関西の激渋銭湯
チープに極楽。生きててよかった!
東京都【西部】の激渋銭湯
(京浜東北線以西) 
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稲荷湯 (北区)

山の湯 ★(豊島区)

鹿島湯 (練馬区)
豊宏湯 (練馬区)
富士の湯 (練馬区)

熱海湯 (新宿区)

不動浴場 (目黒区)


女塚浴場 ★(大田区)
(廃業)
辰巳湯 (大田区)
(廃業)
東京都【東部】(京浜東北線以東)はこちら多摩地区はこちら
 
稲荷湯

北区滝野川6丁目27-14 →地図
03-3916-0523
【営業時間】14:50~翌01:15
【定休日】水曜


 映画「テルマエロマエ」のロケ地となった有名銭湯にやって来た。じつを言うと俺はまだその映画を見てへんのやけど。
 それはともかく、有名なんだからもっと目立つ場所に堂々と建っているのかと予想したが、思いもかけず狭い路地に面している。
 でもそのほうが俺好みのワクワクだ。

 
(左)渋い路地 (右)右側側面

 東京伝統型の黒瓦に千鳥破風。カッチョええな~。なんと昭和5年に建てられ、空襲を免れて今に残る貴重な建物らしい。
 右側は空き地になっていて、釜場の向かいに燃料の薪が積んであるのが見える。

 
(左)短い暖簾、これが江戸の粋 (右)玄関は厳重に目隠しされている

 暖簾をくぐると、正面に富士山のモザイクタイル画が迎えてくれる。その左右は、のぞき見できないよう念入りに目隠しされている

 靴を脱いで中に入ると、年季の入った木の番台に優しげなご高齢のおかみさんが座る。
「ここって、映画のロケのとこですよね?」といちおう確認すると、「そうですよ」とにこやかな笑顔。
「映画のときはタイルがこれでしたけど、次の年に改装したんです」
 おかみさんはそう言って、飲み物冷蔵庫の上に置かれた映画の写真を示された。その写真では、正面奥の湯船のへりに黒い小さなタイルがびっしりと貼られている。
 が、脱衣場から浴室を眺めると、その部分は一辺が50~60センチもありそうなボード状の黒い石材が貼られている。

 脱衣場は格子の大きな格天井。庭には池と噴水があって小さな鯉が泳いでいる。古い造りながら、どこもかしこもピッカピカ。
 東京の銭湯はどこも清潔度が高いが、この銭湯は殊にその道を突っ走っている感じだ。

 浴室ももちろんピッカピカでこの上なし。
 造りは典型的な東京スタイルで、 奥壁に西伊豆からの富士山ドーン、丸山絵師の絵かな。27年とある。
 湯船はその下に3つ並んでいる。クラシックスタイルだがタイルや設備は適時改装されて古びた様子は皆無。
 左は46度のアッチッチ気泡つき、中は42度のジェットつき、右は38度前後のぬる湯シルキーバブルつき。直球ど真ん中的なラインナップだ。
 手前に島カラン2列、隅に立ちシャワーあり。男女壁に幾何学模様のモダンなタイルが貼られている。

 清い風呂でしっかり洗ってぬくもり、脱衣場に上がる。
 掃き出し窓の外の縁側に椅子が置かれ、ここで牛乳を飲んだ。
 脱衣場の中には新聞も何紙か揃っていてありがたい。

 番台のおかみさんに「左は熱いですね。15秒が限界でした」と言うと、「それはよくがんばられたほうですよ。たいてい7~8秒で限界みたいです」とのこと。

 おかみさんに褒められて嬉しい、路地の奥の優良銭湯だ。
(2016年7月)
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山の湯

豊島区要町1-47-12 →地図
03-3957-2679
【営業時間】 15:30~24:00
【定休日】 月曜
      (祝日の場合は翌日休)


 しとしと肩を濡らす春の雨、傘も持たずに要町。どこをどう進んだのだろう。湿った夜道をぐねぐねとさまようこと10分、15分…説明は無理だ。
 自力での到達も無理と判断し、そのへんの店のおばちゃんに聞いたら、「そこを左に曲がって次を右に曲がったら見えてくる」との教え。

 
あの奥か?

