさぞや寒々しい光景だろうと思われる。 いつも通りに裸になって、浴室へ。 ここもまた広々として、古色蒼然たる浴室が完全にそのまま残っていた。 (左)完全円ひとつ (右)給水部分のタイル造作 (左)壁は薄い色のモザイクタイル (右)浴槽へりが給水付近だけ盛り上がる 床全面をモノクロの玉石タイルが覆い尽くしている。にもかかわらず、どこを見てもふしぎと表情が感じられる。長きにわたって多くの人に使い込まれてきたタイル特有の表情だ。 緑色の入浴剤が入れられた湯はやや少な目で、ぬるかった。旅の疲れを癒すには正直不十分だ。 だがそんなことより、ふしぎな貫禄を感じさせる風呂だ。包み込むような静寂が逆に、深い歴史をぐいぐいと語りかけてくる。 そんな中に裸の俺がただ一人、半身を湯に浸けてぼーっとしている。 洞窟的シャワーブース 上がりは、冷蔵庫に地元の牛乳パックなども置かれている。 それを飲んでいると、まだ7時半なのに、おかみさんとおやじさんは浴室の掃除をし始めた。 どうやら俺が来る前すでに、この日最後の常連客が帰っていたようだ。 最後の1軒には、なくなってほしくない。沼津に、銭湯のあるまちでいてほしい。 だが静かに余生を送るかのごときこの風呂の主に、そんなことは言えなかった。 風呂好きの人は一刻も早く行っておくほうがいいだろう。 (2014年8月) |
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子持湯 (湯川第一浴場)
伊東には11ヵ所もの共同浴場があるらしい。数年前にいくつか入った中で、いちばん印象深かったのがここ。なので2013年の初風呂として再訪した。 なにが印象深いかといって、まずはモロ駅前の立地だ。 伊東駅前ロータリーを右側へ回ると道路の向かいにパチンコ屋、その右に居酒屋があるが、そのスキマにオレンジ色の小さなテントがある。それが子持湯だ。 近づくと「大衆浴場」の看板が出ている(上の写真は閉店後に撮ったので柵がしてあるが、営業時間中は開いている)。 ビカビカのパチンコ屋の隣の地味なテント 次に印象深いのが、地下温泉という怪しさ。 入口からいきなり狭い急階段が地底へと続いている。しかも途中で屈曲しているので下の様子がわからず、初めてならドキドキだ。別府の梅園温泉に通じるものがある。 (左)キョーフの無機質階段 (右)ところがどっこいエエ感じ 次に印象深いのが、レトロなガラス戸、番台、そして番台のおばちゃんのナイスなお人柄だ。 昔ながらのよき銭湯風情に満ちていて、秘密階段の怪しさとのギャップが最高やおまへんかい。 (左)番台 (右)脱衣場と番台の間に仕切りあり そしてもちろん、小さなお風呂も印象的だ。ディープな雰囲気からは意外なほど美しくて清潔。 そして無色透明無味無臭のクセのない適温の温泉がじゃんじゃんかけ流しになっていて、どうにもこうにも気持ちがよい。まったくもー、なによこれこの極楽風呂は。贅沢にもほどがおまんがな。 んでまたこのお湯がさすが温泉パワーっちゅーか、真冬でもたった10分あれば、服を着れないほどぬくもってしまう。 (左)美しい浴室。あふれた湯が床を流れている (右)こちら家族風呂 そしてもうひとつ、ここにはかわいらしい家族風呂(350円)もあるのだね〜。 というわけで電車を下りて3分後にはこんなお風呂で極楽できるなんて、伊東エエとこやわ〜。 (2013.1.1) |
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あやめ湯 ★
三島から伊豆箱根鉄道に乗って伊豆長岡駅で下りたら、駅正面の幹線道路をまっすぐ西へ歩こじゃないか。 10分ちょっとで道が狭くなって丘の麓のお寺に突き当たるが、その手前にこのこじんまりとした共同湯がある。あやめ湯という名は、平安時代にいた伊豆長岡出身のあやめ姫という美女にちなんでいるらしい。 庶民派民家系の素朴なたたずまいがたいへんよろすい。 (左)長岡温泉の共同湯。夜になると素敵に光る看板 (右)道祖神がある (左)裏の浴室部分、どうにもこうにもエエ雰囲気 (右)一刻も早く入りたくなる 入ると券売機があるが、小さな脱衣所は番台におばちゃんが座る銭湯スタイル。ここも木造りでよい。 浴室に入るや、もうね、あんた、あぁ・・・。ちょっとしばらく黙って味わわしてんか。 ・・・。・・・。 はぁ〜っ。 エエ。これよこの雰囲気。 木づくりの小さな浴室に、清潔な暖色系タイル張り。ひとつある湯舟のへりにも木が使われている。天井の湯気抜きの構造も美しい。 そして、差し込む光にゆらめきながら、湯舟のへりをさらさらと溢れてゆく透明な湯。風呂場に満ちる本物温泉の芳しき上品な香り。 静かに身を沈めると、やや熱めだが俺にはちょうどいい。お湯の鮮度のよさが皮膚を通してひしひしと感じられる。くせのない、やわらかくてさわやかなお湯だ。 男女境も板壁で、ここには伊豆の美しい風景写真パネルが3枚ほど飾られている。内側からの電光板になっているようだ。 カラン類も快調。シャワーもあって銭湯としての使い勝手もよし。 300円。名湯である。ありがたや。ただひたすらにありがたや。 (08.7.31) |
