関西の激渋銭湯
チープに極楽。生きててよかった!
   レトロ銭湯へようこそ
関西版

松本康治、戎光祥出版
定価:1600円+税
レトロ銭湯へようこそ
西日本版

松本康治、戎光祥出版
定価:1600円+税
  お 風 呂 屋 さ ん で も 買 え る
 【大阪市生野区】の激渋銭湯 
生野区<大阪市激渋銭湯トップ
生照温泉 (廃業)
源ヶ橋温泉 ★(廃業)
桜湯
(廃業)
弁天湯
(休業)
安楽湯
(廃業)
橘湯
玉の湯 ★
(廃業)
恵比須湯
(廃業)

鶴橋温泉/沢の湯/生澤温泉/宮の温泉 →廃業銭湯(大阪市内)

生照温泉(廃業)

2011年、廃業されました。
(北河内さん情報感謝!)
レポートは営業当時のものです。

生野区新今里6-4-8 →地図
電話 06-6751-1095
【営業時間】14:45〜0:00
【定休日】日曜日


 「いくてる」と読むらしい。
 近鉄今里駅を南へ出て、左(東)へ徒歩2分。ちょっと不思議な建物が現れる。
 生野区の浴場組合ホームページによると、神戸の異人館をイメージして建てられたそうだ。ドームの乗った曲面部分がなんともユニーク。

 
異人館というか、小さな学校のようにも・・・それにしても電線がすごい日本の街並み

 
飛び出した薄い部分に窓がある。トイレか何か?

 わりと早い時間から営業しているのが嬉しい。昼間っから暖簾をくぐり、靴を脱いで脱衣場へ。木の番台は昔ながらだが、天井・壁は真新しく張り替えられていて、さほどのレトロ感はない。

 浴室は、中央に深い主浴槽、その横に浅い気泡・座浴ジェット・電気と並ぶ。奥にはスチームサウナがあり、横に広面積の立ちシャワー。水風呂も広い。このあたりも嬉しいなあ。
 湯舟は黒御影石。底には鯉の絵のタイルや昔の豆タイルが残っている。床やカラン周り、水風呂周辺など改装部分のタイル等のセンスもなかなかよい。スチームサウナ室は上が瓦屋根になっていたりする。
 おっ、浴槽には「備長炭入り」と書かれた箱が沈められているぞ。

 とまあ、なかなかの設備充実ながらもソフトなレトロ風味。珍しい外観、清潔感もあって、銭湯ビギナーを連れてくるのにちょうどよさそうなお風呂だ。(04.6.11)
この頁の頭へ大阪市激渋銭湯トップ

源ヶ橋温泉 ★ (廃業)

2019.1.7から休業、そのまま廃業されました。
レポートは営業当時のものです。


生野区林寺1−5−33 →地図
電話 06-6731-4843
【営業時間】15:00〜翌1:00  
【定休日】毎週月曜日


 JR環状線「寺田町」駅から南東へ信号を3つほど歩くと、左手に生野本通り商店街の入口がある。その中をしばらく歩き、信号ひとつ手前の路地で右手を見ると、正面にどっしりした姿が見える。
 和洋折衷の堂々たる風格の外観に、思わず「おぉー!」と声が出てしまう。

 玄関手前の路面に碑石が2つあり、玄関には「ゆ」の縦長のれん(当HPの銭湯トップページに勝手に使わせていただいております)、黄土色の瓦の小屋根の上には緑青の浮いた銅版に金文字で「源ヶ橋温泉」の大看板、その上に並ぶモダンな丸窓、それを左右から挟むのはマッチロケな自由の女神(!?)、そして屋根には金のシャチホコときた。
 「どや、どっからでもかかってこんかい!」といわんばかりの横綱相撲ぶりでありながらも、ナニワ風の茶目っ気が光る。
 この建物は、泣く子も黙る「国登録有形文化財」なのだ。

 
(左)立派な大看板、見えにくいけど  (右)不可思議なとりあわせ

 さすがに内装も細部まで手抜きなくキチンと作られている。文化財の中でフルチンになれる幸せが360円で手に入るのである。
 広々した脱衣場はどこか温泉旅館のロビーを思わせる。クリーム色に塗られた高い格天井やシャンデリアがデラックスな雰囲気を演出する。和風の中庭には池に石橋がかかり、石灯籠などが置かれている。落ち着くなあ。
 
 手入れの行き届いたタイルや木質を見ているだけで満足感がじわ〜っと湧いてくる。ガラスに入った模様も見るからに値打ちモン。古い銭湯って、そのへんの壁や柱の材質にいちいちいいもの使ってるよねぇ。