 
(左)看板らしきものが  (右)おぉ!

 一見、突き当りのようだが、矢印のごとく道が右にずれて続いている。この先はさらに細くなる。
 そこへ進むや、忽然と風呂屋の玄関が口を開けていた。

 

 ゾクッ、と音を立てて、首筋の後ろのあたりが時空のゆがみを感知する。
 このまま入ってしまうのも惜しくて、いったん路地を通り抜ける。
 
 
(左)通り過ぎて振り返る  (右)反対側に出ると、銭湯の全体像が闇夜に浮かび上がる

 喉元までこみ上げたこの興奮、どう沈めればいいのか。
 落ち着け俺。とにかく風呂だ。

 
下足スペースも味わい深い

 中へ入ると、おぉ、東京の伝統銭湯だ。格天井ではないけど、高々と伸びるタテ長空間が心地よい。。
 前庭に濡れ縁、木枠の掃き出し引き戸。これですね。
 壁にオリジナルの山の湯ポスターが貼ってある。絵の好きな常連客か地元の学生が描いたものだろうか、愛されている証拠やな。

 雨に濡れたので早く湯に浸かりたい。
 浴室へ入るや、ど真ん中の大きなダルマ型湯船にニコニコ顔で迎えられる。東京にもこんなのがあるとは!
 しかもピカピカや。内側フチの何ヶ所かからジェットが出ている。

 正面には優美な丸山師の富士山ペンキ絵、男女壁には湖水のタイル絵。
 左手にはスチームサウナ室があるが、中は懐かしい草の香が充満している。よく見ると壁に乾燥よもぎが吊るされているではないか。

 カラン類も快調、隅々まで清潔。ウーム・・・アプローチから風呂設備まで、どこまでいっても唸らされる。

 長風呂を堪能して上がり、服を着ながらフト見ると、複雑な動きをするマッサージ器や馬乗りマシーンが脱衣場の一角に置かれている。・・・エ? これ全部無料で使い放題やと!?
 もはや興奮は増すばかり。
 当然のことながら、長風呂から上がってからも長くなった。

 この日、俺は山形から在来線を乗り継いでの東京入り、しかも雨に濡れて、正直くたびれていた。
 山の湯はそれらを完膚なきまでにほぐし切ってくれた。
 東京の風呂代は関西に比べて高いけど、完全に取り返してお釣りが来た。

 なのに、そんな素敵な銭湯へ行く道が説明できない迷路状態とは! 東京おそるべし!
 
(2014.4.10)
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鹿島湯

2016年5月、火災がありました。
現状要確認。


練馬区春日町3-15-6
 →地図
03-3998-3408
【営業時間】 15:30~23:00
【定休日】 月曜日(祝の場合は営業


 都営大江戸線の練馬春日町駅から歩いたらたぶん5分くらい。俺は息子のアパートから歩いて15分やったけど。
 手前にコインランドリーを従え、少し奥まって威風堂々カンロクの伝統建築。雨に黒瓦が光っとるで。

 
(左)素敵です   (右)おっ、露天風呂があるのか

 暖簾くぐれば例によって傘入れのがぶり寄り。

 
(左)せり出しとるで   (右)上見たら古き良き風情

 
床タイル

 中へ入ると番台におやじさんが座っているが、その周囲が仕切られて小部屋のようになっている。そこになぜか熊の木彫り3体。
 脱衣場へ進むと、高い格天井に大黒柱の典型的東京銭湯。広くてのびのび~。

 
(左)立派なり! 折り上げ格天井   (右)その通り!

