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激減の街---岸和田銭湯探査 (大阪府岸和田市)2004.10.29 |
なぜ岸和田なのか うずくな。旅の虫が。でも時間もカネもない。 そういうときは例によって「時間もカネもない状態でどこへ行けるか」シリーズだ。無理やり半日ほど時間をつくって、泉州の岸和田まで行ってきた。 岸和田には何年か前に1度だけ来たことがある。あんときゃ岸和田駅からバスに乗って、山の中に新しくできたバブリーな日帰り温泉施設へ行った。 しかし最近、そういうところにはトンと関心がなくなった。いろんな風呂があって設備が整っているのは確かに楽しいもんだが、値段のわりに心にずしんとくる感動はない。結局、経営側も利用者側も、設備はカネで買えるからな。それに作ってるのはたいてい都会の業者、スケールメリットを生かした材料は均質で地域性も乏しい。 だが小さくても設備ショボくても、御影石や無垢材など重量級の素材、昔の職人が心意気で彫り込んだ意匠、長年使い込まれた味わい、地元で愛されてきた施設だけが持つ不思議な雰囲気など、つまり「濃さ」というようなものは、カネでは買えないわけよ。ま、一般にこういう言い草を貧乏人の屁理屈と言うわけだが。うふふ〜。 ともあれそんなわけでわがチープ&ディープなる魂は、必然的に濃ゆ〜いイニシエ銭湯を求めてさまようことになる。この段階に達すると、もはや一般人とは話が合わなくなるけどな。 で、なぜ岸和田なのかというと、ここは前述の日帰り温泉や評判のスーパー銭湯などがバンバンできている影響か、ここ数年で一般銭湯が激減しているからだ。 1996年に作られた「大阪お風呂マップ」では31軒もの銭湯が営業しているが、現在の大阪府公衆浴場組合のHPには19軒しか載っていない。ということは8年間で12軒の銭湯が廃業したことになる。この小さな町で、1年に1.5軒の廃業ペース。これは猛烈だ。 銭湯を愛する俺様としては、もう居ても立ってもいられない。今回は町歩きも観光もクソもない。現存する岸和田銭湯を徹底的に見て回ることにした。したがって銭湯に興味のない人には想像を絶するつまらなさだ。覚悟せよ。 春木から加守町 南海電車、岸和田駅の2つ手前の春木で下車。ここからスタートだ。 駅の東側、歩いて3分に「春木温泉」。今風に改装された設備充実系銭湯。 きびすを返して反対の駅西側にまわり、のんびりした商店街を歩いて7〜8分で「朝日湯」、おっ、これは伝統系だな。 さらに西、海のほうへ近づくにつれて古い大きな屋敷が増え、逆に道が狭くなって昔ながらの集落に入る。なかなかの風格を感じさせる町並みだ。そんな中にあった「清春温泉」も古そうだが、外観はリフォームされている。 (左)春木で一番気になった朝日湯 (中)古い町並み (右)ぐねぐね細い路地があちこちに残る(このページ頭の写真も) 春木にはもっといっぱい銭湯があったようだが、現存するのはこの3軒のみだ。 次はその南の加守地区、ここにも3軒。春木川を渡って加守町へ入ると、おぉ〜こっちは懐かしいモロ昭和の下町風景。 そんな路地に「下町のオアシス」の看板があり、奥に煙突とトタン張りっぽい大柄な「杉の湯」。まさに地域住民のオアシスなんだろう。 東へ旧国道を渡り、さらに味わい深い細い路地を通って南海電車の線路脇に「春木新温泉」、これは典型的な昭和中期のシルバーパネル銭湯。 今度は戻り気味に南西へ歩くと高い煙突発見、正面に回ると2階がアパートのような「加守湯」だ。 (左)下町のオアシス・杉の湯 (中)柿の木の向こうに加守湯の煙突 (右)加守湯正面 いつしか和泉大宮駅に出たが、この駅周辺の銭湯は残念ながら全滅したようだ。 それにしてもいいかげん腹が減った。和泉大宮駅近くのうどん屋へ。テレビで田宮二郎の「白い巨塔」をやってる。太地喜和子の存在感がすごい。 