チープに極楽。生きててよかった! |
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【涙の廃業】大阪市の激渋銭湯 (2007年以前) |
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日光温泉 ★ (鶴見区)2007年11月廃業 鶴橋温泉 (生野区)2007年9月廃業 玉水湯 (大正区)2007年廃業 金泉湯 (西淀川区)2007年廃業 文明湯 ★(阿倍野区)2006年廃業 千鳥湯 ★(阿倍野区)2006年12月廃業 都湯 (東住吉区)2006年廃業 生澤温泉 ★(生野区)2006年廃業 常盤温泉 ★(東成区)2005年11月廃業 双葉温泉 ★(淀川区)2004年末廃業 清谷湯 ★(西区)2004年8月廃業 2008年以降の廃業銭湯はこちら |
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営業中の大阪市の激渋銭湯 | |||
日光温泉★
JR学研都市線の放出(はなてん)駅から北西に徒歩5〜6分。見るからにこじんまりとまとまった、でもギュッと味わいの詰まったようなレトロモダンな銭湯が現れる。 銭湯組合のホームページには掲載されていないから、組合非加盟なのだろうか。 暖簾をくぐると年季の入った木の空間だが・・・おおっ、意表をついてこんなタイル絵がお出迎えだ。10cm角40枚分。 スッキリいい感じ (左)銭湯のタイル絵としては孔雀は初めて見た (右)中心部拡大 木の戸をなめらかに開けると、ここもまたさわやかな脱衣場。漢数字が浮き彫りにされた木のロッカーはヒノキ一枚板、木目が美しい。小さい庭から便所へのアプローチも、よく手入れされた寺のような風情。シンプルかつ、すばらしい。 浴室もコンパクト。男女仕切り側に主浴槽と、浅い副浴槽がならぶ。全体に新しいタイルで改装されているが、湯船のヘリにはどっしりした古い石が使われている。 このへり部分の石、カマボコ状に丸みを帯びているのだが、これまで見た中で最も丸い。断面は完全に半円形だろう。 ザブンと浸かると、この丸みの上を湯が溢れてザア〜っ。ここに頭を乗せて体を浮かべ、我仙境に至る。 仕切り壁の給水穴には、ゲージツ家が作ったような不思議な粘土製オブジェが取り付けられている。 すみずみまで磨き上げられた浴室といい、木のロッカーといい孔雀といい、美的感覚に満ち溢れた芸術的小銭湯だ。 (2004.3.6) コンパクト&ビューチフル |
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鶴橋温泉
焼肉とキムチの匂いムンムンのコリアタウン。鶴橋駅から南東へ、迷路のようなアーケード街を抜けて鶴橋本通りをちょっと西へ外れたところにある。 |
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玉水湯
三光湯の前をそのまま通り過ぎ、大通りの1本手前の道を右へ曲がってすぐ。1〜2分しか離れていない。 こちらはこじーんまりした建物だが、なんといってもこの個性的な味わい深い外観。かたちといい色といい、大阪で最も不思議な外観のレトロ銭湯かもね。文字の消えかかった大きな白看板がなければもっといいんだが。 それにしても大正駅周辺は個性的な古銭湯が密集しているなー。 暖簾をくぐると石畳、正面に石のカエルと、きれいな花のタイル絵がスッキリとお出迎え。これは好印象だなあ。 脱衣場はさほどの古さはなく、まあ普通の感じ。 浴室は茶系の渋めのタイルが多用されている。奥に深・浅ジェットの浴槽があり、手前部分は両側カラン&島カランという、大阪では少し珍しいパターン。入口すみにかかり水槽がある。 おばちゃんがマメに浴室内を片づけているのが印象に残った。 (2004.2.12) |