 浴室もめっちゃ広いで~。水色2段天井でかい。そこに客は俺を入れて3~4人。贅沢なことよのう。
 まず目に留まるのが奥壁。富士山のペンキ絵ではなく、カナディアンロッキーか何かの風景写真が飾られている。
 その下に三つの湯船が並ぶ東京パターンだが、左端が水風呂なのが嬉しいねぇ。中央は浅めの気泡風呂、ビシッと熱めの43度強というところ。右側は座ジェット×2(冷枕つき)。

 洗い場は外側にシャワーつきカランが並び、浴室中央にはシャワーなしの島カランが2列。これ全部埋まったら壮観やろな。
 男女壁には立ちシャワー個人ブースが3つ4つ並んでいる。伝統的な空間に黄緑のパーティションがやや浮いた感じ。

 ところで露天風呂はどこかいな、どこにもそれらしき表示はないぞ。
 と、外側壁の奥にある小さなアルミドアから裸で出ていく人がおるやん。なんも書いてないけど恐る恐る開けてみたら、いきなり岩組の露天風呂になっていた。それならそうと書いといてーや。
 2~3人用の小ぢんまりサイズだが、積んである岩は本格派。目隠しが塀でなく生け垣なのもよい。近所の生活音を感じながらの屋外風呂、いや~これはなかなかの小空間やおまへんか~。
 垣根の隙間から釜場の材木が見えている。薪沸かしなんやね。

 上がって牛乳。気さくなおやじさんによると築60年らしい。どっしり建っとるわ。
 シンプルながら、熱い湯と水風呂の交互入浴、そして落ち着ける露天がナイス。じっくりと湯を楽しめる伝統銭湯だ。 
(2014年11月)

 
なんか安心感
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豊宏湯

練馬区石神井町3丁目14-8
 →地図
03-3996-8650
【営業時間】 15:30~24:00
【定休日】 木曜日


 こんばんは、ゆたかひろしです。じゃなくて、「とよひろゆ」って読むのだろう。たぶん。
 西武池袋線を石神井公園で下りて、都会のオアシス石神井公園へ行く途中。なんか妙な具合に道路が入り乱れて、向き合った中華料理屋が張り合っているような交差点に出る。
 そこで油断してると通り過ぎてしまうが、派手な中華料理屋のスキマのような目立たない路地奥を覗くと・・・。

 
(左)正面中央、よーく見て・・・   (右)ほら!

 
(左)通り過ぎた場合は、振り返ると右の建物!   (右)この路地からも行ける

 
裏へ回ると薪がいっぱい

 正面の左側にコインランドリーがある。そこで洗濯物ができるのを待つ客が、路地奥の風呂屋の暖簾横ベンチでのんびりタバコをふかしているのが見える。

 ふーむ・・・間違いない。この路地は時計の針が逆回転している。一歩また一歩と路地を進むたびに1年また1年と時間をさかのぼり、俺は若返ってゆく。
 暖簾をくぐる頃には、俺の体はやけに軽くなり、すっかり二十歳そこそこの若者になっていた。

 東京の銭湯はとにかく傘立ての存在感が圧倒的だ。ここは玄関スペースの真正面で観音開き状に構えている。
 若者の俺は軽やかに靴を脱ぎ、男湯へと進んだ。

 

 番台は目隠しのためか、店の人と向き合えるスペースはスキマ的。物腰柔らかで上品で優しそうなおかみさんが座っておられる。
 脱衣場はスコーンと高い折り上げ格天井、正面に太い大黒柱ズドーン。おかみさんは「高くしたんです」とおっしゃる。そのため広く感じるけど、脱衣場の中央には島カランがあってスペースにあまり余裕がなく、コンパクト空間とわかる。
 木枠ガラス戸の縁側が2面にあり、その外に便所。東京クラシカルスタイルだ。客は内外あわせて10人くらいいる。

 童貞を捨てたばかりの若者の俺は、誇らしげな気持ちで裸になって浴室へ入った。
 水色に塗られた2段式天井、手前は両サイドカランと島カラン2列、そして奥に湯船が並ぶ。これまた東京オーソドックス式だ。
 そして奥壁には中島絵師による富士山ペンキ絵がある。隅にボンネットバス、これはもしや町田忍さんによるものではないか。女湯は立山の絵らしきようすだ。
 男女壁には湖と浮御堂のモザイクタイル画もある。
 これぞ東京だ、花の都トーキョーだ! 俺は希望に燃える若者らしくフルチンで瞳を輝かせた。