 浴室は石畳。1枚1枚の石畳が大きく、しかも隙間なく敷かれていて、なんともいえぬレトロな気品に満ちている。
 中央に重厚な石造りの深浅主浴槽、座浴ジェットつき。湯船周囲の腰かけ段に使われている石がこれまた幅広でゴージャス。ただし高さは低めで、ここでしか見られないものだ。
 入口側にスチームサウナと水風呂があり、奥には岩をあしらった薬風呂&電気風呂。薬風呂には生薬のようなものが入った布袋が沈んでいる。

 シンプルな空間ではあるが、意外に各種湯船が揃っている。湯上がりは庭を眺めながら徹底的にくつろいで帰りませう。

※2010年3月よりオリジナルポストカードを番台にて販売。
※「レトロ銭湯へようこそ関西版」に掲載されました。

この頁の頭へ大阪市激渋銭湯トップ

桜湯(廃業)

2015年、廃業されました。
レポートは営業当時のものです。


生野区中川西2-14-1 →地図
電話 06-6716-4484
【営業時間】15:30〜23:00
【定休日】日曜日


 思い出したよ、ここは日本であった。

 鶴橋から猪飼野へ。御幸森商店街、というより今や日本最大のコリアタウンとして観光地化しつつあるエリアを歩いてくると、もはやここがどこの国だかわからなくなってくる。
 コリアタウン東端の百済門は平野川に面している。そこにかかる橋を渡ったところに煙突がそびえている。モギョッタン・・・いや、銭湯だ。

 
(左)橋からの桜湯   (右)逆に桜湯前から橋の向こうの百済門を見る

 
川に面した外壁にはかわいい絵が

 暖簾をくぐると、しっとりした日本式銭湯玄関。川下りの小さなタイル絵と、その周囲の笹の葉型タイルが出迎えてくれる。なんかホッとしまんがな。

 
(左)玄関の小さなタイル絵と笹葉タイル、貴重品   (右)すばらしき番台

 中に入ると、美しき木の番台ににこやかなご主人が座っている。
 脱衣場はすっきり広々、じつにすがすがしいやおまへんか。

 
(左)脱衣場   (右)庭の風情もよろすい

 そして浴室へと進めば、嗚呼ここはまぎれもなく日本国であったのだね。

 
(左)主浴槽どまんなか   (右)ややかすれてるけど三保の松原からの富士山

 こちらもすっきり広々だ。奥壁に沿ってエステ、座ジェット、気泡、デンキ、薬湯が1列に並んでいる。
 この整えられた浴室美。たまらん。
 サウナや水風呂はないが、出入り口横には立ちシャワーと水鉢もあってクールダウンできる。俺的にはこれで十分だ。

 上がってご主人に聞くと、お湯は薪沸かしだそうだ。
 昭和24年に建ったが、戦後のあまりよくない材料しか調達できなかったため、38年に建て直した。富士山のタイル絵はそのときのものらしい。
 女湯の絵は「白浜の円月島」だと。珍しい。見たい!
 ちなみに外壁のかわいい絵は、「息子の嫁が描いたんですわ」とのこと。

 ともかく、さっきまでいたコリアタウンの賑やかさ華やかさとは打って変わって、落ち着いた和の風情にしっとりと包まれる。桜湯で富士山、まさしくイルボン。
 しかもすいていることが多いらしいので、ゆっくりのんびりくつろげる。韓国料理で汗をかいたあとはここね。 
(2012年6月)
この頁の頭へ大阪市激渋銭湯トップ

弁天湯(休業)

2018年9月の台風21号被害により休業中です。

生野区中川2-2-1 →地図
電話 06-6753-0890
【営業時間】15:30〜0:00
【定休日】日曜日


 人は見た目じゃわからないんだよ。

 近鉄今里駅から南西へ歩いて7〜8分。
 色気がないといおうか、2階の窓の上下に取り付けられた黒い部分が非情なまでにコワモテだ。この黒い部分、ナニ?

