関西の激渋銭湯
チープに極楽。生きててよかった!
【岩手県】の激渋銭湯
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菊の湯(盛岡市)
末広湯(花巻市)★
(廃業)
玉乃湯(北上市)
(廃業)
松乃湯(下閉伊郡山田町)
(廃業)

菊の湯

盛岡市茶畑2-14-13  地図
電話 019-622-8560
【営業時間】14:00〜22:00
  日曜朝湯あり 8:00〜11:00

【定休日】月曜日
【入浴料金】大人390円


 盛岡駅からは3kmくらい離れてる。
 でも日曜は朝風呂やってるっちゅーので、宿で無料レンタサイクルを借り、北上川の土手をスイスイさわやかに走って15分ほどで着いた。こいつぁ朝から気分がいいや。

 河南中学のすぐ前で、レンガ四角柱の煙突が迫力。
 向かいの倉庫には燃料とおぼしき木片がいっぱい貯められている。廃材じゃなくて新しい材木のハギレだ。かぐわしくにほふかほりが朝っぱらから気分いいぜ。

 
(左)聳え立つレンガ煙突   (右)山積みされた燃料の薪

 暖簾は男女がえらく離れてかかってる。
 中へ入ると狭い下足スペースがあり、戸を開けるとそこそこレトロな脱衣場が現れる。いろんな小物で賑やかな状況が、アットホームな雰囲気を漂わせまくっておるね。金魚鉢も置かれている。

 番台スペースは玄関側に入り込んだように広くとられていて、おかみさんが座っておられるが・・・鳥かごでかわいい小鳥がさえずっているぞ。
 とこのように経営者の趣味がモロに出るのが銭湯のおもしろいところね。

 
(左)番台の左右に小鳥がいる   (右)脱衣場には金魚水槽もあり

 ロッカーはフタがなくタナのみで、先客はみな丸籠を使っている。俺もそうした。

 浴室はこぢんまり空間だけど、たちこめる湯気に朝日が輝いて、いきなり朝っぱらから神々しいじゃねぇか。
 そして見所はナニゲに多い。まずは入ってすぐの島カラン部分に、リンゴのような不思議な形の不揃いな柄タイルが使われている。
 奥壁にはブリキの広告板がいろいろと貼られ、その合間に渓流の絵が描かれているというイニシエ〜な風景。
 さらに男女壁には熊を投げ飛ばすキンタロさんのモザイクタイル画がある。
 こいつぁ朝っぱらから楽しめるじゃねえか。

 湯船は男女壁に接して1槽のみで、タイル張りのフチは白パテ補修がいっぱいなされたレトロな一品。
 どれ、浸かるとするか・・・と、まろやかでじつによろしきお湯やんか。
 そして湯船の底のタイルが石材のようにしっとりしておって朝っぱらからゴキゲンだよまったく。
 お湯は隅の岩から出て、ステンレス籠が受け止めているが、そこに備長炭とヒノキ片が入っていて、これも朝っぱらから芳しい。

 カランの湯水も水質のよさを感じさせる。岩手山の伏流水なのかなあ。
 このよき水を薪で沸かし、備長炭をくぐらせた湯が朝っぱらから極楽なのは当然だろう。

 相客5〜6人。これくらいの古くて小さな銭湯が朝風呂をやってるのは珍しい。地域に愛される銭湯だね。おかみさんもフレンドリーでさらによし。
 朝っぱらからゴキゲンで風呂上り自転車コキコキだぜまったく。 
(2011.4.10)
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末広湯 《廃業》

廃業されました。
レポートは営業当時のものです。


花巻市末広町9−3
電話 0198-24-6921
【営業時間】?(聞き忘れ)
【定休日】「10月は月水金」
【入浴料金】大人390円


 宮沢賢治の生まれ故郷、花巻へとやってきた。

 駅東口から南へ10分ほど歩いたあたりで、民家の端に「末広湯」という小さな看板が掲げられているのを見つけた。その脇に、上り坂の狭い路地がある。
 その狭い坂をそっと8歩ほど進んで坂の上を見上げた途端、ボワンと視界が歪むのを感じた。

 路地の突き当たりの小さな丘の上で俺を見下ろしていたのは、1軒の古銭湯だった。その建物から発散されるセピア色のオーラが時空を歪めているのだ。まるで100年前の山の小さな分校のようじゃないか。
 こんな銭湯が、こんなところに残っているとは!
 俺は胸をかきむしられるような激しい郷愁を呼び起こされた。 ヤバイ。これはマジヤバイ・・・。 この暖簾をくぐってしまうと、もしかして二度と現実世界に戻れないのではないだろうか---。