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金泉湯
つましいたたずまいのわりに、何度か意表を突いてくるニクイ銭湯だ。 最寄り駅は阪神西大阪線の出来島駅。中小工場の混在する住宅地に、控え目に現れる。入口から下足室は木造り・格天井で古めかしい感じだが、なぜか女湯側の壁に花屋とのコラボレーションスペースが! こここりゃ何なんだ・・・。 紫の照明に一瞬ドキッ(飛田新地っぽい・・・) 手をかける部分がすっかりチビて丸くなった木の戸をなめらかに開けると、高い天井の脱衣室。なかなか広い空間が広がっている。番台には高齢のバアサン。しかしここには下足室のような古き和風の味わいはなく、やや殺風景で、床はビニールカーペット。 脱衣室と浴室の間の流しスペースが妙に広い。壁が一部崩れているが、震災の影響か? 浴室は一人ぼっちの貸切状態だった(4時台)。 開けてビックリ、まずは浴槽の形。前方後円墳というものは知っているが、これは前方後方中央円墳型とでも言おうか。女湯との仕切り側にある円形の主浴槽の前後に、長方形の浅い浴槽がくっついている。こういう配置は初めてだ。 浴槽は古い石造りで、「前方」部は電気風呂。そしてなぜか円形主浴槽のフチには、灰皿のタバコを置くところみたいな窪みが3ヵ所に入っているのがおもしろい。 もう一つの驚きは、このボロっちい銭湯には不釣合いなほど立派な、奥の壁のモザイクタイル絵。縦長の大きなもので、その部分だけ壁が20cmほど奥に入り込んでいて、額縁みたいなタイルで飾られている。 でその絵だが、山の中の巨大な滝を、リュックをしょった男女のきょうだいが眺めている図。そして滝壷のほとりに立て札があり、「せんたくするべからず」と書いてある。 こんな図柄もはじめてだが、モザイクタイル絵に「入浴マナー」を忍び込ませる手法も初めてだ。 あちこちの銭湯に行っているが、それでも初体験のネタは尽きんなぁ。 床も昔ながらの石畳で、時間が止まったような空間。湯がぬるめだったのがちょっと残念だが、あがるまでずっと一人だったので、徹底的にくつろげた。 しかしじっくり見ると、天井の継ぎ目にはめてある資材がはがれていたり、かなりキてる感じだ。 建物的にもちょっとヤバそう。屋根は瓦の上から全体に白い幌をかけてあるので、雨漏りするのだろう。 しかし客の入りや番台のバアサンの年齢を考えても、補修や改装する余力があるかどうか。もしかするともしかするかもしれない・・・。 ともかく、貴重な湯船とモザイクタイル絵のある銭湯、がんばってほしい。 (2003.10.9) |
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文明湯★
古い建物と新しい建物が混在する落ち着いた雰囲気の住宅街に、シャラっと現れる古風な日本建築。周囲の街並みに不思議とマッチしている。 千鳥破風の小屋根の先端、シャープなシャチホコが特徴的だ。ぴちぴち跳ねているよ。 イキがいいぞ 中に入ると、こじんまりした下足室・脱衣室は適度に改装され、外見ほどの古さは感じさせない。が、高い格子天井で回る大きな扇風機はそうとう年季が入っている。浴室入口付近も昔のままの板張りが渋い。 浴室もこじんまりだが明るい印象。昔ながらの石畳の床と石造りの湯船が、じわーっと郷愁をかきたてる。 床は石と石の間に青と白のタイルが市松模様にはめ込まれ、そこに大きな傾斜がつけられている。使った湯が速やかに排水されてゆくさまが小気味よい。 湯舟は男女壁に沿って深浅2槽、浅いほうには電気コーナーや座浴ジェットコーナーが別枠で付随しているから、狭い空間にしては広く感じられる。 おや、深い浴槽の真ん中に何かある。底から鉄の管が水面上まで突き出していて、水面下10センチくらいのところに円盤があり、そこから四方に気泡が噴出している。 壁を見ると、「ヘルスパー 超音波気泡温泉機」と説明が書いてあった。神経痛などへの「医学的効果が証明されています」だと。しかもお湯は「ミネラル湯浴泉」ということだ。 