 
右から玄関、脱衣所、浴室、釜場

 上写真のように、玄関部分以外は平屋3棟で構成されている。
 一般的には脱衣場の2階に住居スペースがあるもんだが、玄関の上にだけ2階があるのは珍しい。北に面しているから黒い部分は太陽光発電でもないだろう。もしかしたら何かをはじき返す防衛力を持っているのかもしれない。

 玄関まわりはガラスブロックや不定形石板で飾られ、銭湯であることを静かに表明しているが、雨のせいかどことなく冷ややかな印象。暖簾も短くたくし上げられている。

 だが暖簾をくぐると、小ぶりでチープな入口周辺がけっこういい味を出している。

 
(左)右側ダンディ   (右)小さな水色の戸と木のかまちがよい

 番台には特に愛想のないご主人が座っている。
 脱衣場はまあ普通の高度成長期改装風。浴室入口の重厚な石門が歴史を感じさせる。

 しかし浴室の戸を開けて俺はちょっとしびれたね。
 あぁこれは俺の好きな風景だ、と胸にじんわりきた。

 こぢんまりとした風呂場だが、ポイントは2つある。
 まず目に飛び込んでくるのは奥壁一面のタイル絵。一部剥げた部分もあるが、どこかの海を高台の森から見下ろした感じの風景だ。
 海は少し湾になって凪いでおり、帆掛け舟が2艘浮かんでいる。さらに奥壁の両サイドには天然石の石板が張られ、岩の額縁みたい。

 たとえば紀伊半島の低山を歩いていて、尾根に上がったところでふっと岩場の切れ目から海が見えることがある。疲れと汗を忘れる瞬間の、あの感動が描きこまれているんよね。

 もうひとつのポイントは浴槽。
 クリスマスの靴下型といえばいいのだろうか。足首からカカト部分までが深風呂。カカトから足先が浅風呂になっている。
 アキレス腱の後ろ側には四角い電気+気泡風呂がある。

 ごくシンプルな構成だが、カカトと足先のやわらかな曲線と、フチに乗った石材の質感がよい。その中に何人かの客が湯気に包まれて静かに浸かっている。
 正面から見たら、奥壁の壁画ともあいまって、どこかの温泉地の由緒ある共同浴場を思わせるような情景となっている。

 壁には「人工炭酸泉」の表示。さらに「純銀イオン殺菌」とのことで、塩素臭もなく湯船も快適だ。レトロな小銭湯だが新しい工夫も取り入れられている。

 ゆっくりぬくもって、脱衣所に上がってからも、なんとなく何度も浴室を振り返ってしまう。
 そんな俺好みの風呂ね。また行こっと。 (2012年6月)
この頁の頭へ大阪市激渋銭湯トップ

安楽湯(廃業)

2014年、廃業されました。
(ラッキーさん情報感謝!)
レポートは営業当時のものです。

生野区中川6-1-16 →地図
電話 06-6754-6794
【営業時間】5:00〜10:00
      15:30〜23:00
【定休日】月曜日


 生野区のほぼ中央部に位置する大池橋交差点から今里筋を少し北上したところ。JR桃谷駅から東へ20分以上と駅からは遠いけど、市バス利用者なら車窓からいつもたくさんの自転車が停まっているのが見える。
 わかりやすい場所とともに、毎朝5時から朝風呂をやってる銭湯として有名だ(生野限定)。

 堂々とした瓦屋根の2階建てに、凸型玄関、両脇に前栽のある大阪伝統スタイル。木彫りで作られた勘亭流の屋号がそそりよんがな。
 釜場の横にはお地蔵さんの祠もあって花が供えられている。昔ながらのお風呂屋さんね。

 
(左)勘亭流の屋号   (右)自転車王国、生野

 玄関はわりとこじんまりしている。緑に塗られた格天井が目をひく。その奥には脱衣場の格天井も見えていて、思わず「オッ」と声が出る。
 それと同時に、たくさんの貼り紙もお出迎えだ。

 
(左)貼り紙多し   (右)男湯はもちろん「GENTLEMEN」

 脱衣場に入ると番台にバーサマ。見上げれば立派な折り上げ格天井で、クラシカルな銭湯空間が広がる。
 そして貼り紙、注意書きにもよりいっそう力が入る。盗難注意、火の用心、トラブル一切関知しません、といった内容が多い。場所柄ハングルによる注意書きもある。

 浴室は一転して設備多彩で、気泡やジェットも充実。サウナは乾式・湿式のダブル体制で、チベタイ水風呂もナイス。仕切られた一角にある漢方薬風呂は濃く、成分か何かがタイルや石にこびりついている。効きそう…な気がする。
 お客たちはあちこちの湯船を行ったり来たり。そしてここでも各種注意書きからは逃れられない。

 建物は伝統的な造りでありながら、営業時間の長さ、多機能な浴室、注意書きの嵐、にぎやかな客層、ちょっと気になるメンテ具合など、この土地でヘビーに使いまくられ続けられている感じが妙に新鮮だ。
 最近の激渋系はどこも静かなことが多いが、もともと銭湯ってこういう感じだったよね。

