ちょっとした旅ホーム
支離滅裂の街



(福井県勝山市)
2004.8.12〜13

 大野からバスに乗って九頭竜川を北へ渡り、30分ほどで勝山市の中心部に着く。もう午後4時だ。

 勝山も大野と同じく奥越前の内陸の街で、大野市よりやや人口は少ない。似てるのかなと思ったが、大野とはかなり趣が違う。大野は「歴史・城下町・小京都・名水」がウリだが、勝山はどうも「アミューズメント」らしい。
 恐竜化石が多数出土していて、充実した恐竜博物館がこのところ人気のようだ。
 しかしそれだけではない。どういうわけかこのまちには、「日本最大の大仏」「日本で最も高い天守閣」なんかがあるという。なのに勝山市ホームページなど観光資料では、あまりくわしくは紹介されていない。歴史施設ではなく「アミューズメント」に分類されていたりする。
 つまり、トンデモ系なわけね。地元のトンデモお金持ち様が一切の歴史を無視し、「夢」を実現されてしまった、あっちゃー・・・勝山市民がその対応に苦慮しているようすがそこはかとなく察せられる。

  でも恐竜は勝山の誇りです

 勝山の中心地・本町通りは、地方都市の典型的なユルーイ空洞化商店街。恐竜博物館は数キロ離れた郊外にある。観光客は京阪神などから恐竜博物館へ直行し、ここを訪れることは決してない的な空気が充満している。
 なのに、ここに観光案内所がある。もちろん客はゼロ。観光協会の人たちがくつろいでおられる。かろうじて「勝山うまいもんマップ」が存在したのでそれをもらう。

  
 (左)本町通り「商店街」  (右)伝統的な醤油屋。帳場なども江戸時代のまんま

 本町通りの旅館「さつまや」へ。素泊まり4000円。でも洗面所には家族の私物がぎっしり置かれているし、部屋の広さも雰囲気も大野の「大清水」のほうが勝っているな。

 荷物だけ置いて、さっそく銭湯探索。
 しかしまあ「アミューズメント」が派手派手しいのに反比例して、市街地自体はもう完全に市自体にも捨てられてしまってるような、何のとりえもおまへん的に中途半端に寂れた田舎町だな。でもそのぶん、狭い範囲に銭湯がけっこう生き残っているようす。
 本町通りの入口近くに「谷澤湯」発見。煙突があるからそれとわかる、というくらいのささやかな存在感。
 駅へ続く大通りを渡って少し歩き、左手の神社へ上がったら、また煙突発見。「南部湯」、これはそうとうな年季、キてるとしかいいようがない。暖簾に「エナラジウム温泉」と書いてある。じゃあここへ入るか。
 おぉ、こりゃーまさに超郷愁系、田舎プチ銭湯の良さ炸裂。しかも水・・・これ、大野の水質とほとんど同じやんか! めちゃくちゃ気持ちエエ。
 うーむ、ボロいわりによかったよ。南部湯の詳細こちら

  南部湯の濃厚なる外観

 湯上がりスッキリ。日中は暑かったが夕方になると涼しい風が吹くから山の町は嬉しい。
 本町通りの一筋川寄りは「後町通り」、ここには飲食店がけっこうある。ほう、大野より小さい街だが飲むには困らんみたいじゃないの。
 さらに一筋川寄りは「河原町通り」、おや、ここはもしかして旧花街か? ちょっと怪しげな雰囲気ただよう濃い目の家並み。大野にはこの感じはなかったな。しかしこの勝山というところは、元々どういう土地だったんやろねぇ。
 北へバス道を越えて、「長渕湯」発見。ビル銭ぽいファザード、でも暖簾はなく定休日のようだ。

  長渕湯

 さて、とにかくビールだよ。観光協会近くの焼き鳥「秋吉」へ。ここはやや垢抜けたファミリー系、繁盛してますな。どうもこの地方のチェーン店のようだ。焼き鳥バンバン食ってビール。
 腹がふくれたら、しばし夕暮れの九頭竜川の堤防を散歩。すぐに日が暮れて真っ暗になる。
 ぶらっと後町通りに戻り、「おでん」の看板の出ている「モリ万」という奇妙な名の小さな店に入る。大野じゃこうやってハシゴ酒ができなかったもんね。
 ここは70を越えたバアサンが一人でやってる店。色のしみまくった真夏のおでんでまたビールを飲む。
 バアサンは静かな口調で「恐竜博物館はすごいですよ」と言う。そうか、来年あたり丘を連れて来てやろうかな。
 あとから、なじみのバアサン客が一人入ってきた。カレーライスを注文して食っている。

  モリ万

 さてと、いいかげん酔っ払ったな。焼き鳥の煙にもまかれたことだし、もうひと風呂あびてから宿へ戻ろかい。というわけで最初に見つけた谷澤湯へ。酔って風呂へ入るのはいけないらしいが、俺はこれが好きなんじゃわ。
 谷澤湯の詳細もこちら。実はあんまり覚えてない。でも、ここも水がすごくよかったのだけは酔っててもわかった。
 湯上がりはまた酒屋でビールを買い、宿で飲んで寝た。


 翌日

 勝山のガイドなどを見ると、先の「アミューズメント」以外の見どころとしては唯一、「平泉寺白山神社」というところが載っている。白山信仰の開祖のナントカ大師が奈良時代に興した古〜い神社で、「苔の宮」とも言われてるらしい。ま、せっかくだし行ってみるか。
 数少ないバス便は8時台に1本しかないので、朝食の菓子パンを食いながらそれに乗る。客はほかにはいない。例のアミューズメント大仏やアミューズメント「勝山城」のそばを通り、ちょっと山を登って15分ほどで平泉寺着。
 帰りのバスをチェックすると、なんと40分ほどあとに1本あるだけ、それ以後は午後までなし。ということは、どうせさっき乗ってきたバスが終点から戻って来るだけなんだろ。観光マップに載せてるくせに・・・。
 ともかく急いで見物せにゃならん。参道がけっこう長いぞ・・・。

  
(左)参道の両側はコケに覆われている  (中)開祖が白山の女神のお告げを聞いたという池

  
 (左)古い木の鳥居  (右)苔じゅうたんが美しい。シシ神でも出そう

  
  精緻な木彫りの本殿

 拝殿は桧皮葺の簡素で上品な造りで、そのあたり一帯を覆い尽くす苔がすごい。なかなか見応えのある美しいところだ。ほとんど観光地化されていないところがまたいい。人は他に2組ほどいただけだった。
 でもねえ。ゆっくり見てられんのよ。バスが来るから。
 雰囲気にひたるのもそこそこに、必死こいてバス停へ戻る。案の定、帰りのバスを運転していたのは来るときと同じ運転手だった。

 バスは九頭竜川を渡って勝山駅に出た。
 勝山と福井市は「えちぜん鉄道」で結ばれている。正面衝突事故で京福電鉄が手放した路線を引き継いだ、新しい鉄道だ。
 ちょうど列車が入ってきた。厳しい経営状態が予想されるローカル線だが、きれいな新型車両。女性車掌の制服がかわいらしい。

 20分ほど列車に揺られて、福井との中間にある永平寺口で下車。
 ここで降りる観光客はたいてい永平寺へ行くんだろうが、そういう有名な観光地にわざわざ行くような俺様ではない(いや、渋い銭湯があれば行くんだが)。あえて反対方向の丸岡行きのバスに乗る。
→丸岡編へGO!
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