 湯船は深風呂より浅風呂が広い。これも東京スタイル。
 予想通り、浅は激アツ45度近い。深も44度はありそう。それがジェットや気泡で撹拌されてシヌ…。
 俺は若いぶん肌が敏感だったが、若いぶん根性もあるのでがんばった。
 右端に水風呂があるのがありがたい。立ちシャワーもあり。

 タイル類はすべて適度に張り替えられてメンテよく、古そうな銭湯ながら実に気持ちがよい。
 俺は勢いよく背中をタオルでこすった。若者の皮膚はいくらこすってもすぐに再生する。

 若者の俺は、正統派の伝統的東京銭湯をういういしく堪能した。
 湯上りは腰に手を当てて牛乳をグイっと飲む。そして素敵なおかみさんに「ありがとう!」とさわやかに言い、晴れやかな気分で表に出た。

 暖簾を背に、一歩、一歩と遠ざかる。それにともなって俺は元のおじさんへとみるみる戻っていく。
 やがて白髪だらけのダメな中年男に戻った俺は、石神井駅への道をトボトボと歩いて行った。
 なんとも不思議なひとときだった。 
(2014.3.23)
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富士の湯

練馬区三原台1-30-1
 →地図
03-3923-5811
【営業時間】 16:00~23:00
【定休日】 月曜日


 クソ暑い炎天下の東京、石神井駅からだいぶ歩いたぞ。15分くらいか。
 閑静な住宅地を抜けて幹線道路へ出たと思ったら、なにやらお城か大金持ちのお屋敷みたいな建物が現れた。
 まさか銭湯じゃないよね。うん。

 
(左)デカイんだゴツイんだゴージャスなんだ   (右)威風堂々

 なんと、恐ろしいことに銭湯であった…。わしゃもう呆然と立ち尽くしたね。そしてちびった。ちょっとだけ。だって中高年なんだもん。

 
(左)東京的な美意識の権化   (右)獅子の石板レリーフ

 千鳥破風&唐破風の巨大な二階建てが、銭湯の標準サイズを大きく上回っている。デカイだけでなく建物の端々にまで、いわゆる「粋」の美学が完遂されている。
 銭湯の玄関付近にありがちな自販機や選挙ポスター、「おい小池!」などは一切ない。

 
(左)玄関   (右)玄関わきにあった変な石

 中に入ると、番台に穏やかなばあさんがいらっしゃる。
 脱衣場には島ロッカーやベンチ台などがなく、やたら広々としている。脱衣箱は20個しかない。あとは丸かご。
 天井は改装されていて格天井ではなく、さほど高くないのがやや意外だ。大黒柱は石張りになっている。こんなん初めて見た。
 そして何といっても庭が立派! 池があり、縁側からトイレへ行く途中にしばし眺めてしまう。いやぁよいねー。
 男女境の仕切りには磨き丸太ノセ、これは東京の定番ね。

 浴室も広いぞ広い、中央に島カラン1列のみで余裕たっぷりの空間だ。
 両サイドのカラン列、最初はシャワーのある男女壁側に陣取ったけど、反対側を見たらシャワー位置にドバーっと横長の水槽が嵌め込まれ、大きな錦鯉や金魚、タイリクバラタナゴが悠々と泳いでいるではないか! 座る場所を変更だ。
 ウーンこれは楽しい。じつを言うと俺は日本の淡水魚オタクなんよね~。股間をゴシゴシしてる目の前を金魚がヒラヒラって。こいつは値打ちある!

 そのかわり奥壁にはペンキ絵もなく、じみ目のモザイクアートで林が描かれている。
 湯船はその下の深浅2槽のみ。深は気泡、浅はジェット2本。
 え? これだけ大きな銭湯で、これだけ広々してて、これだけゴージャスな庭や水槽を設置しているのに、湯船は二つだけ?
 うーむ。俺は別にいいが、関西ではまず考えられんな…。

 力の入れどころが、東京的「粋」に集中しているということなのかもしれん。何軒入っても銭湯いろいろやのぉ~。 
(2014.8)
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熱海湯