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昭和湯
二つの変な山に挟まれた、脱力フレーバー漂う港町・下田。ええわぁ〜気に入ったわ〜。 駅から古い市街地を港のほうへ南下していくと、海から1筋入ったところにポーンと1軒の風呂屋。下田で唯一の温泉銭湯、昭和湯だ。 レトロなたたずまいよし。 玄関両脇はこの地方に多いナマコ壁になっているが、横から見たらハリボテっちゅーか見せかけっちゅーか、でもええねんそれで! それでこそのチープな楽園われらの味方やおまへんか〜。 (左)ピーカンです (右)側面トタンです 温泉マークがユニークです 暖簾をくぐるとタタキに番台、でもおやじさんは男湯のベンチにいる。 木の脱衣箱に籐の丸籠。まるっきり普通の伝統的な銭湯スタイルだ。 あー今日はとにかく暑い。すばやく裸になって浴室へ・・・おっと〜、これまたシンプルな何の変哲もない田舎銭湯のよき風情やおまへんか〜。 湯船は奥壁の幅いっぱいサイズで、たっぷりのお湯がサラサラと溢れておるではないか。2基のジェットもある。 単純温泉(弱アルカリ性低張性高温泉)で泉温55℃のを引いてきとるっちゅーことだが、どれ…おぅ深いぞ、んでナミナミと湯が入っとるもんやさかいザバーっと溢れよんがなザバーっと。 お湯は熱めだが43〜44度くらい。無色透明ほのかな香り、贅沢の一語。いや〜タマラン。 左右にカランがあるがシャワーはなし。男女壁はすりガラスになっている。 窓からの陽光が嬉しいねぇ。いやがおうにもリゾート気分が高まってくる。 温泉はよろしいな。はよから開いているから旅行者にも嬉しいことよ。 風呂上りは、脱衣場脇の勝手口からの風がよい 下田の町は気に入ったし、この風呂屋もあるし。近いうちにまた来よう。 (2014.8.20) |
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都湯 ★《廃業》
伊東から風光明媚な海沿いをチンタラ走る伊豆急行、乗車料金が高すぎる。 それはともかく、駅前通を海へ向かって坂を下るとキンメダイ水揚げしまくりの稲取漁港に突き当たる。その手前の役場前を右に曲がって歩いてゆくと、味わい深き銭湯の登場だ。稲取駅から徒歩10分少々。 すぐ後ろに港が控える、潮風いっぱいのなんともエエ場所だ。この周辺全体の空気が脱力のバケーション状態やがな。水色に塗られた窓の目隠し板みたいなのがまたよろし。 しかもここは温泉らしいぞ。伊豆だもんね。そのため煙突がないので、やや見つけにくいかもしれん。 暖簾をくぐったら狭いタタキに番台、おかみさんが座っている。 脱衣所は、地方的な郷愁感にみちた小さな空間。狭いけど全体に白塗りトーンで明るい。こういうとこじゃロッカーよりも丸籠を選びたくなるねえ。 そしてガラス張りの向こうに見えていますがな、ええ感じの浴室が! ダッシュで裸、そしてこじんまりとした風呂場へ。 湯舟は奥にタイル張り2槽。右の大きいほうは透明な湯だが、左はバスクリン的みどり湯だ。 まずは右の大きいほうへ入る。あぁ〜、うほぉ、43度ちょいあるかな。まったくもってやわらかくてイキイキしとる。そして透明度が徹底的に高くて、ホレボレするくらいに澄んでいる。 端から源泉がチョロチョロ流れ込んでいる。かなりの高温で、一瞬さわれるかどうかというくらい。舐めてみたら塩味だ。やっぱ海の近くだな。でも俺、さっき海で泳いだばかりだよ。 隣のバスクリンのほうはややぬるめ。 図らずも、隣の透明湯舟の底の水色タイルと、こっちのバスクリンの緑色とが、不思議とさわやかな色彩ハーモニーを描いておるではありませんか。 天井は東京っぽい2段式。 男女仕切り壁には海岸風景のモザイクタイル画あり、小さな島に祠と赤い太鼓橋、帆掛け舟が描かれている。 カランの出は快調。湯はもちろんアツアツの温泉だ。逆に水はしっかり冷たくて、温泉に浸かっちゃクールダウンの無限連鎖で極楽保証ね。 地元のじいさんとしゃべりながら入って、ほなお互いぼちぼち上がりまひょか・・・というところで、なにやら小学生の団体が20人くらいドバーっと入ってきた。じいさんと顔を見合わせて、「危機一髪でしたな」。 おかみさんに聞くと、この近くのお寺に泊まって野外活動するグループで、毎年来るそうな。ガキどもにもよき思ひ出となることであろう。 (08.8.1) |
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