ふしぎ山
鬼ヶ城(鎧岩) おにがじょう
岡山県笠岡市白石島、128m



 瀬戸内海は備讃瀬戸の西端、笠岡の沖合いの白石島というところに、天然記念物のふしぎな岩があるっちゅー話。
 ということで笠岡港から高速艇に乗り込んだ。

 
(左)笠岡諸島     (右)白石島(赤線は歩いたルート)

 20分ほどで白石島に到着。船のきっぷ売り場で島の案内パンフをもらった。

 目の前に、島の西部を南北に連なるギザギザの山々が並んでいる。目的の鎧岩という岩は、主脈から東へ派生する尾根先端の「鬼ヶ城」と呼ばれる山の山頂部にあるらしい。岡山県の本土には鬼ノ城(きのじょう)という桃太郎伝説の山があるけど、ここも関係あんのかな?

 でも鬼ヶ城だけでなく主脈の山々も、山頂部にいちいち妙な石を乗せていたりしておもしろそう。だから、これを縦走しながら途中で鎧岩に立ち寄ることにした。

 白石島の港から。左端のピークが鎧岩のある鬼ヶ城

 「国際交流ヴィラ」の看板を目印に、島内の狭い路地を抜けてゆく。素朴な島の風情がまったくもって素晴らしい。
 西ノ浦の海水浴場へ抜ける峠に出たら、そこから尾根筋に道がついている。

 
(左)青い看板が目印     (右)素敵な路地

 道は偽木階段でよく整備され、歩きやすい。六甲山と同様の風化した花崗岩の尾根道だ。
 案内図によると、尾根筋の最初のポイントに「はと石(大)」とある。数分の登りで、それらしき大岩が見えてきた。

 
(左)あれが「はと石(大)」かな     (右)振り返るとこんな道

 
(左)はと石(大)は高さ3m、幅4mほど     (右)ステップが彫られている


はと石(大)の上から、来た方角を見る。右の湾が港、左の砂浜が西ノ浦海水浴場

 南側の下には石の上に石仏が乗っている

 この石は、南の谷にある開龍寺の奥の院に位置づけられているようで、下の寺から直接登ってくるルートがある。その道沿いにミニ八十八カ所が設けられているようだ。はと石(小)もその途中にあるのかな?

 行く手の山頂に、まっ平らな面をこちらに向けた変な岩が乗っている。案内図によると「大玉岩」。

 
(左)行く手は岩だらけ、そして左の山の頂に・・・     (右)なんじゃありゃ?

 
(左)桜が咲き始めている     (右)ヤマツツジも咲いている

 尾根は広く快適で、木々もまだ葉を茂らせていないので、道全体が展望台状態だ。途中、開龍寺や海水浴場へ下る道が右に左に分岐する。
 ゆっくり登って、登り口から30分ほどで高山展望台(150m)に到着した。国土地理院の地図では応神山となっている。
 ここで一気に西側の海が視界に飛び込んで、360度の展望が広がった。

 
(左)島々を抜けてゆく船     (右)北西に福山の工業地帯が見える

 
(左)これから進む道。左側のピークに大玉岩     (右)西側斜面は切り立った崖になっている

 南は、この先の道が一望のもとだ。よく整備されているようで、まるで万里の長城のように尾根にくっきりと続いている。
 ここから岩がゴロゴロした尾根をいったん下り、登りなおして10分かからずに大玉岩のピークに着いた。

 
(左)途中にあった、地層の浮き出た岩     (右)積んだような岩

 
(左)出ました大玉岩、でも平たくないが・・・     (右)鼻みたいなのがついてるぞ

 
(左)おっと、こっちの面がまっ平だ     (右)平らな面を見上げる

 
(左)この鼻が気になる     (右)大玉岩の下の神様

 大玉岩の横の岩でのんびりとパンを食い、寝ころんで日光浴をしていたら、ちょっと寝てしまった。風はひんやりしているが春の日差しは暖かくて、ぽっかりこぽっかりこだ。
 幸せにひたりながら30分以上だらだらした。

 いったん下って、次のピークは東側を巻いて通過する。尾根筋はずっと展望台状態だったが、この巻き道部分だけが樹林の中になる。
 少し離れて見ると、巻いたピークの山頂には切れ目を入れたトーフみたいなおもしろい岩が乗っている。案内パンフの地図には「なべかろう」と書かれている。意味はわからん。

