メ シ つ き 文 化 遺 産
激渋食堂メモ
淡路島の渋~い大衆食堂
丸万食堂(洲本市、洲本)(閉店)
精力軒(洲本市、洲本)(閉店)
鈴屋食堂(洲本市、由良)

まりも(南あわじ市、福良)

丸万食堂 (閉店)
2019年6月30日をもって閉店されました。
レポートは営業当時のものです。
(情報くださった方、感謝!)


洲本市本町4-3-14 →地図

電話/0799-22-1179

【営業時間】11:30~20:30
【定休日】木曜日


 幹線道路の裏の狭い通りにある。看板や暖簾、ショーケースなど、なかなか味わい深い面持ちだ。
 中に入ると、テーブル8つと小上がり2卓、けっこう広い。奥の座敷は物置になっている。
 お昼時、客は他に親子連れと、俺のすぐ前に入ったおっちゃん。おっちゃんは席につくなり、大声でビールと叫んでいる。

 立派なショーケース

 店員は、腰が直角に曲がったうえ片足を引きずったおばあさんが一人。よちよちとお手拭きやらお茶やらを運んできてくれた。
 とりあえず俺もビールを頼む。アサヒとキリンどちらにしますか、と聞くので、キリンと答えてしばし待つ。しかし、運ばれてきたのはアサヒだった。
 それでもちゃんとスナック菓子までつけてくれている。
 「後ろのお客さんのビールが先ですよ」と言ったが、「ハイわかりました」と言って、別の客の会計を優先している。おっちゃん苦笑い。

 厨房の奥に男性がいて調理しているようだが、まったく声を発せず、調理音だけが聞こえている。

 新たな客が来ると、おばあさんはコップに水を入れ、背伸びしておしぼりを取り、銀のお盆に載せて運んでいくが、動きがゆっくりなため追いつかない。
 アツアツの料理を銀の盆に載せてヨタヨタ運び、無事に客席までたどり着いて「ハイお待たせしました」と給仕が完了すると、ホッとさせられる。

 

(左)店内  (右)おばあさんが持って来てくれたお茶とおしぼり


「ばあちゃん、ビールやビール!」
 と先のおっちゃんが再度言う。
「え?どっちのお客さん?」
 おばあさんはキョロキョロして、「ハイちょっとお待ちください」と答えたけど、結局別のことをしている。耳が少し遠いようだ。
 おっちゃんはさらに大きい声で、「かつ丼!!」と絶叫。やっと注文が通った模様。

 だがよく見ると、おばあさんは長年やってるだけあって動きに無駄がない。銀の盆も扱い慣れている。ゆっくりしか動けないが、休みなく全力でやってるのが見てわかる。
 したがって文句も言えない状況だ。
 食べ終わった食器の片づけ、重いけど大丈夫かな。でも運ぶ気満々で次々お盆に乗せている。
 途中、おばあさんは2度ほど「あぁ~っ!」と甲高い声を上げた。何をやらかしたのかはわからない。

 おばあさん、体は言うことを聞かないが、会計の暗算と金銭授受だけは速くて正確だ。まあたしかにこれだけの客に一人で対応するには、自分なりの段取りを崩すとワヤクチャ状態に陥るだろう。

 すべての客が文句も言わずにハラハラしながら料理を待っている様子を見ているうち、だんだんとおばあさんのワンマンショーを見ているような気分になってきた。
 「リアルドリフ」
 という言葉が頭に浮かんだが、懸命に働くおばあさんに悪いので、すぐに頭を振って打ち消した。

 やがて、厨房内の男性が、厨房のカウンターに完成した五目そばを置いた。しかしおばあさんが気付かない様子なので、「できましたよ」とこっちが声をかけて促す。
 五目そばは充実の内容だ。味も安心安定の食堂味。じゅうぶん満足できる。

 五目そば600円

 出るころには静かなおじいちゃん客が静かに入ってきて、他に空いている席があるのに、わざわざ横に座ってきて相席になった。固定席なのかもね。

 おばあさんの耳が遠くても、すべて予定調和通りに事が進んでいくようだった。味どうこう以上に、心に残る食堂となった。(2016年9月)

 また会いに行きたい
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精力軒 (閉店)
2016年7月15日をもって閉店されました。
レポートは営業当時のものです。


洲本市本町1丁目2−4
→地図

電話/0799-24-5999

【営業時間】11:00~13:00(土日祝は昼なし)
      17:00~20:00
【定休日】月曜日


 市役所の裏の2筋目をずーっと海のほうへ歩いていくと、真っ暗な中にポツンと赤い灯が見える。
 近寄ると、なんともエエ感じに年季の入った暖簾がかかっている。周囲に漂う匂いからも店名からも焼肉屋のようだが、表には焼肉メニューより上に一般的な食堂メニューが貼られている。
 
(左)効きそう (右)麺類もけっこう種類が多い

 丼物500円~、きつねうどん450円~、日替わり定食600円(昼のみ)、とんかつ定食700円、カレーライス550円、めし小130円、味噌汁110円、等々。
 焼肉屋の発展型食堂、これはけっこうレアだ。
 中に入るとテーブル3つにセパレートの小上がり4つ。

 
店内も年季が入っている

 精力を感じさせるザックバラン系おばちゃんが「なにしょー?」と注文を聞きに来る。俺はもう匂いに我慢できず焼肉を壁メニューで物色。
 「肉身、って何です?」
 「ハラミのこと」
 「ほなそれとミノとキムチとビール」

