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【宮崎県】の激渋銭湯 | ||||||||||||
喜楽湯 ★(延岡市) 観光温泉 (えびの市)(廃業) 山麓温泉 (えびの市) 湯乃谷温泉 (えびの市)(廃業) |
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喜楽湯 ★
日本には、風呂神様が降臨しっぱなしの銭湯聖地がいくつかある。 ここ延岡の喜楽湯はそのひとつとして知られている。 18キッパーにとって、大分側からの普通列車が極端に少ない延岡は九州最大の難関だ。 俺としても8時閉店や日曜定休がネックとなり、3度目の正直でようやく営業時間内にたどり着いた。 ![]() ![]() (左)横の部分の窓や壁もいい (右)小さなベンチが泣かせる 北海道開拓時代の教会建築を彷彿とさせる外観。板張り壁の水色ペンキ。木製の引き戸。聖なる符号がここでピタリと一致し、敬虔なるピルグリムの熱視線に感応して、聖地の戸は音もなく開かれる。 信者は震える足でステップを上がり、聖堂へと足を踏み入れる。 ひんやりとしたタタキに番台があり、一人の使徒が静かに腰を下ろしている。 ああ神よ、もう目を開けてよいのでしょうか、肉眼で直に目撃しても許されるのでしょうか、あなたの清き世界を! ![]() ![]() (左)脱衣場の男女仕切り壁の広告 (右)脱衣箱 ![]() この時点で早くも信者は滂沱の涙に溺れて視野を失い、持てる精気を使い果たしたことで体の平衡も消滅して、朦朧としたまま操られるかのようにノロノロと服を脱いだ。 語る言葉はなどもはや存在しない。風呂神様にこの弱き身を捧げるのみ。 信者は生まれたときの姿+陰毛の状態となって、浴室への戸をうやうやしく開けた。 ![]() ![]() (左)男女仕切り壁 (右)ズラリと並ぶ広告 ![]() ![]() (左)中央の湯船、ピッカピカ (右)奥の副浴槽2つは使われていない ![]() ![]() (左)釜場へ通ずるアリスのウサギ穴 (右)見上げれば解脱の湯気抜き 神の寝所は長き歴史を経てなお、清く正しく美しく光り輝いている。 信者はもはやその身が己のものか、あるいは陰毛こそが己であるのかさえ不明となっていた。しかしすべてを神に捧げた彼にとって、それはどうでもいいことだった。 神は命じられた。 「湯に浸かれ。そして頭と体を洗え」 信者はその御言葉のままに身を清め、聖湯に何度も身を投じた。 そして彼は召されていった。 幸せだった。 ![]() (2015年3月) ※「レトロ銭湯へようこそ西日本版」に掲載されました。 ![]() |
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観光温泉(廃業)
京町温泉駅から正面の道をまっすぐ北上し、国道を越えて少し行くと右手に現われる、古ーい古ーい温泉銭湯。駅から徒歩5分くらい。 地味な上、駐車スペースぶん道から奥まっているので見つけにくいかも。湯気抜き部分に掲げられた看板と、玄関の破風に取り付けられた渋い木の看板が目印だ。 しかしまあ名前とは裏腹に、みるからに一般的な観光客は来そうにない、地元密着型の風呂屋だな。 近づいてまず目に飛び込んでくるのは、正面の入口周辺にびっしり張り込まれた不揃い小石型タイル。そしてその真ん中に銭湯組合マークあり。銭湯ファンならピクッときます。 湯銭は左横の建物の窓口で、やさしげなばあちゃんに支払う。 ![]() 男湯側の戸を入ると薄暗い空間。タタキがそのまま中央通路になっていて、裏まで抜けられるようだ。その左側が男湯で、靴を脱いで上がる。 これ、銭湯というより、まさしく田舎のおばあちゃんの「家」ですな。それじゃ、お邪魔しまーす。 ![]() ![]() (左)中央通路で男女が分けられている (右)男湯への上がりがまち、まるきり民家 木の戸を開けて入る脱衣所はゆったりサイズで、ロッカーはタナのみ。 ![]() 浴室も思ったとおりの古びた空間だが、意外にも広い。窓から午後の光がさしこむ、のんびり空間だ。 奥の角に扇形の湯舟が一つある。でも要の位置から扇の半分くらいまでは岩が組まれているため、湯舟はせいぜい4人くらいのサイズ。組まれた岩の頂上にはポトスの鉢が置かれ、そこから伸びたツルが岩を這っている。 浴室の床全面から湯舟のへりにかけて、不揃いの小石型タイルがびっしり張られている。浴室の広さの割に湯舟が小さいため、このタイルの数が半端じゃない。 ![]() やや飴色がかった透明なお湯を触ると、42〜43度くらい。どっぷり浸かると、肌がキュッパキュッパとなるようなさっぱり系。でも、じゃーっと出ている源泉をさわると50度近い。一人いた先客がうめたのかな? 湯船の底にはレトロの定番、丸い豆タイルがびっしり。奥壁を見ると、灯台と小島を描いた小さなタイル絵がある。ここでも銭湯ファンならピクッとね。 カランは2組あるが、使われていないような感じ。 あとから来たお客が、俺があがったあとにホースを引き込んで水でうめていた。ここではそういう流儀なのだろう。 時計の針が昭和中期を指したまま、微動だにしない空間。ばあちゃんちの湯に浸かって、なーんも考える必要ありませんわい。 (2005.12.12) |
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山麓温泉
泊まれるお風呂屋さんシリーズ〜! 最近これがマイブーム化しつつある。 京町温泉は地味なところだが、狭い地域に風呂屋だらけ。それも別府みたいに地域の組合が共同管理する共同湯よりも、個人経営で公衆浴場組合加盟の温泉銭湯スタイルのとこが多いみたい。 その中で宿泊可能なのがここ。自炊の湯治宿形式で、なんと1泊2200円てキョービあんた! 山麓というが別に山際にあるわけではなくて、思いっきり駅裏。線路際のフェンスがなければ駅のホームからわずか30秒! …なのだが、駅の出口は反対側(北側)1ヵ所のため、そっちから出て踏切を渡ってぐるっと南側へ回って来なければならない。腹立たしくも徒歩6〜7分。 んでまたこれが田舎なもんで街灯もなく、夜になったらド真っ暗やがな。田んぼに落ちんように慎重に歩かんならん。駅そこやのに。 あ、その話は後にして、先にお風呂を紹介しときましょう。 ![]() ![]() (左)看板 (右)空中式番台、あんまり座ってなさげ ![]() ![]() (左)脱衣場。左が玄関、右が浴室 (右)脱衣は籠のみ いたってシンプルな脱衣場。 そして浴室もシンプルで飾り気なし。 湯船は4人用くらいのが隅に一つあるだけだ。長方形だが一角がアールを描き、フチは洗い出し工法のようでザラザラしている。 浴室の床や湯船の底面は細かなタイルが張り込まれている。全体に年季の入ったエエ味わい。 お湯はもちろん天然温泉で、55度の源泉が2〜3か所くらいから少しずつかけ流されている。湯船でさめて43度強くらい。夏場はもっと熱いんかも。かすかに飴色がかった、透明でくせのない単純泉だ。 じっくり浸かって、うーん、あーん、と意味もなく声が出る。われながらホモサピエンスとは思えない。 カランやシャワーはない。湯船の横に座って、湯をくんで使う。京町から鹿児島県側の吉松あたりはこのパターンが多い。 近所の人々に愛用されているお風呂のようで、朝も早くから一人二人とやってくる。ええなぁ。こんなん近所にあったらな〜。 ・・・さて話は戻る。 真っ暗な駅裏を慎重に歩いて行くと、この看板が見えてくる。 大きな安堵を覚えながら矢印の指す方向を見ると、漆黒の闇の中に小さな明かりが浮かんでいる。あれが山麓温泉のようだ。 ![]() ![]() (左)あった! (右)あ、あれか! 手前に障害物や落とし穴がありませんように・・・ ![]() 着いた時は時間が遅くて、公衆浴場部分は終わっていた。 