筋海町から紙屋町 ひといき入れて、いよいよ岸和田中心部へ。 和泉大宮駅から南西に1kmほど歩くと筋海町、このあたりの路地も濃いなあ。その中に「清水湯」、外観はのっぺりと間口横断パネルで改装されているが、本体はかなり古そう。 (左)筋海町の路地 (中)突き当りを右へ曲がると (右)清水湯発見 岸和田駅から臨海ショッピングモール「岸和田カンカン」へ続くメイン商店街を越え、大北町へ。このへんは歴史的な洋館が多い。 (左)岸和田メインストリート (中)なんだか忘れたが素敵な洋館 (右)銀行 大北町の路地裏に「春日湯」、チープなプチ銭湯。 そこから徒歩5分、紙屋町の街角にこれまたプチな入母屋造りの「桜湯」。 (左)春日湯 (右)桜湯 そして桜湯と同じ紙屋町内、しかも同じ道沿いの100メートルほどしか離れていないところに「梅湯」。こいつはすごい激レトロ! でも暖簾がかかっていない。組合のHPでは金曜日定休となってるが、どう見ても現役には見えないんだが・・・。 それにしてもこの2軒の近接ぶりは、過去に見たことがない。 梅湯。2階部分がなんとなく千と千尋 やっぱり廃業してるのかなぁ・・・ この近辺の銭湯はあと岸和田駅の東南側にもあるが、もう歩きすぎて足の付け根が痛くて限界。とりあえずさっきの桜湯に入った。桜湯の詳細こちら。 お城と駅東側 さて、風呂から上がると、とっぷり日が暮れている。体がビールを求めているよ。 でもこの辺には飲み屋はないなあ・・・と思って歩いてたら、お城に出た。そういや岸和田って城下町だった。せっかくだから城の周囲を散策する。 (左)お堀に映る「逆さ天守」 (右)東から 岸城神社から城の北東にまわると、渋〜い土塀の路地なんかも残っている。なかなかの風情じゃないですか。昼間のうちにこっちを歩いてみたかったような。そして宮本町の商店街、ここも渋い。 メインの商店街に出て駅前近く、アーケードからちょっと入ったところに「カルルの湯」、ここはやや有名な設備系銭湯だな。 その近くのおでん屋で、やっとこさビールにありつく。おでんも一工夫あってうまかった。店内のテレビでやってたしょーむないバラエティ番組になぜかひきつけられて、なかなか席を立てなかった。 店の名前は忘れたが、おでんうまかった さあ、ラスト2軒か。高架駅を反対側へ抜ける。 野田町の街角に「東光湯」、入り口にタコヤキ屋があり、中に入るとコインランドリーが並び、その奥に暖簾がかかっている。大阪風っちゅーかなんちゅーか、3段構えでカネつこうてや〜な銭湯だ。 (左)泉州銀行はATMもだんじり&ちょうちん型 (右)3段構えの東光湯 最後の1軒、別所町の「日の出温泉」は幹線道路沿いの体育館ぽい大味な外観の銭湯だった。 以上、岸和田中心部の銭湯は一通り見て回ったぞ。ハァ、ハァ、ハァ・・・足が棒。 さっき入った桜湯は外観のわりに内部は全面改装されてたし、俺的にホームランな外観の銭湯はイマイチなかったが、最初のほうで見た朝日湯がどうも気になる・・・。 というわけで再び春木に移動。駅から朝日湯方面へ向かう途中、安そうな焼き鳥屋を見つけてついフラフラと。でも持参金が少なかったので、神戸まで帰る電車賃と風呂銭とを計算しながら、最小限の金額で最大限に飲み食いできるようセコ〜ク注文する。 1時間ほどでさらに気分よく酔っ払い、いよいよ朝日湯へ。内部はある程度改装されていたが、木のロッカーも残っていたし、浴室の雰囲気が僕好みで満足。なにより番台のおばちゃんの感じがよかった。朝日湯の詳細こちら。 (左)焼き鳥「鳥珍」 (右)朝日湯に残る、いろはロッカー 湯上りポッカポカ、駅までぶらぶら歩いて戻る。そこから神戸まで帰るのに2時間近くかかった。 求道者のごとく研ぎ澄まされた半日だったのお。 おしまい。 |
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