入口側の隅に水鉢あり、これも湯船と同じ石材でがっしりできている。 その他、壁やカランまわりは改装されていて、古さと新しさが微妙に同居している。まさに文明開化的。 古ぼけたところは丁寧に改装・補修され、しかも清掃が行き届いており、こぎれい感に満ちていて居心地がいい。タイルも目地まで白い。管理センスのよさを感じさせられる。 古い伝統的銭湯には年寄りの客が多いものだが、ここは早い時間から小学生の女の子同士や若者グループも来ていて、地域に愛されている印象を受けた。 ただし場所はちょっと説明しにくいところにある。 最寄り駅は・・・地下鉄御堂筋線の昭和町駅、西田辺駅、JR阪和線の南田辺駅、チン電上町線の北畠駅、からそれぞれ等距離くらい。どの駅からも10分弱歩く。このエリアは銭湯がたくさん集中しているが、あびこ筋の昭和町4丁目交差点の2本北の筋を西へ入り、あびこ筋とあべの筋のちょうど中間あたりかな。 同じような通りがいっぱいあるが、煙突を目印に探すべし。 ちょっと住んでみたい町並 |
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千鳥湯★
JR阪和線、南田辺の駅前には「スタンドアサヒ」「笑門」と名居酒屋が2軒ある。 で、この銭湯はその駅の北側踏切から西へ徒歩約5分。酔っ払ってプラプラ〜っといきまっしょい。 玄関上が部屋になった無表情な凸型に間口横断パネルと、やや無骨な印象。だが入口は男女別にナナメについている、大阪では珍しいタイプ。 写真は2ヵ月ほど後に行ったときのもの(臨時休業だった) ナナメ玄関を入ると普通に下足室だが、なかなかのイニシエ風情。 男女それぞれの入口脇に存在感ばりばりのレトロな体重計が置かれている。こんなところでいきなり体重を量るのかと思うと、「乗らないでください」との張り紙。ムードを盛り上げるために置かれているのだな。 古い木製の戸を開けてはいると、古い番台におかみさんが座っている。 脱衣所は格天井ではないが、全体に古き良きオーラが漂う。ケヤキ一枚板・浮き彫り漢数字の最高級ロッカーがデーンと並び、小さな前栽に外便所という典型的な伝統銭湯だ。 なのに、なんと脱衣所中央にパソコンが置かれているぞ。「小学生は高学年になって上手に使えるようになってから使ってね」と書いてある。これは画期的だ! 浴室へ。出ました! 石畳の床、すきまにタイル市松張り。 湯舟は4つあり、変則的な配置で並んでいるのがイニシエ系としては珍しい。中央に深、横手に浅、正面に電気、奥にジェット。 そして、それらが全部ことごとく白っぽい御影石造り。外側の座り段も石。内側の座り段も石・・・ってこの段、底につくまでズドーンといっとるがな。 とても大阪の市街地とは思えん。太古の昔のままの石に埋め尽くされた、しみじみと泣ける空間だ。 どこもよく磨かれていて大変気持ちよろしい。深とジェットはやや熱め、浅と電気はぬるめ。これに水かぶりを加えて3温交互入浴で魂の再生だ。 出入り口横には男女壁をブチ抜く共用の水鉢と、その横に出ました、そのむかし上がり湯に使われた共用湯鉢! 俺はこいつを「ルルドの泉」と呼んでいる。穴の開いたフタと手桶という伝統的宝物もあり。 「ルルドの泉」には本来は熱湯が入っているもののようだが、ここではぬる湯だった。 上がりは飲み物のほかアイスクリームも売っている。 たいへんくつろげる名銭湯だ。 (2006.2.24) |
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都湯