新宿区神楽坂3-6 →地図
03-3260-1053
【営業時間】 15:00~25:00
【定休日】 土曜日


 いつもなぜかしら東京の夜はベロンベロン。千鳥足で知人にヨチヨチついて行ったら、神楽坂のくねくね路地を何度も曲がったあげく、ここへ案内された。
 そして知人は「ここは熱いよ」と言いおいて帰っていった。
 狭い路地の奥、千鳥破風の伝統的銭湯だ。渋いのぉ・・・とりあえず暖簾をくぐる。

 
(左)ちょっとかわった暖簾   (右)磨かれた下駄箱

 
女湯(左写真)、男湯(右写真)それぞれの入口にはカーブのついた目隠しがある

 中に入ると、番台におかみさんが座っている。わりとこじんまりした銭湯ね。
 脱衣所も典型的な伝統系東京銭湯。床はニスで磨かれ、高い平格天井はマス目が大きくて渋い色。男女壁には磨き丸太が乗っている。

 浴室は全面ガラス張りで番台から丸見え、やたらと明るいのがトキオ式。
 そして当然のごとく出ました、正面奥壁に男女ぶち抜きの富士山ペンキ絵、早川師。その下に鯉と金魚の九谷焼タイル絵。定番中の定番だ。

 その下に並ぶ深浅の湯舟は、深いほうが狭くて気泡あり、浅いほうが広くてジェットあり、の約束パターン。
 お湯はたしかに熱い。43度強か、もしかしたら44度あるかも。でもこれでこそ東京銭湯。ビールでふやけた心身にビシッと焼き入れたらんかい。

 見上げれば天井は水色に塗られた2段式、どうしようもなく東京銭湯。
 男女隔壁にもタイル絵がある。雪山と湖の図柄。
 カランまわりは台が広く、湯水の出は極めて良く、下のステンレス溝はたまらなく清潔で、じつに使いやすい。なにもかもが典型的な東京銭湯ストロングスタイル。

 上がりは牛乳などあり。もうじき日付けが変わりそうな時間だけど、相客は5~6人いた。テレビ見ながら他客とだべってくつろいだ。  
(2008.7.27)

 
酔いもだいぶ醒めてきたぞ 
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不動浴場

目黒区下目黒3−22−19 →地図
03-3710-3680
【営業時間】15:30~23:00
【定休日】 金曜日


 暑い日、東京在住の息子と目黒に行った。
 ついでに目黒不動へ寄ったら、本堂手前の冷たい湧水池に水掛け不動さんが立っている。
 不動さんに水をかけると、まるで魔法のようにその周囲だけ気温が数度下がり、スーッと汗がひいた。ありがたさを感じさせられる清水だ。
 いい水が湧く場所が神聖視され、やがて不動が祀られるようになったのだろう。

 そのあと、すぐ近くにあるこの銭湯へ来た。
 堂々たる破風の瓦屋根だが、奔放に伸びた脇の樹木や、真ん中に遠慮なく置かれた自販機らの無造作感が、東京とは思えぬ田舎フレーバーを醸し出している。

 それにしても暖簾が出てないけど、やってるのかな?
 玄関の中を覗くと、そこにも繁茂する植物があり、脚立やバケツ類がそこここに置かれている。

 
(左)庭ではなく玄関 (右)入口手前にもバケツ

 とりあえず靴を脱いで渋い木の戸を開けると、普通に営業中だった。
 番台のおかみさんが開口一番、
「うちは水道水は一切使わず、全部地下水なんです」
 とおっしゃる。だから、もったいないからシャワー出しっぱなしにしないでね、というような諸注意を笑顔とともにおっしゃった。
 明らかによそ者の俺と息子を見て、銭湯初心者と思われたのだろう。それだけ東京では銭湯ビギナーが銭湯へ足を運ぶようになったということなのかもしれない。

「へー、そういやさっきお不動さんに湧き水が出てましたけど……」と俺が言うと、
「そうでしょ、それと同じ流れですよ」と嬉しそうにおっしゃった。
 そいつは楽しみだ。