 
(左)この路地を入る   (右)ああ、賢治よ・・・

 
(左)雨ニモ負ケズ・・・よくぞ今日まで   (右)中ノ番台ニ居マス・・・

 俺は気持ちを落ち着かせるためにいったんその場を離れ、しばらく花巻の街を散策した。
 再び戻ってきたときは、表の看板に明かりが灯っていた。
 俺は時空のとりことなる覚悟を決めて、暖簾をくぐった。

 
暖簾上の明り取りから、タタキ上の格天井が見える

 戸を開けるとタタキに古い木の番台があった。怪しげな青とオレンジ色の光で照らし出されているが、思ったとおり、誰も座っていない。

 
(左)いぶし銀の番台(上がってから撮影)   (右)怪しい灯(・・・デジカメ調子悪く、横スジ入った)

 大きな声で「すいません」と叫ぶと、女湯の脱衣所から老婆の声がした。
 「いま上へあがってますので・・・」
 女湯の客が、番台守が階上に上がっていることを教えてくれたらしい。
 周囲を見渡すと、「大人390円」と書かれた紙が壁にあるのが目に止まった。俺は財布を探ったが10円玉が足りない。仕方なく100円玉4枚を番台のフチに置いて、靴をぬいだ。木の下駄箱の古さも強烈だ。

 脱衣所もまた濃厚な郷愁空間だった。ロッカーにフタはなく、常連桶が詰め込まれている。俺は風の又三郎となって服を脱ぎ、当の丸籠に投げ込む。
 そして銀河鉄道に導かれるがままに、浴室への戸を開けた。

 
(左)重厚な脱衣所の天井板   (右)左のほうが玄関タタキ、床はビニルカーペット

 こじんまりとした浴室は、意外にも新しい抹茶色グラデーションのきれいなタイルが床に敷き詰められていた。脇に黄ケロリンと白ケロリンが行儀よく積まれている。
 コンクリ天井は手前から奥まで中央部が湯気抜きになっている。
 そして正面の奥壁にはモザイクタイル絵があった。おそらく北上川風景だろう。

 
(左)デジカメの調子が悪く、縦スジが入った・・・   (右)絵拡大(こんどは横スジ・・・)

 絵の下に深浅の湯舟があり、奥にあしらわれた溶岩から湯が流れ込んでいる。分厚いフチには1cm角の青い豆タイルがびっしりと貼られている。
 湯に体を沈める。43度くらいのやわらかい湯だ。湯舟の内側にも小さめの柄タイルが貼られている。
 カランは両側および島カランがあるが、シャワーや鏡はあったりなかったり。入口近くの床に横1本の排水溝があり、そこへ向かって床が全面傾斜している古いパターンだ。
 他客は3人ほどいた。みんな静かに体を洗い、黙って上がってゆく。

 ゆっくり浸かって風呂から上がると、番台におかみさんが座っていた。俺を見て、釣り銭の10円を返してくださった。
 この建物は昭和27年ごろに建てられたという。
 脱衣所の天井に、新築当時から使っているレトロな電灯が下がっている。おかみさんはその古い電灯のスイッチを入れてくれたが、あまり明るくない。
 「薄暗いですね」と俺が言うと、
 「ゆっくり、だんだん明るくなってきます。古いので」と穏やかにおっしゃった。

 おかみさんによると、脱衣所の天井板は秋田杉だそうだ。
 番台上の青い電灯は、集蚊灯だった。青い光の下で小さなプロペラが回っており、集まった虫が下の網に溜められる仕組みだ。
 「花巻にも昔は8軒の銭湯がありましたが、今は2軒だけです」

 温かい時空のはざまにスッポリと落ち込んで過ごす、花巻の夕刻の一時。思えば遠くへ来たものだ・・・。  
(2007.10.4)

 
この看板が目印
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玉乃湯 《廃業》

2011年、廃業されました。
(原口さん情報感謝!)
レポートは営業当時のものです。


北上市花園町1丁目5-13 地図
電話 0197-63-2650
【営業時間】 15:00〜?
【定休日】 ?(聞き忘れ)
【入浴料金】大人390円


 新幹線も停まる北上駅から北へ10分ほど歩き、諏訪神社の角を右へ曲がって2〜3分。静かな住宅街の中に、渋銭ファンなら誰しもがその場に立ち尽くして見とれるような、見事な面構えの銭湯が忽然と現れる。

 
(左)おっ、あれか?   (右)おおおっ!!!