JR阪和線の南田辺駅から東に少し歩くと、田辺を南北に走るちょっとさびれたアーケード商店街に出る。それを南へ歩いて道が少し曲がるあたり、魚屋さんの隣に忽然と現れる。なかなかに情緒満点のレトロな外観。 暖簾の上のステンドグラスがまたいい味を出している。 (左)賑々しく魚の並ぶ店の隣でさりげなく暖簾が揺れる (右)カッコイイ・・・ 内部はさほどの古さはないが、アルミロッカーの鍵はいくつかなくなったのか壊れたのか、強引に昔の丸型錠を取り付けてあって楽しい。 浴室は、湯船スペースがけっこう広々していて、お湯たっぷりな印象。浅い部分が広くなった主浴槽と、普通はジェットが出ている部分からなぜか気泡がブクブクでている2人用の浴槽(ややぬるめ)、そして電気風呂はバスクリン入りで44度くらいと熱め。出入り口横には冷水槽もあり、4種の湯温が楽しめる。 土曜日の午後5時前後に入ったが、出るまで誰もおらず完全貸切だった。いい風呂なのに、もったいないなあ。 ちなみに、南田辺駅東口そばのおでん屋「笑門」は相当イイ。一品モノも豊富で、安いのにどれもこれも全部やたらとうまい。閑散とした商店街でここだけが賑わっている。 (04.1.31) 安くていい店 |
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生澤温泉★
駅から遠いが、たどりついて大満足。 |
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常盤温泉 ★
都心にも近いこんな便利なところに、こんな銭湯があったとは。まったくもって感激せずにはいられない。 地下鉄中央線の緑橋駅、4番出口から出て徒歩1分。中央大通りの1本北の通りにある。 おぉっ、こここれは・・・ちょっとホレボレするじゃありませんか! 瀟洒なプチ・マンションか洋風レストランを思わせる、レトロ感あふれるかわいい建物。かなり古いんだろうけど、しっかり張り込まれたタイルは傷んだ様子もなし。 そして久々遭遇ステンドグラス。まちなみのアクセントとして存在感を放つ、素敵な建築物だ。 (左)玄関破風の形が特徴的 (右)ステンドグラスが三つ並ぶ。暖簾両脇のタイルも渋い 二階窓の装飾も手抜きなく 引き込まれるように中へ。 下足室は一転して和の風情。しっくい壁に白塗り格天井、正面上部が軒下風に下がっていて風情良し。 (左)期待ふくらみまくり (右)この上がりがまちも年季ばりばり 戸を開けたら、これまた年季の入った番台に感じのいいおかみさんが座る。360円を出すと、300円だという。 「え? 安いですね」と言うと、「うちは古いから」とおっしゃる。 素晴らしい。さすが競争の激しい東成界隈、漠然と組合の一律料金でやるだけが能やおまへん。 番台の正面に1本の円柱が天井まで届いている。細かい豆タイルがびっしり張られた珍しいもの。神戸の高浜湯にあったのと似ている。 築年はわからないとのことだが、おそらく戦後すぐくらいではないか。 こじんまりした脱衣所は正調いにしえ派。ロッカーと男女隔壁は合板ものだが、壁面は木の柱にしっくい壁、天井はしっかりした格天井白塗り。プロペラ2機があるが動いていない。 前栽には立派な岩が積み上げられ、植木鉢ぎっしりで緑にあふれている。縁側部分にあしらわれた凹凸のある中華鉢風タイルが、マニア心の琴線をくすぐって来やがるぜ。 浴室入口のサッシ戸は、どっしりとした御影石の石柱に囲まれている。 中へ入ると、出ました石畳。とくに入ったところの石が巨大。スキマは濃青緑と白のタイル市松張りで、ミメ麗しい。 湯舟は男女隔壁沿いの中央に深風呂、奥に浅風呂と電気。ジェットも何もないので、きわめて静か。チャプチャプ、カコーンの聖域だ。 湯舟のフチは床と同じく白御影造り。ついでに周囲の座り段も同じ石でズッシリ重量級、何十年も使い込まれた肌触りだ。カンロクですなあ。 風呂の底はライトグリーンの小さめタイルがびっしり張られている。現代銭湯ではもはや見られない色使いが不思議ムードを醸し出す。 そして注目すべきは奥壁のタイル絵。10cm角タイルを260枚ほども使った立派なもので、独立峰と高原の渓流が油絵タッチで描かれている。山は主峰の周囲にざっくりと氷食地形が見られる。この作者は山好きだな。 さてと、まずは深風呂に首までどっぷり浸かるとしようかい。あー極楽。