 脱衣場は高い折り上げ格天井の東京クラシック造り。庭があって鯉が泳ぐ正調銭湯だ。
 玄関ほどではないにせよ何かとものが多いが、コイン洗濯機があったり、棚に漫画が豊富に置かれているあたりに下町フレーバーが漂っている。
 あれ? でも目黒って下町とちゃうよね? どっちかというと山の手のシャレオツエリアのような気がするんだが・・・そこにこんな風呂があるというのがオモロイね。こっちが本来だよなあ。

 浴室も東京標準の水色に塗られた高い2段式天井。奥壁には中島さんの富士山、女湯は立山連峰のようだ。まったくの東京スタンダード。
 風呂は奥に深浅2槽、こちらは東京的な熱湯ではなく適温で心地よい。泡ブクがキショクええのぉ。

 男女壁には動物が配置された九谷焼系のタイル絵(やや色があせてきてる部分あり)が横幅ずーっとはめ込まれているが、立ちシャワーブース3台のレパレート壁で分断されている。

 湯に浸かっては、島カランの冷たい水を浴びまくり。あ~身も心もしびれる。もう俺は人間不動だ……!

 先に上がった息子は、脱衣場でマンガを読みふけっている。俺は牛乳を飲みながら大相撲千秋楽を最後までゆっくりと楽しんだ。
 昔ながらの風情あふれる都会のオアシス。おかみさん、おやじさんの素朴なお人柄もよい。

 (2016年7月)
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女塚浴場 ≪廃業≫

2007年、廃業されたもよう。
レポートは営業当時のものです。


大田区西蒲田1-8-22
03-3753-4630
【営業時間】 15:00~23:30
【定休日】 第1~4月曜


 とにかく黒い。マックロケ。

 JR蒲田駅の西口から工学院通りを北上し、呑川沿いを少し上流に行ったところ。駅から1kmちょっとで、むくり破風の古めかしい伝統建築銭湯が現れる。
 暖簾をくぐると、正面に巨大な傘入れがデーン。はじめて見るタイプだ。
 上がりがまちから引き戸まで、木がニス仕上げでピッカピカに磨かれているのにまず衝撃を受ける。こういう美しさは関西にはないよなぁ。

 
玄関スペース。右は傘入れ、左は下駄箱

 脱衣場もニス仕上げピッカピカ。おぉ、広いなあ。
 ドォーンと高い折り上げ格天井。男女にまたがって浴室との境にチュドーンとぶっとい大黒柱。丸太を乗せた男女仕切り壁も初めて見た。番台の雲状の彫り込みも渋い。木の長いす、庭の風情もよろすい。美しい空間だ。
 脱衣場と浴室との間は全面ガラス張りで、すべてお見通し。「てやんでぇ粋なネエチャン立小便とくらぁ」的お江戸八百八町の精神が炸裂している。


 
長椅子に残された1本の義足がさまざまな人生を物語る。これぞ銭湯

 浴室へ。ズガガーンと高い2段式天井、めっぽう広くて明るい。
 浴槽は奥にまとまっていて、手前部分は広々と洗い場。カランが両サイドに並び、さらに中央1列に島カラン。どこもかしこもピッカピカ。カラン下の排水溝はステンレス、これも初めて見た。
 広くとられた窓も枠は古い木のままだ。これだけの古さでこの清潔さ。さぞや管理が大変だろう。まったくもってすばらしい。

 そしてペンキ絵は、浴槽上の壁に男女ぶち抜きで描かれている。男湯側は海岸風景、それに連なって女湯側はデデーンと富士山。
 男女仕切り壁には、白鳥のモザイクタイル絵。これもなかなか。

 奥の浴槽へ。右側は深浅2槽の透明な湯、そして左に黒湯浴槽。
 笑ったね。何この黒湯、マックロケ。透明度は2cmないぞ。辰巳温泉以上の黒さだな。
 堆積物の腐食層から湧いてくるから黒いということらしいが、それにしてもこれ以上黒い液体は墨汁かイカスミくらいしか思い浮かばない。「てやんでぇ黒湯が恐くて夜道が歩けるかってんだチキショーメ」的大江戸捜査網の精神が凝集されている。

