ちょっとした旅ホーム
異形なる者たちの郷
(香川県観音寺市)



(2004.9.26)

 高松駅前のホテルでの目覚め。
 今日は丸一日の自由時間だ。

 瀬戸内海に浮かぶマイナーな島に行きたいと思ったんだが、船の時間を聞こうと汽船会社に電話しても出やしない。一日数本しかない船をひたすら港で待つのも、この暑さじゃ辛いものがある。
 というわけで島は断念し、香川県西端の観音寺市へ行くことにした。なぜそこかって? そらアンタ、あれですがな。

 高松から快速で1時間半ほど。途中、海岸寺という駅を過ぎると列車は瀬戸内海沿いを走る。まあなんとのんびりとした瀬戸内の島々よ。やっぱり島へ渡ればよかったかな〜、なんて考えているうちに観音寺到着。
 ここは高松や坂出とはうってかわって、田舎丸出しの駅だ。
 おっとぉ〜、駅を出るとまたもや右翼の街宣車の洗礼だ。香川県はどこもこれなのか。

 観音寺駅

 観音寺には、市名にもなっている四国霊場88カ所のひとつ観音寺、琴弾公園などの観光スポットがある。そして小さな町のくせに、電話帳を見ると狭い範囲にたくさんの銭湯が残っているようだ。
 というわけで、銭湯をつなぎながら観光スポでもまわるとするか。

 駅からシナビた町を歩いて10分たらず、マルエイの南に共楽湯。けっこうそそられる。
 そこから三架橋通りを北上して5分で朝日湯。だがこれはどう見ても滅んでますな。

 
 (左)共楽湯、古いがなかなか大きな建物  (右)故・朝日湯、古い木造アパート? 中を見てみたい


 さらに北東へ5〜6分、財田川の堤防近くに、おぉ、古〜い日本建築の銭湯発見。たから湯だな。
 一見廃業してるかのようなボロさだが、煙突から白い煙が出ている。薪で沸かすには、夕方からの営業のために午前中から火を入れねばならんというが、まさにそれだな。
 隣には小さな祠もあって風情よし。ここは本日の風呂の有力候補だ。

  
(左)昔賑わったのであろうゴースト商店街  (中)たから湯の横の祠  (右)裏は財田川

 そういや昔、財田川事件というのがあったが、どんな事件だったっけ、の財田川を渡ると、2分で四国霊場の観音寺に着いた。
 じつはここには68番札所の神恵院と69番の観音寺が同じ敷地内にある。四国唯一の1寺2霊場になっていて、お遍路にとってたいへんオトクな場所だ。

  
(左)山門   (中)まずは観音寺大師堂   (右)観音寺本堂

 霊場はどうやら大師堂と本堂がセットになっているらしい。中庭には車椅子の脳性まひ者がじっとしている。観音寺の本堂では、女性2人がひざまずいて熱心に般若心経を唱えている。熱心に、というより、必死に、というほうが合っているかも。
 普通の寺とはちょっと異質な空気を感じる。なにやらいろんな「念」が渦巻いているような。

 で、隣に68番の神恵院があるはずだが・・・これだな、おやっ? 何か立て札が。

  
(左)この階段の上が神恵院のはずだが  (中)あっちに移転しただと   (右)新築の大師堂

 ふーん、立て直したのか。まあ大師堂はソレ風にしつらえてあるが、本堂はどれかな・・・ん?

 なんじゃこれ?

 核シェルターを兼ねてます(嘘)

 これが神恵院本堂だと?
 たしかに白装束のお遍路オバチャン集団が中に吸い込まれてゆく。
 ふーん。四国霊場って、こんなんでいいわけか。

 それより、捨てられた元の神恵院が気になる。立て札をまたいで階段を登ってみた。

 元の神恵院、こっちのほうがはるかに有難いような

 木の香りがプンプンする、古いが堂々たる寺社建築。もったいないなあ。
 おや、手前の献花台のような石に、なにか顔が彫られているが。

 なにこれ?

  (左)なんだろう  (右)ギョ、ちょっとキモチ悪い

 拡大。こわいんだか、かわいいんだか・・・

 向かいには弘法大師の銅像が雨ざらしで放置されている。いいのか、こんなんで。大雑把な信仰だな。

 
 こんな目に遭わされてなお微笑みを絶やさないお大師様・・・いや、泣いてるのか?


