東北<ちょっとした旅ホーム
北のはずれの海と風



(青森県下北郡大間町)
2007.10.8
 とうとう辿り着いた本州最北端、大間崎。巨大マグロがとれる町として有名だが、下北半島まで来たからにゃ、やっぱりここから北海道を見てみないとね。
 それに、電話帳によるとここにも銭湯があるらしい。間違いなく本州最北端の銭湯だろう。

 (その後これをまとめるまでに旅行から1年以上が経過した。記憶が怪しいけど、とりあえず憶えている範囲です)

 むつ市のターミナルからバスに乗った。途中、大畑で寄り道してさらにバスを乗り継ぎ、大間崎までほとんど半日近くかかった。

 バスを下りたら、そこはいきなり最北端だった。本州先端のギリギリに道路が走っている。

 
(左)本州の北のサキッポ   (右)まぐろを釣る手

 まず、寒い。まだ10月はじめだというのに、重苦しい曇天の下に強風が吹き荒れ、容赦なく体温を奪ってゆく。
 そして、海が激しく鳴っている。波がうねうね、ドップンドップンだ。こんなところに船を漕ぎ出すことを考えるだけで怖くなる。

 上左の写真はまさに下北半島の切っ先に立って北を眺めたところ。沖に浮かぶのは弁天島で、そこに大間灯台がある。遠くの山は北海道・渡島半島だ。
 この狭い海峡を境に、動物や鳥の分布相が異なっている。ブラキストン線というやつね。つまりこの先はシベリアと同じ生息区域に分類されているわけだが、それもうなづけるなぁ、これは。
 鳥も通わないくらいだから、人間にとっても近世まで大きな障壁となってきた。「蝦夷地」なんちゅーのはなんとも失礼な呼び名だが、そう呼びたくなる心情も理解できてしまう。そんな風景だ。

 観光客が三々五々、何組かいるが、みな寒そうにしていて長居はしない。
 岬の道路沿いにマグロ料理兼土産物の店が何軒か並んでいる。でもモロに観光客向けだし、腹も減っていないのでパス。
 内陸側には小さな集落があって、干物を焼いて出している店があったりする。

 こんなふうに店先に並んでいる

 大間の漁港はここから2kmちょっと南にある。そのあたりまで海岸沿いに歩いてみることにした。
 しばらく堤防沿いに歩いたが、海風がきつくて寒い。鼻がツーンとしてきたので、少し内陸側の道路沿いに移動する。
 板張りの、いかにも漁村らしい家々や倉庫などがいい風情だ。

 
(左)NHKの連ドラのロケに使われた家、らしい   (右)割石あたりを歩く

 大間漁港の湾入。このあたりは小舟が並ぶ

 さらに南下すると、おっと出ました、日本最北端の銭湯! まさしく本州最北端にふさわしい渋さだ。

 
さいはての風呂屋

 でも残念ながら・・・

 うむ〜う、はるばる来たのに残念だ。
 後日談だが、というかこれを書きながら今調べてみたら、この銭湯がタウンページから消えている・・・無念さ3倍増。

 やがて大間漁港の中心部とおぼしきところに出た。
 こっちには、さっきの小舟よりもずっと性能のよさそうな漁船がぎっしりと並んでいた。

 マグロ1本釣り用の船かな

 周辺には旅館や食堂も何軒かあるが、時間的にどの店も開いていない。
 町の印象は季節や天候、時間などに大きく影響される。このときは人けもなく、どんよりとした寒空ということもあって、「北の港」というにふさわしい寂莫たる景観だった。

 港の突き当たりに1軒の喫茶店があった。白と灰色に覆われたわびしげな港の風景の中にあって、この店だけが不似合いな温かみを漂わせている。
 入口に数匹の三毛猫が固まって暖をとっているふうなのも気になった俺は、すっかり冷え切った体と喉の渇きを癒すべくこの店に入った。

 
(左)喫茶店   (右)入口の猫たち

 俺の場合、旅先で喫茶店に入ることはめったにない。自分でも、めずらしいな、と思った。
 狭い店内にはオヤジ客が2人ほどいた。
 窓べりの席に座った俺は、どうせならふだん注文しないものをと考え、ウインナーコーヒーを頼んだ。

 やがてそれが運ばれてきたとき、俺はなんとなく「これを注文してよかった」と思った。

 おいしかった

 窓の外の冷たい風景をぼんやり眺めながら、温かくて甘いウインナーコーヒーをすすった。
 たまにはこういう感じも悪くない。  (08.11.30記)
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