 なべかろう付近から大玉岩を振り返る

 その次のピークは、鎧岩のある鬼ヶ城へと続く支尾根の分岐点になっている。このあたり、植栽された桜のつぼみがすずなりに膨らんで開花寸前。あと1週間ほどしたら一面の桜山になるだろう。
 それを5分も歩くと、鬼ヶ城の山頂付近に到達した。

 
(左)鬼ヶ城山頂、岩だらけ     (右)この岩の上だ


鬼ヶ城から見下ろす港と集落

 山頂の岩の上も当然のごとく360度展望だ。
 白石島の中心集落と港とが箱庭のように見える。南には白石島最高峰の立石山と、その脇に隣の北木島が見えている。西にはここまで歩いて来た主脈が並んでいる。

 
(左)右から高山展望台、大玉石、なべかろう、の各ピーク     (右)鎧岩を示す標識

 ところで国の天然記念物という鎧岩はどこにあるんだろう。
 麓へ続く道を少し下ったところに「鎧岩→」の標識があり、こんな岩壁が現れた。

 
(左)鎧岩     (右)碁盤目のように四角く割れてはがれている

 高さ8〜10mくらいだろうか。花崗岩を貫いて噴出したアプライト岩脈で、垂直の花崗岩の表面に15cmくらいの厚みで貼り付いている。これが鎧に似てるというわけだが、たしかにきっちりと四角い割れ方がおもしろい。こんなの見たことがないな。

 ここから港方面へ下りていけるが、最高峰の立石山へもしっかりとした道が見えるので、そっちへまわっていくことにした。
 主稜線の分岐点に戻り、南のコルへいったん下る。

 
(左)分岐点からの立石山     (右)分岐点から下る途中の番兵みたいな石

 コルは東の集落から西の海岸へ抜ける峠になっていて、東側に竹林が広がっている。
 そこからの登りなおしはこの日いちばんの面白いコースだった。岩ゴロゴロの隙間を縫うルートは石を積んだステップも適度に不安定で、六甲山のロックガーデンみたいな感じで楽しめる。

 
(左)立石山の頂上部     (右)大きな岩を縫って登る

 
(左)おにぎりみたいな岩に石製の祠がある     (右)祠と海

 
(左)浮いた三角岩と途中でずれた岩     (右)岩の路地を曲がって・・・

 
(左)立石山頂に到着、168m     (右)立石山頂から見た鬼ヶ城

 
(左)ここから南にはこの木がたくさん植栽されている     (右)たぶん南米原産のマメ科植物


立石山頂からは南隣の北木島の全景が見えた

 さて、あとは下るだけだ。立石山からの下山路は東へ向かう。
 少し下ると、そのまま港の方面へ下る道と、南海岸の「鳥の口」というところへ下る道とに分かれる。鳥の口へ下りようと思ったが、その前に、正面に見えている気になる岩場へも行ってみた。

 
(左)あの岩のカタマリは何だ?     (右)一番大きいのを裏から見たら・・・ウラスジがありました

 しかし標高100m台でこれだけ岩と遊べる山もそうないだろうね。
 あとは一気に鳥の口へ下りた。

 
(左)下の砂浜が鳥の口     (右)道沿いにこんな浮き岩もある

 
(左)森の中から岩がニョキニョキ生える変な風景     (右)鳥の口の砂浜

 立石山周辺はややスリルもあるが、全行程を通じて展望最高、ハイキングコースとしてよく整備されていた。
 タッタカ歩いたらたぶん1時間ほどで縦走できてしまうだろう。そこを3時間くらいかけて、昼寝したり写真を撮りまくったりしながら、じっくりと楽しんだ。

 港のほうへ戻る道から見上げる鬼ヶ城は、まさにツノを生やした鬼のようだ。さっきはあのツノのてっぺんからこっちを見下ろしていた。
 その雄姿をバックに、ソラマメや桜の花などを何枚も写真に収めた。

 鳥の口から港周辺へ戻る途中の道からの鬼ヶ城



 次の船まで時間があったので、開龍寺にも行ってみた。弘法大師の寺だが、のしかかる岩盤の下に大師堂があって、まさに石の島の寺だ。
 そのあと西ノ浦海水浴場に出て、1軒だけ開いていた食堂「さんちゃん」でカレーうどんを食い、ビールを飲みながら船の時間を待った。

 
(左)開龍寺大師堂    (右)西ノ浦の浜べ


 春の日差しの中、小さな島で岩とたわむれた心地よい一日だった。 (登:09.3.26)
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