 肉を待つ間、あとから入った客が日替り定食を頼もうとしている。でも「夜はコロッケ定食か焼肉定食くらいしかでけへんねん」とのこと。ならばと焼飯550円を頼んだら、「焼飯は腱鞘炎ででけへんねん」。奥で調理をしているおやじさんのことのようだ。

 そのやりとりをしながら、おばちゃんは俺のテーブルにタレを持ってきた。めっちゃええ香りだ。そして来ました肉身(ハラミ)700円、どえらくうまいぞ!
 ミノ650円もうまい、キムチ300円もうまい。

 
(左)キタキターー!  (右)肉身

 そのうちお客がどんどん来て、満席になった。
 おばちゃんは注文聞くと「よっしゃ~」と勢いよく応え、奥でおやじさんがせっせと作っている様子。
 肉を乗せる古いコンロは、網くねくね。煙もくもく出るが、天井3ヵ所に換気扇と表の戸を開けてまあなんとか。

 
(左)くねくねの網  (右)キムチうまし

 家族連れのお母さんは、肉の追加注文の合間に「はいからうどんちょうだい」などと慣れた調子で挟んでいる。
 焼肉の合間にはいからうどん、ええやん! 今度は俺もそれやってみよっと。

(左)サービスで柿が出てきた

 ディープに楽しめる焼肉食堂、ウマウマの肉身とおばちゃんの「よっしゃ~」を聞きにまた行くで~。

 左側の灯りが精力軒
(2015年11月)
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鈴屋食堂
洲本市由良3-1-15
→地図

電話/0799-27-0345

【営業時間】未確認
【定休日】未確認


 地元の漁師たちが「明石にも負けない」と胸を張る漁港、由良。
 その港の真ん前にある食堂だ。さぞやとれとれのやつがピチピチゆーてることだろう。

 
(左)すぐ横が港  (右)わりかし広い

 中に入るとテーブルが並び、15名くらいは座れる。他に客はおらず、けっこうなお歳のおかみさんが一人で番をしておられる。

 壁のメニューを見ると、うどん350~450円、中華そば380円、丼物500円(玉子丼も親子丼も500円)、野菜炒め450円、カレーライス500円……全体的に安い。朝定食550円、弁当750円あたりは、たぶん漁師さんご用達なんやろね。
 でも、あれ? トレトレの魚は? 目の前でばんばん水揚げされてるんじゃないの?

 
(左)よく見たら暖簾の屋号は油性マジックで手書き (右)湯呑み揃え鈴屋スタイル

 そこへ漁師さんと思しき客が来て、荒々しく「親子丼むっつ作っといて」と言った。
 そうか……彼らにとって、魚とは食堂でカネ払って食うものではなく、海で獲るものであった。ピチピチ魚など売るほど持っている彼らには、親子丼こそゼニを払うのにふさわしい食物なのね。

 仕方がない。オムライス550円。そして鍋焼きうどん450円。

 
(左)ケチャップぶちゅ  (右)やらこい麺ぐつぐつ

 漁師さんしか来ないんだから、魚メニューなど置いてもしゃーないよね。
 いや、まてよ……魚メニューを出したら観光客も来るんちゃう?
(2015年2月)
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まりも
南あわじ市福良乙711
→地図

電話/0799-52-2055

【営業時間】11:00~14:00
      16:00~19:00
【定休日】木曜日と第3水曜


 わが娘と同名食堂シリーズ。
 淡路島南部の漁師町、福良の目抜き通りからちょっと山側に入ったところ。飾り気のない外観はけっこうディープだが、入るとスッキリと美しい。
 聞けば、36年ほど前からラーメンとお好み焼きの店としてやってこられたようだが、最近改装したそうだ。

 
(左)入って右側にテーブルとカウンター (右)奥にお好み焼きの大きな鉄板

 しかしテレビでは競艇番組が流され、空気感は昔ながらの濃いめ。ご家族みんなで運営されている様子。
 メニューを見ると、ラーメン、お好み焼きだけでなく、丼物、定食、うどん、さらには巻き寿司やいなり寿司など、食堂メニューが幅広く揃っている。
 さらに黒板には日替り定食650円や日替り幕の内700円も書かれている。改装を期に食堂メニューを増やしたのかもしれん。カレーライスやオムライスなどの洋食ものはないけど、そのうちできるかも。

 この日の日替わり定食はチキン南蛮、そのメシ抜き580円を注文。
 さらにラーメンと中華そばが別に書かれているのが気になる。どう違うのかと聞くと、ラーメンは縮れ麺、中華そばはストレート麺とのことで、とりあえず中華そば580円もいっとこか。

 やってきたチキン南蛮はサラダたっぷり、マカロニサラダもあるし小鉢もついててオトクだ。タルタルソースもおいしくて、全部すくって食べた。
 正統派の中華そばもうまい。

 
(左)チキン南蛮メシぬき580円 (右)中華そば580円

 見ていると、じいさんは出前担当、ばあさんはお好み焼き、息子は厨房、よめさんは全般的に手伝っているような感じ。
 中華そばはじいさんが持ってきた。チキン南蛮はよめさんが持ってきた。これでラーメンと中華そばをじいさんと息子が作り分けてたらおもしろい。

 ところで気になる店名について、感じのいいばあさんに尋ねると、
 「まりもが小さいのからだんだん大きくなるように、店も大きくなるようにとの思いから名付けた」ということだ。

 看板は今も「ラーメン・お好み焼き」だが、じつはいろいろ楽しめるナイスな食堂だ。

 
(2016年3月)
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