ふしぎ山
不動岩 ふどうがん
熊本県山鹿市、388.5m


 熊本市から北、国道3号線を山鹿に向けて車で40分ほど走ると、広々した菊池平野の正面に異様な岩が見えてくる。

 右のほうのの位置

 国道から外れて適当に道を探しながらどんどん近づいてゆくと、山の中腹から山頂にかけて、大きな3つの岩が天に向かって突っ立っていることがわかってくる。
 それが不動岩だ。明らかに独立した一つの山だが、岩のインパクトが大きすぎて、岩に名前がついているのに山の名前がない。山自体が不動岩なのだ、としか了解のしようがない。

 中でも一番手前のがなにやらすごい。その直下まで車で行けるらしいので、ミカン山にジグザグにつけられた車道をうねうねと登ってゆく。あたりはカラスだらけ。
 上るに連れて、岩たちの異様な姿が眼前に迫ってくる。何なんだよ、これ!

 
(左)ミカン畑から見上げる。左から前不動、中不動、後不動   (右)中不動には細長い岩が付属して屹立

 前不動の直下で車道は終わり、展望台が設けられている。岩の下には不動明王が祭られている。
 のしかかってくるように聳える前不動は礫岩でできており、高さ約80m、根回りが約100mなんだと。大自然の驚異です。

 
(左)前不動の直下   (右)そこからの眺め

 
(左)不動明王を祭った神社   (右)真っ赤に燃えております

 前不動の右横に、中不動・後不動へと続く山道がある。「後不動まで30分」とあるので行ってみる。
 急坂を少し登ると、左手に脇道がある。そこを登ってみると、前不動の真後ろに出た。振り返ると、奇怪な姿の中不動が立ち塞がる。いやはや、青筋まで立てて・・・。

 
(左)前不動を背後から   (右)中不動、すごい勃起っぷり・・・いや、「かぶと虫」ということにしときましょうか

 元の道に戻ってさらに急坂を登ると、再び左に脇道、今度は「← I 展望台へ」と矢印の書かれた立て札が立っている。「 I 」って何や?
 とにかく行ってみると、大きな岩場を登って見晴らしのいいところに出た。眼下に前不動と、中不動のチンポコ、もとい、かぶと虫のツノが並んで見える。
 そうか、ここは中不動の右半分、かぶと虫の背中のてっぺんなわけか。ということは、「 I 」って、中不動のチンポコ、もとい、かぶと虫のツノのことを指してるのか?

 そして背後を振り返ると、だいぶ離れたところに後不動が見える。が・・・おいー! 後不動って、モロにオッパイ、しかも乳首まであるじゃねえか!

 
(左) I 展望台から、I の背面と前不動の背面   (右) I 展望台から見た後不動

 いったいどうなってるんやこの山は、と呆れ返っていると、どこからか「ヤッホー!」と声がする。
 ヤッホー? うそぉ、死語でせう? 今どき子どもでも言わないが、これは大人の声だ。
 2005年、まぎれもなく大の大人が、山で「ヤッホー!」と叫んでいる!
 声のするほうを見てみると、後不動のオッパイの先端で、一人の男性が俺に向かって嬉しそうに両手を振っている。

 お、俺か!? 俺に向かって発射されたリアル・ヤッホーだったのか!

 感動した。こんなところでリアル・ヤッホーの洗礼を受けるとは。せっかくなので俺も大きく手を振り返しておいた。

 再び元の道へ戻ると、またもや分かれ道。今度は「後不動→」の矢印とは別に「挑戦コース→」という矢印の立て札も立っている。挑戦コースって何よ。興味を引かれたが、どこへ出るのかわからない。とりあえず「後不動」のほうへ進む。
 道はしばらく植林の中を進み、後不動の巨岩の下を通って、南へ大きく回りこんでゆく。汗をかきかき谷の源頭部を詰めて稜線に出たら、また分かれ道。右へ行くと「蒲生池」、左は「TV展望台」とある。
 「TV展望台」? またわけのわからんもんが出た。お前はアルファベット大好き人間か。でも後不動はその方角なので、そっちへと進む。
 少し登ると、ボロいベンチのあるピークに出た。後不動のさらに少し後ろの位置で、ここより高い場所は周囲には見当たらない。どうやらここが不動岩山(?)の頂上らしい。でも木立に囲まれて展望なし。

 
(左)後不動の岩盤の下を回り込んでゆく   (右)不動岩山(?)の頂上

 そのまま正面に、後不動方面にゆるやかに下る道があるのでそこを進む。すぐに岩場が現われ、ピークに達するが・・・なんやこれ、この岩?

 今度はウンチかよ、まったく

 ウンチ岩を巻いて細い岩稜を進むと、次の岩のピークが現われる。このあたりが後不動なんだろうが、さらに進むとまた岩のピーク。こいつがてっぺんかな。
 よじ登ると、眼下に前不動・中不動がすっきりと見下ろせた。ははーんなるほど、ここがさっきのヤッホーポイントだな。俺が「ヤッホー」に答えて手を振った中不動の背中との間には、空間しか存在しない。たしかに、あそこに人を見つけたら声をかけたくなるわな。

  これが後不動のチクビかな


 
(左)前不動と中不動( I 展望台、右端)が見えた   (右)来た道を振り返る。右奥の小高い場所が頂上

 このあたりの岩稜はけっこうスリルがあって楽しい。さらに進むと、今度は角ばった岩のピークが現われた。
 上に乗ると、ここからの眺めがいちばん視野が広そう。こいつが後不動の左側チクビだな、きっと。角張ってるし、これがTV展望台なのかも。
 眺めを堪能して、前方に続くルートを下りようとしたら、けっこう危ない岩場が1ヵ所ある。垂直の壁面で、靴裏のキャパシティぎりぎりの足がかりから次の足がかりへ、岩の裂け目をまたいで瞬間的な体重移動が要求される。つかめる枝や根もなく、下は断崖。バランスをちょっとでも崩すと奈落の底だ。
 わかったぞ、さっきの「挑戦コース」を進んだら、下からここに直接出るわけだな。

 
(左)最後の岩から菊池平野を一望   (右)これがTV展望台か・・・中央あたりを下りるの、マジ危険

 ヤッホーの人もきっとここを降りたのだろうし、俺も降りよう。
 危険な岩場を切り抜けると、今度はチムニー状の岩の裂け目を、錆びた鎖にすがって直下降することになる。傾斜角は70度くらい、しかも長い。足がかりは少なく、ここを登るのは確かに挑戦だ。
 11枚目の写真では、後不動の左側乳房の四角いチクビがたぶんTV展望台で、その左に乳房の下までザックリと痛々しい切れ込みがあるのが見える。ここを鎖で下ることになる。
 軍手を持ってくるべきだったなあ。

 さびた鎖に頼って数十メートルの急降下

 ここを過ぎればあとは樹林帯で、まもなく元の「挑戦コース→」の立て看板の場所に出る。挑戦コースは登りで使うほうが、キツイけど安全だろう。

 と、不動岩はチンポコに始まってチクビやウンチを命がけで楽しませてくれる、盛りだくさんなふしぎ山だった。  (05.12.14)
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