左奥に母屋があり、経営者一家の居間が丸見え状態で家族団らん中。声をかけて、隣の宿泊棟へ案内してもらう。 ![]() ![]() (左)俺の部屋! こたつ最高! (右)広々キッチン、これでも半分 共同のキッチンを挟んで3つほどの部屋がある。この日の泊り客は俺一人だった。部屋は6畳で、なんといってもコタツが泣かせる。もちろん布団もたっぷりあるが、せっかくなのでコタツに下半身を突っ込んで寝た。 共同浴場は終わっていたが、ここには家族風呂も2つあって、その一つを俺のために用意してくださっていた。 ![]() ![]() (左)家族風呂の脱衣場 (右)岩張りだ。カラン・シャワーも万全 ![]() ほのかに飴色に染まる、かぐわしき湯。そして底の渋いタイル。 ここは蛇口からアツアツの温泉も水も出し放題で、すばらしい贅沢感が味わえる。 この日はさんざん山を歩きまくった上に長距離を列車移動し、遅い時間になって、ずいぶん疲れていた。それらがみるみる溶けてゆくのがわかる。 真っ暗な駅裏の、小さな風呂場に、俺だけの極楽がこうして待ってくれていた。 たまらん。このまま沈んであの世でオシャカ様に「やあ、来たよ」って言いたい。 気の済むまでオシャカ様と語り合ったのち、部屋のコタツに戻った俺は、ビールとチューハイで晩酌ののち、幸せな眠りをむさぼった。深い眠りであった。 そして翌朝起き抜けに公衆浴場のほうに入った。もちろん宿泊者は公衆浴場に何度入っても無料だ。 ちなみにこの山麓温泉のおかみさん、宿泊予約時の電話から当日のご配慮まで、極めて気持ちよく応対してくださった。宿泊料2200円、満足度プライスレス。いい隠れ宿を見つけたっと。 ご主人には駅への近道もこっそり教えてもらったし、再訪確実。 (2013.12.30) ※24時間のセブンイレブンがここにある。スーパー(9:30〜20:00)はここ。 |
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湯乃谷温泉(廃業)
京町温泉駅から徒歩10分くらい。川内川を渡って少し行くと、右側になにやらタンクがうやうやしく掲げられている。 正面へまわると・・・おっとぉー! こここ、このヒナビの効きっぷりは俺の鼻腔の奥をツーンとさせやがるやおまへんか〜。 ![]() ![]() (左)タンクどうだ (右)左手が母屋、右手が温泉棟 年季の入った木造瓦屋根。湯気抜きの具合が泣かっしょるで。 向かいの経営者宅に窓口があり、奥の居間のコタツにもぐっている寝ぼけたジイさんを呼んで入浴料を払う。もうこの時点で脱力5割増。しかし350円を消して250円になってるけど大丈夫か? ![]() 脱衣場はシンプル一本槍の静寂空間だ。 ![]() ![]() (左)たまらん (右)激渋テーマパーク こういうとこで全裸になる喜びをなんとしよう。わけもわからずに快感中枢が激しくうずく。 当然のことながら浴室も言うことなし。九州南部によくある源泉かけ流しの素朴空間。都会の近郊にはあり得ない別世界だ。 ![]() ![]() (左)主湯のカーブも神々しい (右)天井も素朴 源泉温度は京町でいちばん熱いらしい。主浴槽はたしかに限界温度(俺基準、46度くらい)に近い。奥のパイプから、触れない温度の湯がジャボジャボ注がれている。 でも横にある副浴槽はぬるめに冷めている。ここに浸かって湯船のふちに後頭部を乗せ、目を閉じる。・・・アカンこれは寝る、絶対寝てまう。 ![]() 熱いほうで修行し、ぬるいほうでくつろぐ、この反復。 信じがたき平和な土地だ。 やや飴色がかったクセのない京町温泉の湯、素晴らしきかな。しかも思いっきり駅の近くにこんな風呂がゴロゴロしとるで。 にもかかわらず訪れる人は多くない。この地を好んで通うのが本当の風呂好きだと言わざるを得ない。 (2013.12.31) |
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