ふしぎ山
太白山 たいはくさん
宮城県仙台市、320.7m


 東北自動車道を走る高速バスの車窓からボンヤリ外を眺めていると、仙台南インターと仙台宮城インターの間で、こんな山が目に飛び込んでくる(上の写真)。

 小さな円錐形の山だが、ゆるい裾野からコポっと立ち上がった部分は「むくり」がついて、麦わら帽子みたい。
 ・・・いや正直に言おう、「おっぱい山」だよワッハッハ。

 こういう顕著な形は、かつての火山の周辺土壌が浸食されて準平原化する中、噴火口の下のマグマの通り道(溶岩塔)だけが高温で焼きしめられて残ったというパターンなんだろうけど、まあ早い話が「おっぱい山」なわけだよウッシッシ。

 調べてみるとこの山は古くから信仰対象として崇められ、現在は麓の「自然観察の森」とともに仙台市民に親しまれている山であるらしく、仙台市太白区はこの太白山から区名を採用しているようだが、ようするに「おっぱい山」なんだってばさムッホッホ。

 ・・・みんな、わかってるよね。面白い文章のためのレトリックだからね。俺は何も一日24時間おっぱいのことばかり考えてるわけではないんだ。天下国家を論じ、世の乱れを憂い、苦しむ人々の境遇に心をはせたうえで、余った時間でちょっとだけおっぱいのことを考えている、そんなまっとうな善人なんだ。

 いずれにせよ男として生まれた以上、おっぱいに登らないわけにはいくまい。
 というわけで仙台駅前から郊外住宅地をうねうね走る路線バスに小一時間も揺られ、「公営アパート前」というバス停に降り立った。

 
(左)東北自動車道の西側の赤い十字のところ  (右)公営アパート前バス停の近くから

 この山の周辺は緩やかに起伏する丘陵地で、かなり宅地開発が進んでいる。が公共交通は乗り心地の悪い路線バスだけなので、あまり便利とは言えないな。

 バス停から前方へ坂を下りてゆくと、三角形の交差点からこの山が見える。でもここはあえて山に背を向け、さらに下って高速道路の下をくぐると「自然観察の森」の入り口がある。

 
(左)自然観察の森の案内板  (右)山道の入り口には「熊出没注意」の看板あり

 園内はよく整備され、この日は閉まってたけどビジターセンターもある。太白山方面へつながる道は3〜4本あってどこを通ってもいいようだが、とりあえずいちばん奥の「太白の道」を歩いていった。

 
(左)新緑に彩られた園内  (右)コナラとクリの新緑がまぶしい「クワガタの森」

 ちょうど芽吹きの季節。萌黄色にうっすら染まった雑木林の美しいことといったらないな。夢の世界のようだ。
 さらに進むと尾根が高くなり、植林が出てくる。

 
(左)おや? 前方に動物が・・・クマか!?  (右)カモシカだった

 道はよく手入れされた杉林へ

 この道からは太白山はほとんど見えない。他のルートとの合流点で「自然観察の森」は終わりらしいが、そこから太白山方面へ向かうにつれ微妙に下り道となる。

 突然、神社の鳥居と参道が現れた。V字ターンするかたちで、この神社へと登ってゆく。案内板によるとこれは生出森(おいでもり)八幡神社。
 この山はもとは「生出森」と呼ばれていたらしい。古代のイワクラ信仰(巨岩の裂け目から地神が出入りするとの信仰)を感じさせる名称だ。
 だが東日本大震災によるものか、神社の参道は崩壊していた。

 
(左)参道は崩壊して立ち入り禁止  (右)本殿横の通路も崩壊

 
(左)崩壊地から拝殿と本殿を仰ぐ  (右)本殿背後から見た下の神楽殿と、ころげ落ちたような巨石

 ところで太白山という山は朝鮮半島にもある。金星が地上に落ちて山になったとの伝説があり、日本の白山信仰のルーツとされる。この仙台の太白山もその信仰なのかと思ったが、生出森八幡神社の説明板にはそのようなことは書かれていなかった。
 おそらく、もともとは生出森のイワクラ信仰があり、そこへ太白山信仰の行者が入って太白山と名付け、さらにのちに八幡信仰が入って八幡神社となったものだろう。日本の神社はそんなふうに、その時々の流行の神様にすげ替えられることが往々にしてある。

 それはともかく、この神社から道はいきなり岩だらけの急斜面となる。いよいよ乳房部分にさしかかったんだな。

 
(左)いきなりの急傾斜  (右)木の根が石を抱いて山体の崩壊を防いでいる

 
(左)岩盤の登りとなる  (右)稜線に出た

 岩ゴロゴロの急斜面から岩盤の斜面になるが、人気の山らしく鎖がしっかりと設置されていて、さして苦もなく登ってゆける。
 この山は完全な円錐形ではなく北東側に1本だけ小さな尾根が伸びており、そこへ到達すると傾斜はやや緩くなる。ここにもうるさいほど鎖とロープが設置されている。

 
(左)岩間のあちこちに咲いているスミレ  (右)山頂だ

 小さな山なので、きつい登りもすぐに終わる。金属製の鳥居をくぐると頂上だ。
 山頂には貴船神社の祠があった。ということは、ここで雨乞いの神事が行われたわけね。

 
(左)山頂  (右)貴船神社

 バス停からどれくらいだったかな? 1時間もかかってない。生出森八幡神社からは15分くらいか。
 山頂は木立に囲まれているが、東西に眺望がある。仙台市街の眺めを期待したけど、この日はあいにく雨もパラつく微妙な天気だったので、イマイチよく見えなくて残念だ。
 天気が良ければ海まで見えるだろう。

 
(左)仙台市街地方面  (右)拡大、うっすらとビル群が見える

 
(左)反対側  (右)雪をかぶった奥羽山脈の山がうっすら見える

 おやつを食べたり写真を撮ったりして40分くらい滞在し、来た道を戻る。生出森八幡の下に近道あり。
 自然観察の森に入ってからは、「みはらしの道」と名付けられた乾燥した尾根道を歩いた。でも周囲の樹木が茂り、たいした見晴らしはなかった。

 
(左)みはらしの道から太白山を振り返る  (右)公営アパート付近へ戻ってきた

 青い線が歩いたルート。上が往路、下が復路

 太古の謎を秘めたおっぱい、いや母なる太白山は、2時間もあればゆっくり楽しめる山だ。運が良ければカモシカにも会えるしね。
 仙台の人はみなこの山を愛しているらしい。当然だろう。われら哺乳類はおっぱいを愛するよう宿命づけられている。  (登山日:2013.4.30)

宮城交通バスは、仙台駅前7番のりばから「山田自由ヶ丘」行き、1時間に1〜2本あり。公営アパート前まで40分くらいはかかる。450円。
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