(2012年5月)
 
この頁の頭へ大阪市激渋銭湯トップ

橘湯

生野区田島3−6−11 →地図
電話 06-6757-0838
【営業時間】13:00〜24:00  
【定休日】毎週木曜日


 古びた住宅地が無限にくねくねと続いているかのような生野の真ん中あたり、田島公園から北を見ると煙突がそびえている。あれに見えるはフロヤじゃないかトントンっと。

 
(左)田島公園から   (右)ふしぎなブロックと消えかけ看板

 近づいたら田島小学校の向かい、なんとも味のある外観だ。瓦屋根の手前にナニこの買い物籠を思わせる緑のブロック。そしてブリキ板にスミ書きしたような屋号文字がじつに泣かせる。
 しばし鑑賞して暖簾をくぐると、玄関下足スペースの天井がミツバチハッチの故郷状態で素晴らしい。

 
かわいーぞ!

 靴を脱いで脱衣所に足を踏み入れて驚愕。MだM、天井がM!

 
真ん中に木製2枚羽扇風機

 番台の主に聞けば、この建物は昭和28年に建ったものだが、M天井になったのは昭和47年。天井を高くしようという大工さんのアイデアだそうだ。
 それにしても両端つまりロッカー上の部分が最も高くなっているので、たしかにユトリある空間が生まれている。隅のカーブ処理も見事で、なかなかヨイではないかM天井。

 その他の内装は昭和中期的に改装されているが、構造そのものは前栽に外便所と、銭湯本来のクラシック基本形がそのまま残されている。
 浴室入り口の両脇には海底にチョウチョウウオが泳ぐすりガラス絵がある。

 浴室に入ると正面にいきなり半円形の水鉢あり、その後ろがT字状島カランになっている。床に排水溝は1本もなく、何ヵ所かの排水穴に向けて傾斜するイニシエタイプ。
 湯船は男女壁寄りに深・浅(ジェット)・デンキ・薬湯が並び、フチ(またぎ)と腰掛段は伝統の石造りだ。
 さらに奥壁沿いには乾式サウナとスチームサウナ、うれしいことに両方とも無料やと! その横には岩風呂ふうの水風呂もあり。意外に設備充実だ。
 カラン下の桶置き台にもどっしりと石が使われている。鏡は座った位置と立った位置のダブル体制。

 そして何よりこの浴室で目立つのは、奥のサウナスペースの手前上部壁をあざやかに彩るクラッシュタイルの張りまくり攻撃。同様に出入り口の上部壁にも張りまくり。なんかの模様になっているように見えるが、そうでもないようにも見える。

 と全体的に渋めの見所が多く、それでいて設備豊富で何かと楽しめるのであった。

 駅からは遠く、桃谷から歩いたら20分以上はかかりそう。
 でも鶴橋からバス73系統か23系統に乗ったらラクチンね。田島3丁目で下車、東へ徒歩3分ほど。 
(2011.2.22)

この頁の頭へ大阪市激渋銭湯トップ

玉の湯 (廃業)

2014年3月、廃業されました。
レポートは営業当時のものです。


生野区小路3-3-17 →地図
電話 06-6752-3540
【営業時間】15:00〜24:00  
【定休日】毎週日曜日


 ぐっちさんという方からメールあり。

大阪名物(?)の凸型で、渋い脱衣所、妙に広い浴室など、味わい深い雰囲気を堪能してきました。個人的見解ですが、かなりのオススメです。

 ホウそうかえホナさっそくイコカイナ〜、と思ってからはや4ヵ月。
 ようやく地下鉄千日前線の小路駅に到達し、南西10分の商店住宅混在地域にもぐりこみ、そのへんのオッチャンに道を尋ねて辿り着いたよ玉の湯へ。

 自販機も選挙ポスターも何もない白く美しき壁がすーっと伸びた凸形玄関の清々しさよ。もうこの時点で何か確信めいたものが五臓六腑から押し上げてくるわけね、俺くらいの銭湯原理主義者になると。

 
(左)木彫りの屋号   (右) 格天井、細かいタイル床のザ・銭湯

 中へ入ると、スッキリヒーロビロな脱衣場の解放感にもう歓声を上げたくなるね。んで見上げりゃまあゴージャスなる折り上げ格天井の美観に溜め息連発だ。
 よけいなものがなくて、何もない空間そのものを味わいなはれ的なナハレ攻撃の前になすすべもない。小さな前栽に緑の映える折り目正しき銭湯風景に、五臓六腑の野郎どももいよいよ喉元まで迫ってきやがるね。

 もうこうなったらスッポンポンの浴室でどんなナハレが待ち構えているのか、想像するだに武者震いだ。

 浴室の戸、開けた。
 むごー、むごごー! ヒーロビロヒーロビロ、浴室ヒーロビロ!
 ほんでもって真ん中に深い石の湯舟ドーン! その向こうに浅い湯舟ドーン!
 奥壁はガラス張りになっていてライトアップされた庭がドーン!