 なんかやたら熱そうだが、とりあえず入ってみる。むおっ、かなり熱いけど湯ざわりなめらかだ。下は何も見えないがけっこう深いな。
 でも20秒ほど経つと、膝から下がチクチクチクーと痛くなってくる。むっ、ヤバイ、急いで出なければ! ゆっくりそーっと体を引き抜く。あちあちあち・・・。
 浴槽の奥に温度計が設置されている。
 「51度」だと。
 ははは・・・もー無茶苦茶。ヤケドするっちゅうねん。実際には47~48度くらいと思われるが、「てやんでえ風呂がぬるけりゃ風邪ひいちまうってんだスシ食いねェ」的大江戸きんつば手作り無添加の精神が貫徹されている。

 右側の普通の湯は45度を指していた。黒湯のあとに入ると全然熱く感じない。浅いほうが広くなっていて、2連ジェットつき。
 しかしこれだけ熱い湯に入ると、風呂に入った~という感触がビシッと体に刻まれるな。こんなのに毎日入ってたら、関西のぬるい風呂なんて入った気がしないかも。
 でもこんなに湯が熱いのに、水風呂はおろか水鉢や水シャワーすらないのはどういうわけだ。仕方ないのでケロリン東京サイズ(関西のより深い)にカランの水を溜めては体にかけ、何度か湯に浸かる。

 広い空間に客は3~4人。あまりみんな湯舟には浸かっていないような。イレズミ父さんに連れられて子どももいたが、もちろん湯舟には入れない。
 熱い湯の気持ちよさはわかるが、これじゃ一部の熱湯ファン以外にはキツイだろう。
 せめて浅いほうをぬるくし、隅に小さな水風呂でも設置したら完璧なのに・・・というのは野暮な関西人の考えなのか? 「てやんでぇ三代やってんだ」と言われておしまいか。
 
(2004.5.14)

 
とりつくシマもなき美意識の権化
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辰巳湯 ≪廃業≫

2012年10月、廃業されました。
(むらせさん情報感謝!)

レポートは営業当時のものです。

大田区西蒲田1-16-14 →地図
03-3753-6901
【営業時間】15:30~24:30
【定休日】7・17・27日


 東京には黒湯なるものが湧き出ており、中でもここが東京で一番濃いとの話を聞いて訪ねた。
 JR蒲田駅の西口から北へ「工学院通り」を徒歩約10分ほど。白壁の寺社造りに巨大な唐破風が見えてくる。素晴らしい外観。

 
この彫り物はゲギョというんだっけ?

 外観の壮大さに比べて中はわりとこじんまりしている。フロント式で、かつての脱衣場をあとから仕切ってロビーとに分けた様子。
 フロント前は元男湯側の庭があってソファもある休憩スペースになっているが、そのかわり脱衣場は狭い。
 まあ狭いながらも脱衣場は天井が高く、壁上部にも古い構造材などが見えて、それなりの風格を感じさせられる。天井は木だが格子ではなく、横棒だけで天板を支えている。

 浴室は改装されていて古さはない。天井は途中まで傾斜があるが、湯気抜き部分が大きく天板がフラットになっている2段式。この構造は関西では見かけない。
 奥の壁に女湯とブチ抜きのペンキ絵がある。男湯は滝のある山水風景、女湯のほうには富士山が見える。すみっこに「平成15年8月 早川」とサイン入り。

 浴槽は3つで、うち1つが・・・おおおーーー、なんじゃこりゃあ~?
 まさしくマックロ。まるきりコーヒーやがな。入ってみるとサラっとしているが、指を第一間接まで沈めただけでもう指先は見えなくなる。お、お、おもろい~。
 黒湯は冷泉らしいが、42度くらいに加熱してある。気持ちエエ。奥のほうは寝湯になっていて、気泡ブクブク。
 
 他の2槽は白湯だが、両方ともジェットつき。そのせいなのか何なのか、妙に湯が泡立っている。
 なにも全部ブクブクにすることはないと思うんだが。 
(2003.11.2)

 
てやんでぇこれが東京銭湯でいっ
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