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江戸っ子の黒湯
(東京都)

(2003年11月2〜4日)
 4時すぎに新幹線を降りて、東京駅から蒲田の「辰巳天然温泉」へ直行。東京には黒湯なるものが湧き出ており、中でもここが東京で一番濃いとの話だ。
 JR蒲田駅の西口から北へ「工学院通り」を徒歩約10分ほど。白壁の寺社造りに巨大な唐破風が見えてくる。ふむむ〜。これが東京銭湯か・・・。東京の銭湯料金は400円。

  (右)この彫り物はゲ魚というんだっけ?
(左)東京は関西より1時間くらい日暮れが早い。写真も撮れやしない。

 外観の壮大さに比べて中はわりとこじんまりしている。フロント式に改造したせいで脱衣場は狭い。浴室も改装されていて古さは感じない。
 奥の壁に女湯とブチ抜きのペンキ絵。壁に直接書いてある。男湯は滝のある山水風景、女湯のほうには富士山が見える。すみっこに「平成15年8月 早川」とサイン入り。ほう、これが有名な早川師のペンキ絵かい。しかも書きたてホヤホヤだのう。

 浴槽は3つで、うち1つが・・・おおおーーー、なんじゃこりゃあ〜?
 まさしくマックロ。まるきりコーヒーやがな。入ってみるとサラっとしているが、指を第一間接まで沈めただけでもう指先は見えなくなる。イカスミみたい・・・お、お、おもろい〜。
 黒湯は冷泉らしいが、42度くらいに加熱してある。気持ちエエ〜。
 それにしても、新幹線を降りて1時間後には黒湯に浸かっているなんて。最高ね。

 体を洗っていると、僕と同じ並びのカランでスキンヘッド頭を念入りに剃っているジイサマがいる。剃っているというより、かなりはげしく髭剃りでゴシゴシとこすっている。あああ、そんなに同じところを何度も剃ったら血が出・・・

 ・・・で、出てるよ、すでに。しかも何ヶ所も。

 でもジイサマはそんなことはおかまいなしに、その血の出ているところをさらにカミソリでゴシゴシやっている。げぇ〜っ。見たくないが気になって見てしまう。
 結局、ジイサマは鬼気迫る勢いで30分くらい、頭といわずアゴといわず、顔中を同じ髭剃りでゴシゴシ剃りまくり続けた。スキンヘッドの頭は鏡のようにツルツルにはなったが、20ヵ所以上に出血の跡が見られる。
 だがしかしよく見ると、30分も剃っているうちに、それらの傷はすべて治癒している!


 え、江戸っ子なのか・・・これが江戸っ子といふものなのか・・・。


 ところで、黒湯以外の2つの湯船は白湯だが、これらが妙に白く泡立っている。なんでかな〜と他の入浴客に聞こうかと思ったが、さっきのジイサマの恐るべき姿に怖気づいて、聞けなかった。
 ここにいる人たちは、おそらくみんな江戸っ子なのね・・・。
 「この湯が泡だってるのは、なんでですか?」
 こんなふうに聞いて、もしも、
 「てやんでぇ」
 なんて答えが返ってきたら、いったい僕はどうすればいいのだろう。

 「この湯が泡だってるのは、なんでですか?」
 「てやんでぇ」
 ・・・考えただけで背筋が寒くなる会話だ。

 「てやんでぇ」などと言われた場合、平均的な東京人はどう返すのだろう。
 「おーっとがってん承知の助ェ」
 だろうか。それとも、
 「スシ食いねェ」
 なのだろうか。あるいは若者なら、
 「ありえねぇよ〜」
 なのだろうか。
 平均的関西人の僕には想像もつかない。
 関西風に「ぼちぼちでんな」「どたまかちわんど」「ちゃーでもしばこけ」などと返しても、きっと通じないに違いない。

 ともかく、泡立ちについては聞かずに黙って上がることにした。
 そのあと蒲田駅近くの焼き鳥屋で東京の編集者Mと呑んでから、京浜東北線・常磐線と乗り継いで南千住へ行き、ビジホ「福千」に泊まる。1泊3000円、1部屋3畳半ほどの安宿だが、今年オープンしたばかりでピッカピカ、若い女性がたくさん泊まっていた。

 翌日は神保町で某集会に参加。
 終わってから2次会まで1時間ほどあったのでまた銭湯へ行こうと思ったが、神保町周辺はなさそうだった。宿泊先の南千住周辺には名銭湯が目白押しなのだが、地下鉄を3本も乗り継がないといけない。雨もパラついてるし時間もないし・・・と本屋で「東京の温泉」という本を立ち読みしていると、地下鉄1本で行ける温泉銭湯があった。
 新宿線の快速で15分。江戸川区の船堀という駅で降りて徒歩5分くらい、「鶴の湯」という銭湯に着いた。

 またもや真っ暗。写真の意味なし

 建物そのものは古い破風造りだが、正面はモダンに改装してある。中も改装済みで、古さはなし。
 ここの黒湯は薄かった。麦茶くらい。そのかわり水風呂は源泉で、なかなか気持ちよろすい。
 でも時間がなくて20分ほどしか入っていられなかった。残念だ。
 神保町に戻って2次会、さらに御茶ノ水に移動して3次会、そのあとまた南千住「福千」泊。
 翌日は起きてすぐ神戸へ帰ってきた。

 まあそんな東京行きだった。飲み会ばっかりで個人的趣味の下町散策に走れなかったのが心残り。
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