ふしぎ山
竹山 たけやま
鹿児島県揖宿郡山川町、202m

 思い出の山である。
 「南薩子連れ狼」では、この奇妙な姿をした山を目印に、息子の丘と長い道のりを歩き通した。丘はこれを「ヒトコブラクダ山」と呼んでいた。
 あれからもう3年か。登らなかったこの山のことが、ずっと気になっていた。

 竹山はの位置にある

 それにしても不思議な山である。ペッタンコのシラス台地に、突然ニューッと現われた謎の巨大生物。その体は大きく二つの部分に分かれており、頭部の岩塔(西側)は標高202m、胴体部分が203.8m。見る角度によって印象が大きく異なる点も怪しい。
 
 こいつに再び会いに来た。薩摩半島の南端で、朝から心臓が高鳴っている。

 前回は西の開聞岳から歩いたが、今回は北東の山川港方面から車で近づく。こっちからは「スヌーピー」と呼ばれているらしい。おー、ついに見えたぞ。久しぶりだなあ、元気だったかい? 
 さらに東西に長い山の北側を走り、真ん中あたりに到達すると、竹山神社の鳥居が現われる。

 
(左)スヌーピーが犬小屋の上で寝ているわけね   (右)竹山神社の参道

 参道を進むと、山の麓に赤鳥居があり、そこから森が始まっている。
 鳥居の横に「ソテツ自生地」の看板がある。それによると、ここに生えているソテツは日本における自生の北限地の一つであり、国の特別天然記念物に指定されていて、霧島屋久国立公園の第一種特別地域にも指定されている、とのこと。
 第一種特別地域っちゅーことは、その貴重さ有難さが第一級品ということですな。

 
(左)神社入口の鳥居   (右)拝殿

 鳥居をくぐって少し行くと拝殿がある。戦時中は闘争心を煽るために「武山神社」と改称されたらしい。屋根の背後にはこの山の頭部岩峰が聳え立っている。
 さらに亜熱帯性の照葉樹の茂る中を、よく整備された道が続いている。道端には冬だというのにツワブキやアザミなどが華やかに咲いている。これを数分登ると、頭部と腹部との間の最低鞍部に出る。
 とたんに暖かい日差しが降り注ぎ、東シナ海の大海原が眼前に広がる。おおっ、山の南側は別世界だ! 山の北と南で、これほど気候が違うとはね。
 そこからさらに頭部に向けて、ササの中の尾根道が続いている。

 
(左)拝殿から頭と胴体の鞍部に向けて続く道   (右)鞍部から頭に向かう道

 
(左)南側は大海原   (右)頭の部分が近づいてくる。右端の緑の濃いところに祠がある

 いやー、この道は日当たりもいいし眺めもいいし、夏は暑いだろうが今は最高だな。西には海に突き出す長崎鼻と、丘と登った日本百名山の開聞岳が見える。なんともいえない開放感と南国ムード。ここに住みたいくらいだ。
 進むにつれ、頭部岩塔にへばりつくように生えるソテツ群落がよく見えるようになる。これはまたエライとこに生き残っているものだ。こんなところしか安住の土地がなかったとはソテツも苦労したな。

 山道はさらに右へ回り込みながら続き、その終点には黒塗りの社が鎮座している。おもに海の航行安全を祈願する神社らしい。塗り直されて間がないようで、少しペンキのにおいがした。

 
(左)振り返ると胴体部分が連なる   (右)黒塗りの祠には日の丸が掲げられている

 
(左)長崎鼻と開聞岳を望む   (右)断崖に自生するソテツ群落

 この先は断崖絶壁となる。北へ回り込めば素手でもなんとか登れそうな気がしないでもないが、そうすると貴重なソテツ群落を踏み荒らすことになるだろう。必死で生きるソテツたちに敬意を表して、そういうことはやめておくのが正解。
 地図で確認すると、黒塗り社で標高110〜120mくらい。頭部岩塔の約半分まで登ったことになる。

 そのあとは、すぐ南の海岸にある砂蒸し温泉で超極楽を堪能した。これも2年半ぶり、もう言うことなし。いや、まじで俺はこのあたりに住みたいね。

 
(左)西側の畑から   (右)砂蒸し温泉の近くからは、ポチャンと湯に浸かってるような小島(俣川洲)が見える

 
(左)北西から   (右)もう少し北側に回るとこうなる。生きてるとしか思えない

 どっから見ても不思議で、愛らしく、いつもおそばに竹山ちゃん。というわけで俺はこの山を愛している。I love 竹山。   (05.12.11)
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