関西の激渋銭湯
チープに極楽。生きててよかった!
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京極湯 ★(豊岡市)
【兵庫県】 神戸市阪神間東播磨西播磨淡路但馬

京極湯

豊岡市中央町11−16  →地図
0796-23-7504
【営業時間】16:00〜21:00
【定休日】日曜日


 豊岡って意外にレトロなモダン建築物がいっぱい残ってる。歩いて楽しい街だ。
 タウンページで調べると豊岡で3軒の銭湯が出てくるが、実際に営業しているのはここだけっぽい。
 で、その最後の一軒が大感動系なわけよ。

 豊岡駅から駅前通りのアーケードを東へ約500メートル。レトロな市役所の向かいにレトロな山陰合同銀行があり、その南隣にこの銭湯がある。もうこのあたり一帯に激渋な空気が漂っております。

 暖簾をくぐると小空間、すりガラスのはまった木の扉。引き戸ではなく、取っ手のついたドアだ。我が心に「開けたまへ入りたまへ」と語りかけてくる。

 新しい戸をきちんと木で作り直す心意気

 ドアを開けるとタタキに木の番台という、田舎銭湯スタンダードパターン。番台には丁寧な感じの40代後半男が座る。
 小銭を置こうとして一瞬躊躇した。この番台、お金を置くところがトンネル状になっている。珍しいな。
 タタキには例によって古い木の下駄箱があるが、やはり脱ぎ捨てでしょう、こういうとこは。

 脱衣所も落ち着いた懐古空間。小型銭湯ながら、スーッと広がる板張り床がキモチイイ。すりガラス窓に、外を這い登るツタの緑が透けて映る。見上げれば格天井、格子材は薄緑に塗られている。
 そして出ました木のロッカー。しかも番号ではなく「い・ろ・は・に・・・」と大書きされ、「う」まで8×3=24個。すばらしい存在感だ。田舎にしてはきちんと鍵もついてるし。ロッカー上には常連桶ズラリ。
 男女の仕切り壁も古い木製。だが浴室入口付近の壁板は直してあって、決して放置系ではない。

 ここでフト浴室のほうを眺むるに、これまでに見たどの銭湯とも異質な光彩が目に飛び込んでくる。
 ガラスの戸の向こうで、浴室全体がボンヤリ薄緑色に光っているのだ。なななんだ? 映画のワンシーンみたい。

 浴室へのガラス戸を開けると、そこは雪国だった。

 いや、僕の視力が弱いせいもあるが、ほんとに床に雪が積もっているみたいに感じた。
 よく見ると、直径4cmくらいの六角形の白タイルが床をびっちり覆い尽くしている。中央付近に四角い湯舟ひとつあるが、それを取り巻く大阪式座り段も床と同じ白い六角形タイルで埋められている。
 床が真っ白とはじつに珍しい。それも輝くような白さではなく、象牙のような柔らかい白色だ。
 床は全面が出入り口側の排水溝に傾斜しているタイプ。

 そして浴室を包む薄緑の淡い光の正体は・・・と上を見ると、四角錘天井がパステルグリーンに塗られている。そこから何ヵ所かに吊り下げられた照明が、煌々と輝いている。
 なるほど。この強力な光が天井の緑色を照らし、それが床の白タイルに反射して、全体が薄緑に染まっているわけか。

 浴槽は角がカーブしているが、このふちにも薄緑の細かい角タイルがびっしり張られている。ふち上部には薄ピンクの京都っぽいタイル。浴室自体は古めかしいが、それが薄緑と薄ピンクでパステル調に統一されているというのはなんとも不思議な感じ。まさしく非日常空間だ。
 湯船の奥には、絵柄の入ったいろんなタイルが10枚くらい並んで張られていて楽しい。

 お湯は適温。歩き回った足がじんわり癒される。先客はオヤジ二人だが、二人ともかなりスローモーな動きで、湯船のヘリでボーッとしてる。

 入口近くに女湯と水面下でつながった大きめの水鉢がある。反対側に立ちシャワーあり、この周囲のタイルが一番古い。
 カランの栓は湯と水があるが蛇口は一つで、調合したのが出てくるタイプ。
 男女隔壁は、従来の壁の上にさらに継ぎ足して天井近くまで及んでいる。覗くバカがいたんだろうな。

 スローモーな二人のオヤジは、ゆっくり長湯を楽しんだあと椅子や桶をキチンと片づけて先に上がり、後は僕の貸切となった。
 静かだ・・・。
 湯舟にはジェットも気泡もないから、まさしく音、ゼロ。
 僕自身の呼吸音「すー」と「はー」以外に、一切の音が途絶している。
 薄緑の淡い光とあったかな湯気に囲まれて、一人ぼっちで素っ裸。見知らぬ異空間で、ただ呼吸を繰り返す。
 信じられないほどのくつろぎだ。

 じっくり味わってから上がると、番台の男は女湯のばあさん客らと健康話などで盛り上がっている。途中で母親とおぼしき老女と交代したが、この人もすぐに女湯客らのおしゃべりに巻き込まれた。
 だが二人とも丁寧かつ上品なしゃべり方で、常連密着銭湯ながらも客商売としての節度をきちっと守っている感じが好印象だ。

 湯舟はたった一つきり、だがいつまでも心に残る、いい銭湯だ。
(2004.9.10)

 開店前のたたずまい
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