 手前に岩風呂ふうのデンキ風呂があるほかは、特別な浴槽ナシ。サウナなんかオマッカイナ。広大な浅風呂の奥にジェットが2本あるが、あとはもうとにもかくにも広々湯舟でドドンがドンとくりゃドーンドーンドーンや。
 果てしなき浴室の水平線。五臓六腑とっくに行方不明。

 どっかの有名温泉地の湯元とか総湯とかそのテの貫禄を感じる。銭湯の帝王学をここで体に叩き込めと誰彼なしに説教タレまくりたいね。
 くつろぎなはれ。泣きなはれ。笑いなはれ。いつの日かいつの日か花を咲かしナハレ。

 湯舟回りの腰かけ段はもちろん、カランまわりも石造り。カラン取り付け部分はタイル貼りだが、そのダイヤ型タイルもシックな色使いで余裕シャクシャクだ。
 男女仕切りがガラスブロックになっているが、そこに色ガラスが組み込まれているのがかわいらしい。

 湯に浸かる。広々空間で深呼吸、また湯に浸かる。
 ここでするのはそれだけだ。銭湯の王道とはこういうものだろう。

 風呂好きの君よ玉の湯へ行け。誇りと貫禄を身にまとう裸の王となれ。

 上がりはビックル飲んでスポーツ新聞熟読。今宵よき時間なり。 
(2011.11.8)
この頁の頭へ大阪市激渋銭湯トップ

恵比須湯(廃業)

2012年、廃業されました。
(ラッキーさん情報感謝!)
レポートは営業当時のものです。


生野区巽中4-12-1 →地図
電話 06-6758-0539
【営業時間】15:00〜23:00  
【定休日】第1第3日曜日


 地下鉄千日前線の終点・南巽で降り、雨のそぼ降る住宅街を3〜4分ほど西へ入った路地の一角に、飾り気ゼロな古い銭湯がそうっとたたずんでいる。

 
(左)北側の路地から正面に   (右)西から側面

 
(左)2階の屋根下にモダンな意匠   (右)破れテントに雨が降る

 このあまりの素っ気なさが雨の中の寂しさをそこはかとなく増幅させている。でも風呂屋なんだから中に入れば温かいお湯が沸いているはずだ。
 傘をたたんで暖簾をくぐればオーセンティックなイニシエ色。雨の遊園地でわびしく回れ夢のメリーゴーラウンドな傘立てにビニール傘を差し込み、靴を脱いで中に入る。

 
木造レトロ玄関

 とそこにはクラシカルな木製番台があって、もの静かなおかみさんが座っている。
 脱衣場も飾り気ゼロ。床には籐が敷かれ、ロッカーはアルミだが、男女仕切りの上の天井には2枚羽の巨大な木製プロペラ扇風機がある。
 あとは特別マニアが喜びそうなものがあるわけでもないが、雰囲気はまことに昔ながら。何の変哲もなく昭和中期のまんま時だけが過ぎてきて現在に至っている。

 
素晴らしき番台

 浴室もどこがどうと言って特筆すべきものがあるわけではない。
 中央から奥にかけて深浅の湯船があり、おかずはジェットと気泡とデンキ。湯船フチや周囲の段は黒御影石づくりで、隅に水鉢。まあフツーの大阪小銭湯だ。
 でもここ、古いけどきれいに磨かれているのよね。タイルもあまり剥げてないし、シャワーの出も快調。
 飾り気も商売気もないけど、まじめに銭湯してらっしゃる感じが好印象だ。居合わせたリタイアオヤジ客は、最近ここの常連になったという。

 上がっておかみさんに聞くと、「向かいに住んでる95歳のおばあちゃんが嫁に来たときすでにあったと言ってます」とのことだから、戦前からの歴史があるようだ。
 
 こういう何の変哲もない銭湯も今や貴重となった。この飾り気のないよさをわかってくれる人が増えてくれることを切に願う。 
(2012.3.9)
この頁の頭へ大阪市激渋銭湯トップ