ややぬるめ、41度台かな。 石のへりに後頭部を置いて、タイル絵やら、四角い湯気抜きやらをぼんやりと見上げる。 カランまわりには豆タイルびっしり。古いけど、使い勝手よく出っ張りや引っ込みのあるデザイン。でも鏡は立って見る位置にある典型的いにしえスタイルだ。 出入り口横に女湯とつながった半円形の水鉢あり。ここで水をかぶっちゃ何度も浸かって絵を眺める。 女湯から「じゅーいち、じゅーにぃ、じゅーさん・・・」とおばちゃんが孫娘に50まで数えてやってる声が聞こえてくる。大阪ならではのメロディつき数え歌、あれです。大阪の人ならわかるよね。 設備は古いが浴室内は明るい。齢を重ねた石やタイルもよく磨かれて清潔に保たれている。大阪の伝統的小銭湯のエッセンスをきれいに守っている感じが好印象。 上がりは飲み物販売あり。庭を見ながらカルピスいきましょう。平日6時前、途切れずにお客が常時数人いた。 こんなお風呂に出会えた、夏の終わりの幸福な夕方。 (2005.9.13) (左)玄関ステンドグラスを内側から (右)帰りにも振り返って見たくなる |
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双葉温泉★
もう泣くしかない、感動の銭湯。 十三から阪急宝塚線で1つ目の三国駅。駅北側の神崎川にかかる三国橋のたもとに出ると、対岸に煙突が見える。神崎川の向こうは豊中市のはずだがなあ、と思って地図を見ると、なぜかこの橋の対岸は小学校くらいの広さ分だけ大阪市になっている。 三国橋を渡って少し行くと、道路からひょっこり引っ込むかたちで、お寺か古い旅館のようなこの銭湯が現れる。10メートルたらずの石畳のアプローチを通って玄関があるという憎い舞台設定。 「この石畳を渡りきるまで息をしちゃダメだよ、千尋」 「うんわかった、ハク」 というささやきが聞こえてきそうだ。 石畳道の両側は庭。それも日本庭園ではなく、ヒマワリなどの季節の草花が無造作に咲き乱れる超素朴な田舎風の庭だ。とても大阪市内とは思えない。 まるでバージニア・リー・バートンの絵本『ちいさいおうち』の日本版だよこりゃ。 草木の向こうに暖簾が揺れる 玄関の小屋根の先端には、どういうわけか相撲取りの鬼瓦(?)がちょこんと乗っていて、こっちを見下ろしている。こんなの見たの初めてだ。 暖簾をくぐると、上がりがまちは板張り。 (左)力士もオダテりゃ屋根に登る (右)板張りの上がりがまち 戸をあけると低い番台があり、広めの脱衣場。おぉ、外観同様のタイムスリップぶりだ。ロッカーだけは新しいが、他はなにもかもが見事なまでに昔のまんま。 格天井では古い扇風機が回り、女湯との仕切り壁にはステンドグラスがはめ込まれ、ロッカー上部にはフスマの袋戸棚。細部にわたるまで、じっくり鑑賞しよう。平成の世の大都会にいるという事実などもはやケシ飛んでいる。 さらに目を引くのは、脱衣場と浴室の間に少し距離があること。よく見ると、別々の建物になっているようで、間に中庭がある。女湯との壁を挟んで岩組みの池があるのだが、残念ながら水は張られていない。 そして、脱衣場から浴室へ向かうこの部分は、少し下り坂になっている。つまり浴室のほうが低い位置にある。 浴室へ近づくと、入口の戸の上部にもステンドグラスがはめ込まれている。しかも中央は日の丸だ。君はこれまでの人生で日の丸のステンドグラスに出会ったことがあるか? そして浴室の中は・・・もうこりゃタイムマシンだな。昭和初期か大正か明治か知らんが、とにかく手つかずの歴史が今ここに生きております。 床は当然の如く石畳。湯船も御影石造りで、中央に深い浴槽、奥に浅い浴槽+ジェット水流2機。やはり石でできた湯の注ぎ口は、ちょっと不思議な円筒形をしている。 壁は白いタイルだが、最上部に一列に貼ってある化粧タイルがなんともイイ。欲しい。 カランは普通に赤いのと青いのが並んでいる。両方を押してちょうどいい湯加減にしようと思ったら、どっちも水が出る。