 裏へ回ると、じめじめとしめった崖下に、異形の地蔵が並んでいる。
 石井政之氏の『顔面バカ一代』にお遍路の章があるが、それを思い出した。たしかにここには異形のものが目立つ。

 人知れず・・・

 そのまま琴弾山の尾根筋に出てちょっと登ると、頂上に出た。ここは展望所になっていて、眼下に観光名物の「銭形」が見える。1633年、ここを訪れた殿様を喜ばすため村人が一夜で作ったといわれているもので、直径100メートルくらいあるらしい。
 が、昔ならいざ知らず、今じゃこれを眺めても、「あっ、そう」で終わるなあ。これを見た人はカネに困らなくなるだと? ウソこけ。

 銭形。それより遠くに見える伊吹島のほうが気になる

 その近くに琴弾八幡宮があった。昔はこっちが68番だったそうだが、神仏分離で霊場から外されたためか、人はだ〜れもいなかった。そのぶん、ノンビリ寝そべったりした。

 
(左)琴弾八幡宮の拝殿   (右)神社がガラス戸に屋号を入れてどうする

 なぬ? おいー、ここの拝殿にも、正面の梁の横っちょに、なんかヘンなもんがくっついてるぞ〜。これ、虫か? 宇宙人か?

 なんなんだよぉ〜コレ!

 異形にもほどがある

 もうこんな山、下りよう。
 長い階段を下り、やっと下の鳥居が近づいたと思ったら・・・またまたヘンなものが。

 こわすぎるんだよ、この狛犬〜

  
(左)(中)いったい何の動物なんや?   (右)あこや貝をほおばる中尾彬

 下山し、三架橋を渡って港のほうへと歩く。
 川沿いに家々が密集し、狭い路地が錯綜する。その中に零細なカマボコ製造工場が点在している。このあたりが元々の観音寺の町っぽいな。

  
(左)財田川の向こうに、さっきまでいた琴弾山  (中)河口近くの町  (右)カマボコ倉庫はレンガ造り

 このエリアには3軒の銭湯が近接している。
 薬師湯は見つけるのにやや苦労した。栄楽温泉は大きな交差点の近く。

  
(左)(中)路地の出口に薬師湯、町屋風だが玄関周りは改装   (右)栄楽温泉、しっかりしたビル造り

 栄楽温泉から200メートルほど港方面へ行ったところに築港温泉。むっ、これはキてる・・・と思ったら、すでに滅んでおりました。

  
(左)あの四角いビルが築港温泉らしいが  (中)うーん、ボロボロで廃業   (右)路地を歩いて中心部へ戻る

 さて、銭湯も全部見た。いちばんそそられたのは、たから湯だな。でもまだ開店まで時間があるし腹も減った。最後にもういっちょ、さぬきうどんいっとくか。
 と中心部をウロついてうどん屋を探すが、ない。小さいのが1軒だけあったが定休日。観音寺まで来ると、もはやさぬきうどん文化圏ではないのか? カトキチ本社がここにあるんだが。

 観音寺の中心部、三架橋町交差点付近

 さんざん探して駅前まで戻り、やっとセルフサービスの店を見つけた。各種のうどんにそれぞれ「大」と「小」がある。大にしようかと思ったが、いろんな具やおでんもあったので、うどんは小にしてほかのものをいろいろ取る。
 やがてうどんが出てきたが、なにこれ、すげー多い。2玉分は確実にあるで。おばちゃん間違えたのかな、こりゃトクしたわい。知らん顔して食べてやれ。
 そう思って食べていたら、あとから来てやはり「小」を注文してた客が素っ頓狂な声を上げる。
 「おばちゃん、これで小!?」
 「そうです」
 ぬぬ。おばちゃんは間違えたのではなかったらしい。そしたらこの店の「大」って・・・。

 ともかくビールも飲んで腹いっぱい。右翼街宣車がまたもや走っている駅前を離れ、何度もぐるぐる歩いてすっかり覚えた道を1kmほど歩いてたから湯へ向かう。
 そして入湯。この風呂、思ったとおりよかったわ〜。しかもよく歩いたあとの電気風呂はまた格別だねえ。たから湯のレポートこちら。

  
 (左)たから湯の並び  (右)味わい深き銭湯じゃった


 大満足で再び駅へ戻り、夕暮れの予讃線で丸亀へと戻る。
 午前中に見た瀬戸内海の島々は平和ボケしたようなのどかな風景だったが、夕闇の瀬戸内海に浮かぶたくさんの島影は一転して神秘的で、まるでゲド戦記に描かれる多島海のようにも見えた。
 丸亀からは予定通りの高速バスで神戸へ帰った。

 以上、香川県中部・西部(中讃・西讃)の4市を駆け足で回った。高松は思った以上に明るい都会、坂出と丸亀は空洞化の進む中都市、観音寺だけはちょっと雰囲気の違うヒナビた港町だった。
 予讃線で西へ向かうと、海岸寺を過ぎて瀬戸内海が見えるあたりから、時計の針の進み具合が遅くなったように感じた。

 次回はどこかの島へ渡ろう。

 おしまい。
ちょっとした旅ホーム