 正面に描かれた「湯乃玉」の行書体が格調の高さを感じさせる。その下に東京式の小粋な短暖簾がかかっているのも珍しい。

 暖簾をくぐると狭い下足室がある昔ながらの造りだが、一方の戸に「男の人も女の人もこちらから」と張り紙がある。そこを入ると、狭いロビーでおかみさんがテレビを見ている。番台と脱衣所を仕切って改造したんだな。

 脱衣所は新建材でなんていうこともなく改装済みで、ちょい拍子抜け。飲み物の自販機もあったりする。
 だが浴室には古い雰囲気が健在だ。床には不揃いの小石型タイルがびっしり貼られ、脇にケロリン桶が積まれている。ただし壁や天井がチープな新建材ボードに覆われ、けっこう痛んでいる部分もあるのがチト残念だ。

 湯舟は手前から、広めの浅、狭い深、寝風呂的ジェットと並んでいる。湯舟のへりは幅が広く、ゆるい山型カーブに1.5×2cmのタイルが貼られている。変態的銭湯マニアは思わずナデナデ。でもあちこちハゲていて、そういう箇所は別色タイルで補修されている。

 まあなんにせよ秋の奥州、古銭湯。ゆっぐりあだまっで行ごでねが。

 浴室の両側壁にカランが並んでいる。シャワーはボリューム大で、洗髪ゴキゲン、ポイント高し。

 夜7:30前後、他客は5〜6人いた。しかも20〜50代の若者が多く、田舎のレトロ銭湯とは思えない活況だ。まんだまんだ現役だず。  
(2007.10.4)
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松乃湯 《廃業》

東日本大震災による津波被害を受け、廃業されました。

下閉伊郡山田町川向町15−15
電話 0193-82-3823
【営業時間】 15:00〜?
【定休日】 ?(聞き忘れ)
【入浴料金】大人360円?


 三陸海岸の真ん中あたり、陸中山田。なぜ俺はこんなところにいるのでせう? もうわからんわ自分が。
 駅を出て正面に歩くとすぐに国道に出る。それを右へ折れて少し行くと、そびえ立つレンガ煙突が見えてくる。駅から3分くらいかな。

 
(左)煙突の手前でカチッと長方形  (右)オリジナル暖簾、木枠の戸、手押し車の郷愁セット

 四角四面の平屋建て、箱にフタをかぶせたような潔さがクール。もっとも、抹茶色のフタ(屋根)はかなり剥げてきている。入口脇のガラスブロックも年代を感じさせる。
 戸を開けると下足スペースがある。

 
(左)戸を開けて入ったところ、ガラス戸渋い  (右)木のゲタ箱も年季もの

 靴を脱いで中に入ると、番台にしっかりした感じのばあさんが座っている。
 脱衣所はけっこう広々感がある。床はフローリング、天井は大きな格子になっており、白と青に塗り分けられている。
 ロッカーもあるが丸籠を利用した。なんか東北に来てから籠しか使ってないな。
 浴室入口の両脇にも懐かしのガラスブロックが使われているのが泣かせる。

 浴室内部も広々している。天井中央が広く開口して、その部分は透明トタン屋根になっていて、日のあるうちは非常に明るい。
 で、なんと言っても驚くのは、床の不揃い小石タイルが異常に美しいこと。新品っぽいけど、この昭和的な細かいタイルを今どき新しく貼りめぐらしたのだとしたら、そのセンスは素晴らしすぎる。
 小石型に混じってブナの茶葉型タイルもあり。奥州の森を感じさせられる。

 湯舟は奥に深浅があるシンプルなスタイル。だが、浅いほうの横面が船の舳先のように伸びているのが珍しい。うまく説明できん。深はユルイ気泡が出ている。
 湯舟へりは1cm角の豆タイルがびっしり貼られ、給水部分に盛り上がりがあるのがおもしろい。

 今日は予定外に道なき山をよじ登ったりしたので、ちょっと熱めの湯が嬉しいことよ。あ〜、ここどこやったっけ。山田? どこの山田や・・・はは。
 壁は白タイル一色だが、湯舟の奥壁がガラス張りで、その向こうに植木や熱帯魚オモチャが配されて擬似水槽風になっている。脱力3割増。

 カランは両側に並ぶが、シャワーは男女壁側だけという古銭湯パターン。カラン上の台にも小石型タイルが貼られているが、笹型・ひょうたん型・モミジ型なども混じっているのが味わい深い。
 それと、ここは桶ではなく広口浅底の「洗面器」が配備されている。ばーちゃんの家やな、もう。

 とにかくタイルの美しさに感涙の銭湯だ。
 まだ明るいのに、帰りにおかみが「おやすみなさい」と言ってくれた。

 
さらばじゃ・・・(玄関を内側から)

 ちなみにタウンページでは、陸中山田にもう1軒「長命湯」というのが出ているので見に行った。駅から西に2分弱。
 と、これはこれは、この地方の伝統的家屋ではないか。一般民家でも少なくなっており、貴重なものだ。レンガ煙突も見事。(下写真)
 しかし残念ながら、大工さんがトンテンカンと修理中で、営業していなかった。
 でも取り壊すわけではなくていねいに修理している様子だったから、修理が済んだらまた営業を再開されるのかもしれん。次回(・・・)はぜひ入ってみたい。 
(2007.10.5)

 
激渋の長命湯。入口は手前の赤壁の平屋との間にある
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