しばらく押していると、両方とも湯になっちゃった(しかもぬるい)。・・・並みの銭湯でコレなら間違いなく減点対象となるわけだが、この奇跡の銭湯ではそんなことは一切気にならない。 浴室の隅にかかり水槽があるが、この水が全然冷たくない。うむ〜、これだけはやはりビシッと冷たいほうがいい。 浴室から出ると・・・脱衣場の中央に巨大な三毛猫が寝そべっている。近づいても耳をピクリと動かすだけだ。 しかしその光景がまた絵になっている。 とまあ感動が引きもきらずに押し寄せる、時間も空間も超越した文化遺産的銭湯。いつまでもこのままで営業し続けてほしいと心から願う。 が、気になるのは駅前の再開発ぶりだ。もしこの場所で営業できなくなったときは、『ちいさいおうち』と同じように、このままそっと台車に乗せて、どこか静かな下町へ移してあげてほしいものだ。 (2003.9.5) 帰りにもう一度しみじみ眺めよう |
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清谷湯★
いやーここも大阪最強クラスのいにしえ銭湯だな。 町工場や倉庫などが混在する下町の街角に、ぽそっと現れる。 屋号は大きく右書きで「湯谷清」・・・心が洗われるような字の並びですなぁ。 暖簾をくぐると、いきなり時空を越えた下足室が現れる。格子天井にすりガラス、そして木製の下駄箱。木札が普通のものより一回り大きい。 感涙の木製下駄箱 丸みを帯びた木の引き戸をなめらかに開けて脱衣場に進むと、こじんまりしたスペースながら、壁にびっちりデデーンと木のロッカーが並ぶ。すごい貫禄だ。 格子天井、番台、庭へのはき出し、便所の戸や小窓に至るまで、木を使った和の匠の技が、郷愁の彼方へと我をいざない賜ふ。古いというだけじゃなくて、美しいのだ。よく手入れされた山寺のような感じ。 女湯側との仕切り壁の上部、よく透かし彫りなどがある部分には、深山を飛ぶ鶴を描いたすりガラス。描いた、というか、ガラスをそういうふうに擦ってある。壁の端の上には立派な神棚がまつられている。 浴室の戸の手前上部には、裸婦を描いたすりガラスの飾り。この擦り絵があまりにも美しい。惚れた。この絵の女性に会うためにここへ通ってもいいな。 服を脱ぎ、「廿五」のロッカーを使わせていただく。 ここで特筆すべきはロッカーの鍵だろう。普通のロッカーの鍵はステンレスの板みたいなやつだが、ここでは黄金色した真鍮の、ちゃんと鍵の形をした鍵(楕円形の手持ち部分に棒状の差し込み部分がついている)が生き残っていて、番号は手持ち部分に刻まれている。いやーこんなの初めて見たよ。 そして浴室へ。床は言わずもがなの石畳である。石と石のスキマに細かいタイルがはめられ、そこを湯が流れるのだが、そのあちこちがことごとく白セメントのパテで補修されている。 奥の壁には、鳳凰のような鳥の、小さなタイル絵が描かれている。 湯船は黒御影石造りで、中央に浅・深の主浴槽、壁際奥にジェットの細長浴槽がある。これらの底のタイルも白パテ補強。そのちょっとざらつく感触が不思議に心地よい。 それにしても浴室全体でこれほど白パテの目立つ風呂も珍しい。しかしパテにはパテなりの味わいがあるということを、ここで知らされた。 出入り口横の隅には水鉢があって、これは女湯につながっている。この槽だけ白パテ補強がなく、新しいもののようだ。 かようなレトロ銭湯でありながらも、地域の馴染み客らがけっこう頻繁に出入りしていた。現役度は高そうだ。愛されているんだなあ。 ちなみに、近くには居酒屋ファンの間では国宝級の濃さとして知られる「白雪温酒場」がある。あがりはやはりここで一杯でしょう。最高です。 白雪温酒場。この店のレトロ度もすごい |
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営業中の大阪市の激渋銭湯 | |||
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